perori展ができるまで。三人寄れば文殊の知恵?の優しき素敵なハーモニー
とある目的があって、ふらりと銀座へやってきた。それを語る上では「perori」の三人を抜きには語れない。彼女たちには「おべんとっ!」というイベントで、記事を取り上げた際、知り合った。基本、その三人は個々に活動している。だが、時折、集まって「perori」名義で活動している。この日、銀座に僕が来たのは「perori」名義で初の展覧会を開催したからだ。
三人が集まる先にはいつも楽しい世界がある
1.出会ってまだ2年に満たない
まずは、三人について紹介しよう。山口なこさん、タカハシユリさん、tanakasakiちゃんである。彼女たちと話す度に、僕は思うことがある。それは「三人寄れば文殊の知恵」ということ。三人とも魅力的な発想を持ち合わせている。けれど、その個性は「揃う」ことで、より一層一人一人の輝きが増して見えるからだ。
この日の展覧会は、T-BASE銀座ギャラリーでおこなわれていた。入り口の透明の自動ドアの前に立つと、もうそこから愛らしいキャラが見えるではないか。棚にはずらりと、ソフビ人形が並んでいるけど、実はそれらが「perori」の原点である。原点?
それまで三人は、お互いにその存在を知ってはいた。けれど、そこまで深く話すことはなかったのだ。ところが、「ソフビ人形を手がけたい」という人で集まる「クラブハウス(音声アプリ)」をきっかけに、話す機会が増え、意気投合する。そこから三人でやり取りがグッと増え、そこからまだ2年に満たないから、まさに急接近だ。
2.気心知れて快進撃が始まる
ちなみに、僕はそんな彼女たちにとって、記念碑的なイベント「おべんとっ!」でその存在を知ることになる。
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web上に広がるのは「ドラクエ」風の街並み。この中に、多くのアーティストが店のような場所を構えている。この店内に置かれた水晶などをタッチすると、それぞれの店主が持つ、オンラインストアなどにもサイトに飛ぶことができる仕様。アバターで街中を歩けるから、その身なりで店を回るツアーなど、参加者の体温が伝わる催しを発案。23時間45分という短い時間ながら、多くが楽しんだ。この世界はこの三人が始めたものだ。
それも、もとはオンライン即売会のツールをヒントにしたもの。それをアーティストが集まるイベントにしようと、山口なこさんが着想した時に、賛同したのがユリさんとsakiちゃんの二人だったのだ。
三人は共通してサービス精神が旺盛。人に優しく楽しい。今夏で3回目を迎えるほど、支持されるに至ったのは、三人の阿吽の呼吸がなせる技。彼女たちはまるで以前からの知り合いかのように、一体となって人々を触発する。だから銀座に来てみたかった。そして、さすが、その期待に応える内容だった。
ソフビへのこだわり
1.ソフビ人形ってどうできるの?
この現場に来てみて思った。そもそも彼女たちを繋げたソフビ人形ってなんだろう。ソフビとは、ソフト塩化ビニールの略称。それで作った中身が空洞になっているタイプのフィギュアである。恥ずかしながら、「どうやって作るんです?」と僕。
まず、各々自分のキャラクターを持っているので、それぞれ、自分のキャラの3面図を書くのだという。要するに、正面、横顔、背後である。それをもとにして、3Dプリンターで作るわけだ。仕上がりのイメージに合わせて、幾つのパーツで構成されるかを考える。
例えば、ユリさんの「チヨコ」であれば、シンプルに「リボン」と「顔」と「体」のパーツからできている。へぇえ。
2.そこに塗料を塗って、多彩なデザインを具現化
より個性を際立たせるために、そこに塗料を塗る。例えば、sakiちゃんのこの牛乳坊やのソフビ人形なら、二層ゼリー風にしたいと語る。そうなると、足元は透明の塗料を塗り、上の部分にピンク色の塗料を塗って、それ風な出来栄えにしているわけだ。
物によっては「表面がガサついているのがあるようだけど?」と僕。
「それは、塗料によってはマットな仕様もあるんです。」。 なるほど。その時のイメージで使い分けるのだ。こうやって色々な要素をその時々イベントごとで、変えていくことでコレクターズアイテムとしての価値を高めるわけだ。
