元Google開発者が語る「生成AIは働き方の限界を超えていくことで未来を創る」
ビジネスってそれがなぜ難しいかと言えば、制約があるからだと思う。予算や時間に限りある中で、仕事をしている。だから、それが成功するとは限らない。なぜ、こんな話をしているのかというと、昨今話題の「生成AI」は、まさにそこに明るい兆しをもたらすからだ。これは、先日、Japan IT weekで話してくれたMODE という会社のCEO上田学さんの話に基づく。
2022年11月30日 時代の分岐点となる歴史的な日
上田さんは、元Googleのエンジニアで、Googleマップを開発した人物。しかし、そのGoogleの肩書きすらも価値を持たなくなるのだろう。そう感じた事件として2022年11月30日のOpen AIのchatGPTの発表を挙げ、その生成AIにまつわる可能性に言及しはじめたのである。
不思議な話だけど、彼が冒頭、取り上げた話題は、僕らが暮らす日常のなんともアナログ的な側面の話であった。例えば、最近、渋谷駅の工事で、改めて人の力が話題になっているように、あのような人たちがいるおかげで、僕らは何気なく、普通に生活できている。
それ自体はなんら生成AIと関係ないじゃないか。そう思う人もいるだろう。だが、生成AIを紐解くほど、結びついてくる。では、そもそも「生成AI」は最近、どのような進化を遂げているのか。そこからみていくことにしよう。
彼が例として挙げたのは、葛飾北斎の富嶽三十六景。生成AIにこう依頼を投げかける。まず、決められたストレージ(容量)に合わせて、その絵に準じた静止画を作ってほしいと。そして、こう続ける。それらをつなぎ合わせて、音楽に合わせて動画にしてほしいとも。すると、あの荒波が、ミュージックに乗って動き出す。
これをたった一人のクリエイティブで実現させてしまうわけだ。
静止画、動画、プログラミングにも変貌を起こした生成AI
今度は静止画ではなく、動画である。度肝を抜いたのは、chatGPT自体が『Sora』といって、テキストプロントだけで、動画を作り出すサービスを発表したことだ。彼らがそれを使って作成した動画が、公開されているけど、東京の街並みを、撮影したかのようなリアリティを持って、流れている。
もはやデザイナーへの発注が要らなくなる。
さらに、彼らソフトウェアエンジニアにおいても、例外ではない。生成AIでは「こんなプログラムが欲しい」というと、それを書き出してくれる。つまり、プログラミングの素養を身につけている。それだけなら、まだしも彼らに脅威だと感じさせたのは、『Open Devin』である。
作りたいものを告げると、その関連するAPIまで探しに行く。そして、それをテキストで書き起こすとともに、説明書を作成。コンパイルしてくれて、実際にそれを走らせ、テストまで行う。バグが発見されれば、直ちにその修正も行う徹底ぶりである。
もはや、ソフトウェアエンジニアも要らないじゃないかと。
そして、ここまで静止画、動画、プログラミングときて、次はロボットだとされている。ロボットが生成AIと結びつくとどうなるか。人間の格好をしているから、人間的動作を“生成”していくわけだ。こうなると、コンピュータは人間と当たり前に共存していくことになる。
シンギュラリティの現実は想定より想定早く?
そういう状況から、再度、脚光を浴びているのが、シンギュラリティという言葉。コンピューターの知能は、人間の知能を超えるだろうということを意図する言葉。それが起こるのは、2045年だとされている。だが、大幅に早まる可能性が濃厚だ。
ただ、上田さんの話を、聞けば聞くほど、彼はそれを強調したいのではないことに気づく。生成AIは、ある意味、僕らの人間がそれまでやっていた“作業”を引き受けてくれるもの。
それが冒頭に話したことに直結してくる。僕らは制約のある中で、ビジネスをせざるを得ない。そこでこれらの生成AIが、人間にかかっていたコスト分を、軽減する。そうすることで、より僕らの頭の中にある発想を形にしやすくしてくれている。そう考えることもできるのだ。
具体例を挙げてみよう。「2024年問題」がそうだ。人手不足は社会的関心事となっている。だけど、それは日本に限った話ではない。実は、先進国が皆一様に抱える問題なのである。そこに答えるのが、生成AIを取り入れたテクノロジー。それで、アナログ的な要素をどれだけフォローしていけるかということなのだ。
全人類を動かす圧倒的なアナログ世界での働き方を変える
2024年4月に、NVIDIAが実施した「GTC AI カンファレンス」では、それらのテクノロジーで倉庫の改善の話をしていた。NVIDIAは言うなれば、それらを支えるOSである。だから、倉庫において生成AIを実装したロボットを導入して、倉庫内の解決策を提示したのである。
ロボットとの間で、人間が会話を繰り広げ、必要な作業を自らこなす。
何が言いたいのか、わかるだろうか。
つまり、それが最初の話に戻ってくる。全人類を動かしているのは、先ほど触れたようなアナログの世界。それが7割、8割の仕事を占めているのである。そういうものを取り入れながら、リアルの現場に入り込み、働き方を変えていく。それが、これから生成AIのあるべき未来の姿なのだと、説明するのである。
上田さんの会社はまさに、それを具現化していくための事業をしている。エンジニアが自ら、そういう現場に行き、ヘルメットを被って、それらのテクノロジーが通る、必要な道筋を示す。そこに先ほど、危惧を感じていたエンジニアの役目を見出したと言える。
だから、何も生成AIに支配される、なんてことはないだろう。それ以上に、僕ら人間が考え方を改め、新しい働き方を受け入れ、新たな一歩を踏み出すこと。そこにこそ、価値があるのである。
今日はこの辺で。