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心躍らす“エンタメ”未来の試着を創る 鳥巣彩乃さんとSally127の挑戦

 「試着」と聞くと、ただ服を合わせるだけだと思う人も多いかもしれない。それも間違いではない。けれど、その服を着ることで自分が変わり、未来の自分にワクワクする。そんな高揚感を生む側面もあるだろう。それをテクノロジーで追求しているのがSally127だと、僕は感じた。試着がもたらすポジティブな気持ちは、やがてブランドの価値を高め、ファンを生み出す力になる。代表取締役の鳥巣彩乃さんの話を聞き、その信念を痛感した。アパレル業界の課題を革新の視点で捉え、試着の未来を切り開く彼女の挑戦を、これから深掘りしていきたい。

1:Sally127が描く「バーチャル試着」の可能性

 Sally127は、アパレルECサイト向けに特化したオンラインバーチャル試着サービスを提供する企業である。

 独自のAI(人工知能)とAR(拡張現実)技術を駆使し、スマホ一つで消費者が手軽に試着体験を楽しめる仕組みを作り上げている。このプラットフォームの特徴は、特別なアプリや開発コストを必要とせず、ECサイトにボタンを埋め込むだけで利用可能という点。

 これにより、消費者は10秒以内に試着を開始でき、リアル試着に近い精度を実現した。

 「試着カメラ」ボタンをタップし、「スタート!」を押してスマホを置くだけでAIが身体を認識し、試着が始まる。プライバシーは厳重に保護され、データが他者に見られる心配はない。カメラが使えない場合は全身写真をアップロードする合成試着も利用可能。

 電車内や寝る前など、環境を選ばずに試着を楽しむことができるのだ。

 また、試着体験を通じて消費者心理を動かし、購入意欲を高める工夫が随所に見られる。このシステムを導入したECサイトは、返品率の低下や顧客満足度の向上を実感しており、Sally127の革新性が市場で評価されつつある。

 ただ、本当の革新性は?というと、冒頭話した“心を躍らせる”試着であることにある。

2:試着を「自然」に溶け込ませるデザイン哲学

 Sally127の技術の評価は、鳥巣さんの強いこだわりに裏付けられている。

 彼女が語るのは、「要件を満たすだけではなく、試着体験を日常に溶け込ませることの重要性」だ。

 「人が無意識に使うようなUI/UXを作ることが理想」と鳥巣さん。つまり、見た目の美しさや使いやすさだけでなく、感覚的に「自然」と感じられるデザインを目指している。

 ここにはとても共感できる部分があった。

 実際、Sally127の試着体験は、「試してみよう」と思わせる高揚感を演出しながらも、消費者がストレスなく使用できる工夫がされている。

 そのため、特別な操作を必要とせず、誰でも簡単に使えることが評価されている。

 そして、何気ない“わっ!楽しい”の部分に焦点を当てている。その行為によって高揚感が生まれるためには、日常と変わらぬ“エンタメ性”を持っていなければならない。

 だから、手で持つ以上、スマホに映し出される画面上に小さな揺れ(ブレ)が生まれることもある。ただ、それすらも取り除くよう配慮している。

 なぜなら、その前向きな感情が削がれるからだ。揺れて見づらくなるのは、日常の試着の光景とは全く違う。ここは、理屈ではない。この辺が、女性的感性が細部に宿る部分であり、大事にしたいところだ。

 Sally127の技術はそのこだわりはゆえに先進的であると言える。改めて注目すべきポイントを箇条書きで整理してみよう。

3:技術的優位性がもたらす革新

1. アプリ不要のブラウザ技術

 他の多くのバーチャル試着サービスが専用アプリのインストールや高額な開発費を必要とする。そんな中、Sally127はブラウザ上で動作する仕組みを開発した。

 ユーザーはECサイトで「試着ボタン」をクリックするだけで、自分の姿に服を重ねることができる。この利便性が、サービスの利用ハードルを大幅に下げている。

2. ARとAIを活用したリアルな体験

 Sally127のAR技術は、服の後ろ身頃まで正確に表示。実際に服を着ているような感覚をユーザーに提供する。この精度の高い表現は独自の特許技術に基づいている。

3. 導入の手軽さ

 アパレル企業側も特別な技術者や高精度なデータを用意する必要がなく、簡単に導入できる。この手軽さは、特に中小企業にとって魅力的で、幅広い導入を可能にしているのだ。

4. 多様なファッションブランドに対応

 Sally127の技術は、徐々に、大手から中小企業まで規模を問わず、ファッションブランドで広がりを見せている。それは手軽にできるとともに、コストパフォーマンスにも配慮した結果でもある。

5. 購入意欲を高める設計

 実際の導入事例では、バーチャル試着を利用した商品の売上が倍増し、返品率も低下する傾向が見られる。この結果は、試着体験が消費者に与える安心感や購入決定のしやすさに起因しているのである。

4:アパレルへの情熱が形に

 鳥巣さんの経歴を振り返ると、彼女のアパレル業界への思い入れが見えてくる。

 大学時代、アパレル系学科ではなかった彼女。しかし、学生時代から積極的にアパレル業界に飛び込み、業界の課題を直に感じてきた。だが、アパレル企業に就職がなかなか叶わない。結果、少し遠回りしてアパレルの最前線にいる。

 特に、試着ができないオンラインショッピングに不満を持つ消費者の声に耳を傾け、それを解決するべく、ソリューション開発に時間をかけてきた。先ほど、些細なことすらも見逃さないと書いた通り。

 何度となく、漠然としたイメージをCTOを務める小野沢 敦さんには伝えてきた。この話を聞きながら、サービスにとってのエンジニアの大事さを思う。シナブルの小林さんが熱っぽく語っていたことを思い出した。

関連記事:買い物を変える 新たに創る、シナブル代表取締役 小林裕紀さん その傍にエンジニアがいる理由

 言われた通りに作れてエンジニアは当たり前。その一歩先を行き、こういうのはどうですか?そう形で示せるのが優れたエンジニアなのだ。そして、満を持してサービスが産声を上げたのは起業してから数年後。

 「アパレルを通じて、もっと多くの人に喜んでほしい」という情熱が、現在の事業の原動力となっている。

 その情熱は、技術面だけでなく、サービスの細部にまで行き渡る。Sally127のサービスが単なるツールにとどまらず、体験としての価値を持つ理由となっているのである。

5:今後の展望と目指す未来

 だから、Sally127のビジョンは、試着を再定義するだけにとどまらない。

 将来的には、消費者が自分に似合うアイテムを自動で提案される機能や、友人同士で試着体験をシェアできるソーシャル機能の実装も視野に入れている。また、バーチャル試着を通じて顧客データを蓄積し、それを基にしたマーケティング支援を行うことで、アパレル業界全体の成長を支える構想を描いている。

 鳥巣さんはこう語る。

 「試着をただの機能にするのではなく、人々の生活の一部にしたいんです。それができれば、試着の概念そのものが変わると思います」。この言葉には、Sally127が目指す世界の可能性が凝縮されている。

 鳥巣彩乃さんとSally127が生み出す新しい試着体験。それは、アパレル業界を次のステージに押し上げる可能性を秘めている。

 単なる技術の提供ではなく、消費者との新しい接点を創出する取り組み。それは試着を通して、ブランドでエンターテイメントを起こすことに相当する。アパレルECの未来を照らす灯台となるに違いない。そんな彼女の諦めない熱意に敬意を表し、この文章を送る。その挑戦をどうか見続けてほしい。

 今日はこの辺で。

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