例えば、先ほど、冒頭でソフビの写真をあげた。それも、3キャラとも紫色にしている。それは「紫の子」という山口なこさんのキャラに合わせて、このイベント限定の3キャラ共通の紫モデルとして出したわけである。
調和の裏側に三人の絆
1.自然な調和は三人のお家芸
行ってみて「perori展」で特に際立っていた部分は何か。それでいうと、三人の“調和”という言葉に尽きるだろう。
三者三様、異なる色彩で個性を持っていて、だからそれぞれファンが存在する。けれど、この「perori展」では違和感なく自然に馴染んでいる。この辺が、「おべんとっ!」の企画の時と同様に、ぶつかりあわない。互いの持ち味を補完し合いながら、足し算ではなく、掛け算の面白さを、醸し出していて面白い。
どうしてかな?そう聞くと、その場に駆けつけてくれたsakiちゃんは、そこにまつわるエピソードを話してくれた。
例えば、掲げられていたこのイラスト。
実は、最初に背景の部分をsakiちゃんが手がけたそうだが、実は、それをユリさんがトレースしている。つまり、sakiちゃんの絵のテイストを他のキャラのテイストに寄せることで、自然に調和しているのである。
2.どんなことも軽く乗り越える3 人の掛け合い
普段、デザインをやっていない人にはピンと来ないかもしれない。でも、それはそう簡単にできるものではない。
まず、sakiちゃんは「プロクリエイト」というアプリを使って、その背景のイラストを描いている。言うなれば、水彩画で絵を描くようなもの。そのアプリはAdobeのPhotoshopに近い。
それに対して、ユリさんは、AdobeのIllustratorを使って丁寧にトレースをする。Illustratorは点と線をパスでつないで、一つの絵を仕上げる。つまり、全く性質の異なるソフトで描かれているのを、統一感を出すために、同じソフトで描いてそれを“再現”している。
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だから、チグハグな印象を抱かない。そりゃそうだ。線の太さなども一本化されているし、自然な調和が実現できて当然なのである。かくして、その統一感はユリさんの見えない努力の上で、際立つのである。
3.絵から3人の楽しい会話が伝わってくる
もう一つ思うのは、三人の和気藹々とした“会話”だ。その絵を見ていると“会話”の光景が目に浮かんでくるようで、愛に溢れてる。何気ない三つのイラストも、一つのストーリーに連なっている。ああしよう、こうしようと彼らが楽しく話した結晶だろう。右から、最初に食べ物を「探す」、次にショッピングで「買う」、最後にピクニックで「食べる」という具合に。背景とキャラの表情がマッチして、ストーリー上、どの絵もイキイキしている。
一つ一つのイラストでも、彼女たちは、絵で“会話”する。「牛乳坊や」が何重にも連なるアイスを持つイラストをsakiちゃんが思いつけば、ユリさんは「チヨコ」で指を指すイラストを提案。「それいいね!」そんな彼女たちの掛け合いがやっぱり、目に浮かぶようである。
また、細かい話であるけど、これらは3キャラの旅でもあって、よく見ると紙飛行機が描かれている。その旅は紙飛行機のようなライトなものであって欲しいという願いが込められている。前向きな彼女たちらしいメッセージに受け止めた。
4.三人の楽しい笑顔が浮かんでくる
なんとなく、先頭を歩くのは山口なこさんが手がける「うちのこ」というのも、三人の空気感が伝わる。「おべんとっ!」で引っ張るなこさんの姿が脳裏に浮かんだ。三人三様、全く違うキャラクターなのに、お互いをわかっているからこそ、賑やかさである。
彼女たちの楽しい放課後のような光景を、またも、このperori展でも僕は目の当たりにした。三人の誰が欠けても、この世界観を醸し出せない。
コラボレーションにおける大事な姿勢を学んだ気がする。出会うべくして出会った三人は、三人集まることで、文殊の知恵と言えるだけの、アイデアと想像力にあふれた素敵な空間を作ったのである。三人のキャラは、明るく前向きな“紙飛行機”に乗って、次はどこへ旅立つのだろうか。
今日はこの辺で。