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そのキャラを応援したいのには理由がある TikTokで成功を掴みつつあるアダビトの話

 昨今、キャラクター業界を見ていると、売れているキャラクターに飛びつくという傾向はなくはないと思う。それも仕方ない。不特定多数に売れるキャラが少なくなっているからだ。けれど、本来、元々売れているキャラクターなんて存在しないもの。だから、その育てる過程こそ大事。その部分が、意外と語られていないので、敢えて、ここで、アダビト代表取締役 後藤颯太さんの話を取り上げようと思った。

アダビトがキャラクターを人気者にできた理由

1.今のままでいいのか?

 そもそも恥ずかしい話、この会社のことを知らなかった。ありがたい話、当メディアに関心を持ってくれているファン読者の一人。一度、話がしてみたいと切望されたのがきっかけだった。しかし、思いがけず、会ってみて、気づきが多かった。今の時代に相応しいキャラクター運営のあり方が見えたというのが正直なところである。

 アダビトの後藤さんは、以前から会社は経営していたという。しかし、それはあくまで売れそうなところを狙い撃ちして、利益は上げていた。そこである時、それでいいのかと。自分のやりたいことで会社に打ち込む必要があるのではないか。その考えに至り、今の事業をするようになった。

2.キャラクターこそ打ち込みたいこと

 今の事業というのは、キャラクターのプロデュース並びに版権管理にまつわる話である。彼自身は絵が描けるわけではないが、自分がやってみたいキャラクターのイメージはできているのだと話す。

 現に、その事業を始めて一年半ほどで、彼らが手掛けるマスコットキャラ「あさみみちゃん」はTikTokでフォロワー数ナンバーワンとなった。何より、僕が興味を持ったのは、その事実よりも、練られた戦略の方。あさみみちゃんに関しては以前書いたので今更それについて書くつもりはない。戦略に至る本質的考えをシェアしたいと思ってここに記事にした。

3.キャラと今の時代と紐づける

 その背景を聞くと、後藤さん自身、カートゥーンネットワークについての話をあげた。パワーパフガールズなど、数多くの有名コンテンツがある。彼が惹かれたのはそのコンテンツの作り方である。例えば、25分位の映像であっても、どの部分から見ても楽しめるよう設計されているという。

 それが可能なのは細かな起承転結がその中で何度も繰り返されているからだと。だから、最初が理解できていなくても、後半部分だけ見ても楽しめるという要素があるのだ。

 この要素が何故、大事だと言うのか。語弊を恐れずいうなら「内容を深く考えることなく、楽しめるということ」が大切かという話と関係がある。

 彼は東北出身ということで震災の経験もあり、辛い体験もあった。そんな中、カートゥーンネットワークに救われた。視聴者側が特に何も考えることなく、目に入ってくる映像を純粋に、楽しめるからだ。それで、そういうコンテンツの意味を彼は思ったのだ。「心身が疲れている時」ほど、確かに「物事を考えられない」から。

 不思議な話だが、それが今でいう「TikTok」でこそ、具現化できるのではないかと着想する事につながる。

4.TikTokを選んだのは必然だった

 言うなれば、TikTokはあらゆる要素をコンパクトに短い時間の一瞬で映し出す。「内容を深く考えることなく、楽しめる」ではないかと。彼が救われた世界を今で言うなら「TikTok」が具現化できて、人の心を救えるのではないかと。

 イメージと仕掛けは見えてきた。でも、彼は絵を書けるわけではない。「美術の成績なんて誇れるものじゃないですから」と笑う。

 だから、自らそれで絵を描き、そのキャラクターを描くに相応しいイラストレーターを連れてきた。イラストレーターにも色々特徴があるから、今考えているキャラのイメージに近いテイストを描けるクリエイターを選ぶことにこだわった。絵がうまければ誰でもいいというわけではないのだ。

 相性の良いクリエイターを見つけてからはそのイメージを伝え、クオリティを高めて、世に放った。しかも、そのアニメーションを作成するには何枚もの絵を描いて、昔ながらのやり方で、その世界観を徹底して伝えることを怠らない。新しいコンテンツであれ、例えばジブリなどの姿勢などはリスペクトに値すると。

 それを踏まえて、いざTikTokの大海原へ。

人は繋がるきっかけを探している?

