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ネット通販 の 市場規模 拡大に限界!?コロナ禍 経済産業省 EC 市場調査 を読み解く

「わずか一年で激変ですね」。僕は大和総研チーフコンサルタントの本谷 知彦さんと話をしていた。2021年7月30日 経済産業省 が「電子商取引に関する市場調査」を発表したのだ。本谷さんはシンクタンクとしてこの調査を8年連続で関わっている。そこで、見るべきポイントを絞って聞いていたのだ。これは個人的印象であるが、 市場規模 に関するデータを見るうち、僕は ネット通販 の限界も少し感じたのだった。

個人消費 が ネット通販 にも影響を及ぼす

1.日本人の物欲は少しも変わらなかった

 「2020年はコロナ禍ということで、例年とは随分違うように思えますが、どの部分に注目したらいいですか」と僕がいうと本谷さんは「小売りの全体感を掴む上では、個人消費の動向を追いかけてもらえると、2020年がどんな年だったかが見えてきますね」と話し始めた。

 ということで「個人消費」から見ていく事にしよう。外出自粛もあり消費自体に落ち込みが見られるのだろうか。本谷さんは「実はここが最初の注目点なのですが、総務省統計局の家計調査に基けば、『物販』においては少しも落ちていないんです。」と。

 2020年においての「1世帯当たりの財(商品)の支出」は153万7000円。この数字は、前年とほぼ同レベル。寧ろ前年比プラス0.6万円となった。つまりコロナ禍で消費は落ち込むどころか、若干増加しているのである。日本人における物欲はこのコロナ禍でも変わることがなかったというわけである。

 ただ「サービス」においては激しく低下した。2019年は一世帯あたり120万円だったのが、2020年は103.9万円。昨年対比で見ると16.4万円も減少した。「サービス」というのは例えば旅行や習い事等を示している。「経年でこのリサーチしていますがずっと横ばいで推移し続けていました。そこでストンと2020年で落ちています」と本谷さん。影響は計り知れない。

2.「今の」生活を反映する個人消費の動向

 本谷さんは「それで、個人消費のレベルが変わっていなかったとして、では『個人消費』として動いた商品は何だと思いますか?」と話し始めた。

 答えは「家電」系。年間平均支出金額は63,710円(昨年は57,304円)で昨年対比10%も伸びている。その内訳を見ると、テレビなどのAV機器、空気清浄機。「ただ、冷蔵庫などは変わりがないんです。この辺が今年ならではで、ステイホームが推奨された事で家での生活を見直したのだと想定されます」と話し、生活の変化が顕著に数字となって表れているようなのだ。

 そこに続いて、個人消費で動いたのが「食品」。ここにはお酒なども含まれているが、年間平均支出金額は678,550円。その伸び率は4.5%とこちらも高い。家計に占める割合が高いので、その伸びが高いのは想像できるが、僕は「今年に限った話ですか?例年伸びているのでは?」と聞いてみたのだが、違うようだ。

 本谷さんは「食品の伸びはそれまではほぼ横ばいなんです。具体的な数字を出してみましょう。それより前の2018年が64万9016円です。それに対して2019年が64万9172円です。これを見る限り、限りなく0.0%に近い伸び率だったのです。それを思うと、2020年の4.5%増がどれだけ大きいかわかりますよね」と答えてくれた。

 「逆に、それ以外のジャンルはどのような変化を見せているのでしょう」と僕が聞くと「医薬品が伸びていますね、その背景にはマスク需要がありそうです。一方で、アパレルは男女、インナーアウター、靴など全てのジャンルで減少傾向。気になる化粧品は、リップなどは減少に転じているものの、在宅でも必要な基礎化粧品は維持しているんです」と述べている。

 そうか。この基礎化粧品の話を聞いていると、サブスクリプションの重要さを思わせる。実は、最近、アパレルでも顧客IDでお客様のデータを捉えて、そこから顧客接点を作って、なるべくサブスク的に近付ける動きも多くみられるのは、まさに時代の流れのような気がしてきた。

関連記事:アパレル は“デジタル”で 顧客接点 を作るのが吉 ? アダストリア EC の真骨頂

経済産業省の ネット通販 市場規模 はどうなったのか?

1.さて、物販におけるBtoCECは伸びたのか?

