リユースが未来を変える 2025年、ここから新たな一歩が始まる 「リユースフェス 2025」
「リユースフェス」という名のイベントに来て、元も子もないが、リユースという言葉も過去になるだろうと思った。リユース品を身にまとい、新品をアクセントとして加える。それがごく自然に行われる日、人々はどれだけ“中古”や“新品”という枠組みに縛られていると言えるだろうか?もはや、リユースと新品が一体として捉えられるところに未来がある。そのことを、「リユースフェス2025」で多様なバックグラウンドを持つ専門家の話を聞きながら、自問自答していた。
・デジタルがもたらしたマーケットの広がり
さて「リユースフェス2025」とはなんだろう。国内外のマーケットプレイスから業界のトップランナーが一堂に会し、リユースとファッションの未来を熱く語り合う。今回のテーマは「持続可能な進化 – 10年後のファッションとリユース」。
そんな小難しい話は抜きにして(失礼!)、僕は、主催するWASABI大久保博史氏から誘われ、熱い魂のようなものを感じて、足を運んだ。確かに、来る前と来た後での印象が変わった。それは事実である。
それが最初に書いた通り。リユースという言葉はもう過去なのかもしれないということだ。そもそも、リユースは何もデジタルが云々語る前より、存在していた。ただ、それもアンダーグラウンドな世界で、日の当たらないところで広がる商売に近かったように思う。
だけど、テクノロジーの進化により、オープンなものとなった。それにより、ごく日常に一般消費者がそこに興じるようになった。まるでコミュニケーションをとるようにして、それが行われると、マーケットとして裾野が広がったのだ。
様々な切り口でリユースは市民権を得ることになった。
当然、そうなれば、マーケットプレイスは、そこを見逃すはずはない。同イベントで、メルカリ、eBay Japan、LINEヤフー、ZOZOの各社の担当者が一堂に介して、取り組みや課題を語りあうのも、自然な流れである。僕が見たプログラムの一つであった。
・身近で多様性を帯びたリユース
そこでは、LINEヤフーの西谷健祐氏が、マーケットの広がりとともに、以前と比較して格段に、扱う商品の幅が広がっていることを口にした。ネット黎明期から彼らがやっている「Yahoo!オークション」では、楽器や音響機材、デジカメなどが堅調。高価格帯の商品が多く取引され、今もマーケットとして確固たる地位を築いている。
ただ、そこに加えて、Yahoo!フリマの成長が著しいわけだ。
日常使いの商品を軸に、ユーザーがカジュアルに参加するスタイルが定着。リユース市場が、限られた人のものではなくなった。だからこそ、多くの人に馴染み深い「LINE」や「PayPay」といったグループ内のサービスとの連携を活用することの意義を語る。
身近になった分だけ「ユーザーにリユースへの関心を持たせるタイミングを見極めて訴求する」と語り、消費者がリユースに触れるきっかけを増やす重要性を強調したのである。
・一次流通と二次流通がフラットに渡り合う
ZOZOの島村龍也氏は、それを踏まえて、消費のあり方の変化に言及した。
「リユースが一次流通とつながり、新品の販売促進にも寄与する循環型の仕組みが重要であると考えるようになった」とし、リユース商品購入後に新品への移行を促すビジネスモデルの重要性にも触れたのである。
実際、アウトレットや古着購入がきっかけでそのブランドのファンとなり、後に新品を購入するサイクルも見られる。特に注目されたのは、「買い替え割」を活用したリユースの促進であった。
まさに、それはZOZOUSEDを中心とした「ファッション特化型リユース」の強みを最大化させる部分なのである。
・リユースで日本の価値が世界に伝わる
eBay Japanの篠原星氏が強調したのは、「グローバルリーチ」と「日本独自の商品価値」の活用である。
「eBayでは日本の商品、特にヴィンテージやファッションアイテムが海外で非常に高い評価を受けています」と篠原氏。日本製品が持つ品質やデザインがグローバル市場で競争力を発揮していると説明した。
たとえば、スニーカー市場ではアシックスやミズノといった日本ブランドが世界中のバイヤーから注目されている。また「逆輸入のような形で、日本の古着やヴィンテージ商品が海外で評価され、再び日本国内に戻る流れも出てきている」と述べた。要するに、国境を超えたリユース市場の可能性を提示している。
同じく、海外市場への拡大について言及していたのが、メルカリの藤樹賢司氏。国内のCtoC取引の成熟度に伴い、CtoC取引の多言語化や物流の効率化を推進していると語った。
「メルカリでは、日本ならではのホビー商品やヴィンテージトレーディングカード、さらにはコミックやアニメ関連商品が海外で非常に高い需要を持っています」と藤樹氏。日本文化に根付いた商品が海外市場をけん引している点を強調している。
メルカリは海外の人に受け入れられる素地を作り、そこに新たな可能性を見出しているのである。
・10年後の社会とリユースの展望
