【オムニチャネルDAY2024】企業の垣根を超える「共創」とオムニチャネルの新しい意味

正直に言うと、初めは「共創」というテーマと「オムニチャネルDay」というイベントが、どう結びつくのかピンとこなかった。ところが、セミナーをいくつか聴くうちに「そういうことか」と腑に落ちたのである。僕自身は「オムニチャネル」という言葉に固定概念を持ってしまっていたのかもしれない。しかし、オムニチャネルDAYを主催するオムニチャネル協会の狙いは、もっと広いところにあった。
※イベント全体の背景や、多様性・地域連携にまで広がる共創の話は、もう一つの記事「地域・性別の垣根を超える“共創”と多様性の可能性」でより詳しく紹介しています。合わせてご覧ください。
オムニチャネルって何だろう?
そもそも「オムニチャネル」とは、リアルとネットの垣根を超えてお客様と向き合い、関係性を築くことを指します。結局、向き合う相手はどこを介しても同じ一人。だからこそ、同じ温度感で接することが、より深い繋がりを作るカギになる。
たとえば、リアル店舗とEC双方のデータを連携して、お客様の今を捉える。
ただそれはインフラに過ぎず、さらにデータを接客に活かすなどして初めて本領発揮となるわけだ。そのためリアル店舗でも、細かく情報を吸収しやすいネット(EC)を無視できなくなり、結果としてECの存在感がますます高まっている。
そう考えると、オムニチャネルの真骨頂は「いかに垣根なく顧客を捉え、関係を深めるか」。しかし、今回セミナーを通じて感じたのは、もっと広い意味での「共創」がキーワードになっているということである。
デジタルの時代こそ、誰でもブランディングできる
「共創」という言葉を考えるうえでカギになったのが、この日、同イベントに登壇した、フラクタの創業者・河野貴伸さんの話である。
彼が重んじるのは、ブランディング。これは従来、一朝一夕にはできないものだとされてきた。
だが、デジタルを用いれば生産性高く、多くの企業がより身近にブランディングを実践できるようになる。そう河野さんは考えて、フラクタを立ち上げるに至る。時代に先駆けた、必要な発想に感銘を受けた。
確かに、近年、D2Cの台頭を見れば分かる通り、個々の企業がデジタルを活用して自分たちの立ち位置を確立。顧客との関係を築く時代である。そこでブランディングはさらに身近なものになったのだ。
河野さんは「このデジタル時代に、自らの個性を発揮し、ブランディングする意味」を語り、そうすることで企業が飛躍できると説く。
個々の尊重をするためのプラットフォーム
河野さんのフラクタは、スタートアップ企業との接点が多いとか。
一方、そのスタートアップ企業との繋がりに注目しているのが、丸井グループである。彼らは「OMEMIE(おめみえ)」というサービスを通して、スタートアップと接点を持ち始めたのだ。
丸井といえば百貨店のイメージが強いかもしれない。けれど、実は金融もルーツにあり、両輪で拡大を図ってきた背景がある。だからこそ発想が柔軟なのだろう。「売らない店」という斬新な視点で百貨店の“売り場”を変貌させ、普段リアルに出展しない企業にも場所を提供する取り組みを行っている。
- • リアル店舗で世界観を伝える
- • 接客ノウハウをスタートアップ側にリソースとして提供
- • ネットストアで売れてもOK(柔軟な期間や条件設定)
この場を最大限に活かすために設計協力を行ったのが、実は、フラクタである。スタートアップと同じ目線で必要なサポートを考えれば、活用しやすいサービスになると確信していたのだとか。
小粒であるがゆえに、共創は避けて通れない
ここで気づいたのは、「今躍進する企業の多くは小粒である」という事実である。
小粒だからこそ、一社のみで突破するのは難しい。しかし、多様な企業と手を取り合えば、互いの価値を倍加させることができる。まさにこれが「共創」なのだと。
小さな価値観がビジネスとして成立する今の時代。D2Cなども、ニッチな分野でブランディングしながら成長を目指している。そうした企業同士が手を取り合えば、単体では得られなかった価値を創造できるのだ。
※「オムニチャネルDAY2024」もう一つの記事では、地域連携と多様性(特に女性活躍)から考える“共創”の広がりを取り上げています。企業間だけでなく、地域や性別の垣根を超えた視点でオムニチャネルと共創を捉えたい方は、そちらもお読みください。