1.推し活を例に取ると分かりやすい

 その一方で、彼らはTikTokの根底を流れる背景にもこだわった。「拡散に至る人の気持ちの推移」である。これも人の本質に立脚している。その話を聞いて、僕が思い浮かべたのは「推し活」である。「推し活」は特に女子に見られる傾向でアイドルなどを推すわけである。「推し活」の背景にあるのは、僕は「現代人は人と繋がるきっかけを探している」ということだと思っている。

 というのは、SNSが台頭する中で「何か表現したい」と思いつつ、実は、多くの人が直面するのは表現する為のその素材がないという現実なのである。

 だから、共通で何か熱狂できる要素を探している。それで、好きなアイドル、アニメなどに関心を持ち、そこで共感が生まれる。(勿論、それだけではないとは思うけど、一つの要因として)それで人は繋がる実感を得て、楽しいということになるのだろうと思う。ね、ね、いいよね!とデジタル上で声を合わせて。

2.キャラの育つ姿に惹かれる

 話を戻して、それのどこが彼らと近いのか。彼らは、そのキャラクターを生み出すと共に、キャラクター事務所を作成、キャラをそこに所属させて、アイドルの如く研究生的な存在から駆け上がっていくイメージを演出している。

 つまり、ファンがそのキャラに共感すれば、そのキャラがもっと上に立ってもらいたいと思うのが人の心情である。アイドルさながらに、トップを取って欲しいという感情が生まれて、それが熱狂を生む。つまり、ファンは自分とその仲間の応援と共に、成長していくその過程にこそ熱狂するわけである。

 それは先ほどの人々の潜在的に存在する「繋がるきっかけ」を求める要因とも結びつく。だから、「私、キャラを描けます」というだけでブレイクする時代ではない。彼らはそう漏らした。キャラは生き物のようにして人を熱狂させるのだ。そしてファンとキャラ、共に成長して、パワーを得る。これなら、お互いウィンウィンであり、今の時代に相応しいあり方だと説く。

3.人の二面性

 とどめとなる、その共感の根源的なイズム、コンセプトはどこにあるのだろう。

 それが人間の二面性。SNSが台頭したおかげで、その人の個性が羽ばたいて、多くの人に知られる人気者になる一方で、それはその人の一部分でしかないということ。

  だから「Simple Side Mascots」というメッセージを掲げたわけである。優しく、そのもう一方のあなたをこのキャラは優しくフォローしたいというのである。

 つまり、SNSでもてはやされているその側面が一度、間違った理解をされると、一気にそれがその人を追い詰めてしまう。だって、悲しいニュースも少なくないでしょ?だから、キャラクターを通して、そのもう一方にも目を向けていこうよ。彼らはそれをテーマの根幹部分に据える。それできっと救われる人はいる。

キャラの背景が大事な理由

1.必需品ではないから心を動かす要因が大事

 なるほどなぁ。僕は唸った。コンセプトに始まり戦略、仕掛けなど考え抜かれている。つい感化されて思わず、僕が尊敬するサンリオの創業者 辻信太郎さんの努力を思い浮かべた。

 サンリオは、その商品自体が必需品ではない。例えば、手が汚れたから石鹸を使う必需品とはわけが違う。ただそれがあっても何に役に立つかの説明がつかない。だから「商品以外の部分でどう付加価値をつけるか」にこだわった。それが本当に素晴らしいと思う。

 それゆえに辻さんは少女誌を発行し、直営店を作った。そしてその商品の包装紙には何かしらの小さなおまけをつけた。そうやって人々を笑顔にする工夫を怠らなかったのだ。それをもって商品を補完し、その商品が夢を与えて、人々を幸せにする事を意図した。

関連記事:サンリオ 時代に“先駆け”60年の歴史 その功績を“サンリオ展”に想う

 繰り返すが、キャラクターグッズは直接的に、明確な役割があるわけではない。けれど、目に見えない価値は心にどれだけ訴えかけるかと比例していて、そこを追い続けてこそ、キャラクターグッズだ。僕はずっとそう思っている。

2.見つけて繋がり、持ち歩く

 そんな話に、前のめりで聞き入る後藤さんはこう話した。

 それを前提に同じように応援するフォロワー同士が繋がって、自分達の手掛ける「キャラクターグッズ」もそれを伝播させるものでありたいと。

 そういうメッセージを持ちながら、そのグッズを持ち歩く人自身はオシャレでなければ、それは広がらない。だからグッズ制作も本気なのだ。アイテムを持ち歩くことが誇れる事である。だから持ち歩くのであって、その姿に憧れないと意味がないからだ。それも、非常に共感できるものだった。

3.とことん考えて見えてくる世界がある

 昨今、売れるキャラクターに飛びつくライセンス窓口や、メーカーも少なくない(と僕は思う)。でも、それは結果論であって、大事なのはその途中経過。このクリエイティブなこの想いである。

 僕は思うのだ。サンリオで言えば、六十年前はそういうやり方だったろう。けれど、今の時代だったら今の時代にふさわしく、深掘りすることが大事だと。今欠けているのは、そこを考えることなのではないかと。別に彼らが正しいとは言わない。けれど、このくらいそのキャラの仕掛け、考え、ターゲットとの向き合い方を考えてこそ、ヒットは生まれるんじゃないかと。それを感じたのは事実だし、それを考えていこうよと思った。

 記事を書くつもりで会ったのではなかっただけに、撮った写真が僕と撮った冒頭写真だけだったというのは許して欲しい。でもさ、その方がリアリティあるよね。トークでそれだけ感じるものがあった証拠だから。

 今日はこの辺で。

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