テクノロジーの進化でリユース市場は広がりを見せ、消費者の意識も変化した。一次流通と二次流通がフラットに共存する未来が現実となりつつある。そして、その変化は日本国内だけでなく、グローバル市場でも新たな価値を生み出している。
それを踏まえて、その後のプログラムでは、商品を扱う側の立場で語られた。
リユース経済新聞 編集長 瀬川 淳司氏の進行により話したのは、ビームス、ウィゴー、ゲオホールディングスに加えて環境省の関係者。「2035年のリユースとファッション」というテーマで語ったのである。
思うに、ここまではリユース単体の話であった。ただ、ここのプログラムで印象的なのは、それが、小売業にも変革をもたらしていることなのだ。ウィゴーの園田恭輔氏の話を聞けば、それは明白。彼らは、自社で一次流通(新品販売)と二次流通(古着販売)を両立させて、右肩上がりの成長を描いてきた。
「新品と古着の融合により、顧客のライフステージに応じた提案が可能になる」と園田氏。
さらに、「学生時代には手の届かなかった高品質なブランド品が古着として提供され、社会人になってからそのブランドを新品で購入するようになる。そんな循環が生まれています。」そう語る。彼は、持続可能性と顧客育成の観点で、二次流通の重要性を強調したのだ。
•若年層に生活変容
ビームス門脇匠太氏も呼応して、若年層の消費行動の変化を取り上げた。
「古着は単なる廉価な選択肢ではない。もはや自己表現の手段」として位置づけられつつあると。つまり、リユースがファッションの新たな価値観を形成する重要なツールとなっている。これは大きな変化である。もはやリユースの立ち位置が変わったことを示す。小売店がそれを話すことの意味を考えたほうがいい。
それは環境問題にも関わっていて、社会的意義を伴う。衣料の循環という部分で、国がどうバックアップできるか。その視点で語ったのが、環境省の近藤亮太氏である。
家庭から排出される衣類廃棄の現状について次のように説明した。
2022年には国内供給された衣類79.8万トンのうち、約9割にあたる73.1万トンが家庭で使用された後、手放され、その64.3%が廃棄されている。一方で、リサイクルは17.4%、リユースは18.1%にとどまっている。だからこそ、リユースは伸び代があるとしているわけだ。
この高い廃棄率を改善するためには、リユースやリサイクルの促進が鍵。近藤氏はそのように触れ、二次流通市場の整備や回収プロセスの効率化、消費者意識の変革が必要であると述べた。
2030年までに2020年度比で家庭からの衣類廃棄を25%削減する目標を掲げているとか。
・小売業界の視点からもリユースが重要に
また、ゲオホールディングスの竹中岳氏は、リユース市場の成長率について言及。
竹中氏は、「2030年には国内小売市場全体が2015年比で88%に縮小する。その一方で、リユース市場は242%に成長する見込みである」と述べ、リユース市場の拡大に期待を寄せた。
具体的には、リユース市場が2030年には小売市場全体の3.5%のシェアを占める。そう予測され、リユースが小売業界の重要な柱として位置付けられる時代が訪れるという。
「これが小売業界の縮小を補う力となるでしょう」。消費者の意識が新品からリユースへと移行しつつある現状を強調したのだ。
昨今は、買い取り専門店や出張買取サービスも増えてきた。そういう企業側の努力もまた、リユースをより身近なものにしていくことになる。加えて「販売できない商品も廃棄せずにリサイクルへ回す」というエコ買取の取り組み。これもまた、環境負荷の軽減に大きく貢献するだろう。
つまり、消費者の意識の変容から店や自治体に変化が起きた。だから、それらの動きは今後、この業界を支える柱となりうることに言及したのだ。
リユース市場の未来
だから、もっとリユースが存在感を示す。
そして、忘れてならないのは、未来に向け、消費者へのマインド・チェンジを促すこと。改めて、今回のイベントがよりあらゆる層に訴えかけるものであった所以である。僕が駆けつける前、先ほどの登壇者の一部は学生に、別のプログラムでプレゼンテーションしていたほどだ。
極め付けはファッションショーである。勿論、単なる賑やかしでも、パフォーマンスでもない。未来へのメッセージとしてそれを行う。
始まる前の映像で、年間50万トンを超える衣料廃棄の話に触れた。一方で、劣悪な環境で働かざるを得ない人たちが世界には数多くいることを明らかにした。今こそ、廃棄物を拾い上げ、それを事業に結びつけ、新しい価値へと変えて、そこに健全な働く環境を作り出そう。そんな彼らの力強いメッセージがそこにはある。
ファッションショーで着目したのは、リユースの着物。そこに才能を掛け合わせて、オリジナルのファッションを生み出す。
これでお分かりいただけただろう。リユースは単なる節約手段ではない。サステナブルな社会を築くための重要な基盤。そしてファッションの表現手法なのである。もはや、リユースと新品が一体として捉えられるところに未来がある。リユースが未来を変える2025年、ここから新たな一歩が始まる。
今日はこの辺で。