 それを踏まえて、これらの「物販」で購入したのがネット通販経由だったのかどうか、というのが、まさにこの 経済産業省 による『電子商取引に関する市場調査』の中心ということになるわけだがその数値はどうなのだろう。それが下記ということになる。

 ネット通販経由でものが売り買いされたものを示すのが、BtoC EC。その中での「物販系」の市場規模である。それでいうと対前年比で成長率は21.71%と大幅増で12兆2333億円となった。これと合わせて、小売りの中でネット通販が占める割合を示す「EC化率」も開示していて、それも8.08%と大幅に伸びている。やはり先ほども書いた通り、物欲は変わっていないので、その消費に対しての行動は一部、ネットに流れたと見て良い。

2.コロナ禍がどれだけネット通販の成長を底上げしたのか?

 さて、この数値を多いと考えるか、予想よりも少ないと受け止めるのか。本谷さんに数字をどう受け止めたのかを聞くと「それを考える上で、もう一つ数値を出していいですか」と聞いてきた。「こんなデータもあるんです」と言って、別のデータを引き出してきたのだ。

 実は、今回の調査では『もし新型コロナウイルス感染症の拡大防止の動きがなかった場合』の数値を仮説で出しているのだそうだ。なぜなら、それを現状の数値と比べてみれば、『コロナ禍によってネット通販がどれだけ恩恵を受けたかを示すデータになる』からである。それは気になる。

 それによれば『巣ごもり消費によって、ネット通販が底上げされた金額』は少なくとも1兆2000億円であると試算されたのである。これは調査の中にも書かれている。

 それを踏まえて、彼はこう話すのだ。「両方の数字を見ると、相当伸びたなという実感を抱いています。特に最初の緊急事態宣言の時は、殆ど外出もなかったですから、ネットへのシフトが積極的に行われたのだと思います。」と説明した後で「ただし」と付け加え「それでもEC化率は8%なんですよね」と話したのだ。

 言われてみれば、そうである。確かにあれだけ、ネット通販への移行が進んでいたはずなのに、(海外などは10%を超えていたりするのに)まだEC化率は10%に及ばないのである。

3.BtoC ECにおいてもサービス系は減少、デジタル系は増加

 ちなみに、サービスに関してのBtoCECの市場規模は「個人消費」が減少傾向にあるので、当然下がる。前年の7兆1672億円から2020年は4兆5832億円まで少なくなってしまった。前年比2兆5840億円減でマイナス36.05%である。例えば「〜トラベル」といったものやチケットのサービスなどがこの分野に含まれる。

 ただ、これまた、家にいる機会が増えたので、デジタル分野のBtoC ECは、2兆1422億円から2兆4614億円となり、こちらは若干、伸びている。電子書籍などがそれに当たる。

 こうした傾向を受けて、以前から2020年にはBtoCEC 全体の市場規模は、20兆円に到達すると予測されていたが、未達となり、19兆2779億円にとどまった。対前年比830億円の減少に転じていて、上記の通り、物販系のBtoC ECが大幅に伸びても、それがサービス業の減少分とで相殺されてしまったことで、結果的には減少となったわけである。

両面から見ていくから見えてくる未来の小売りの本質

1.これだけデジタルシフトが進んでもBtoC ECの伸びは?

 本谷さんも立場上、未来に関してのコメントは控えていたが、恐らく物販系のBtoCECに関して、5年から6年後までは(物販のBtoCECだけで)20兆円程度まで、伸び続ける可能性はあるだろう。けれど、そこから先の伸びはかなり限界があるのではないかと僕は直感したことには、納得していた。

 なぜなら、それは話を聞いていて、これらの数値は結局「個人消費」に左右されるからだ。この上限が大きく上にぶれることはない。ネットが増えれば、リアルが減るだけのことだ。個人の使う金額が増えない限りは、どちらかを食い合うことになる。

 その中にあって、先程の本谷さんの言葉にもあったが、これだけの変化の中で、リアルがこれだけ踏みとどまっている。人の気持ちや生活、習慣などと照らし合わせて考えると、この個人消費の割合が変化するのはそう簡単なことではないように思うから、すると、「ネットって案外これ以上伸びないんじゃないか」という気がしたのだ。

2.同じ牌を取り合わず、リアルとネットを融合した先に答えがある?

 まして、多くの企業がネット通販に予定より早く参入しているので、当初、皆が想定していた時期よりも早くネット通販の中で、同じ牌を取り合う争いが生まれることになりそうである。

 ネットですら頭打ちが来るタイミングがこれからあるだろう。だから今一度、ネットの利点は何かを考え、リアルとネットの融和を図って、お互いの相乗効果を極力、図るべきではないかと思うわけである。ネットとリアルを切り分けていたら同じ牌を取り合う中で、埋没してしまう可能性だって否定できない。トータルで顧客体験の価値向上に努めることが求められる時代、いよいよ到来ではないか。それを思ったのである。

 今日はこの辺で。

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