生協などでヒットを飛ばす プランドゥ その独創性のわけ
全ては創意工夫。伝え方も、商品力も工夫ひとつで、まるで変わる。効果、性能を謳うばかりではなく、その商品のロジックで人を唸らせる。僕自身、元来、人の真似はしたくないと思っているから、プランドゥ代表取締役 山中雅嗣さんの独創的なアイデアには一目置いている。伝えるべき価値を考慮し、商品に反映し、実感につながるものづくりをするからだ。今回は、その創意工夫を生み出す秘訣に迫ったのだ。
プランドゥ の他には見られぬ着眼点
1.生協などでヒットを飛ばす
プランドゥはこれまで生協などを売り先に持ち、ユニークな視点の商品を数多く輩出。いずれもヒットへと導いていて、冒頭話した通り、いずれも他にはない視点で目を引く。
その着眼点を聞けば、見事なのだが、こちらの写真を見てほしい。
例えば、靴のそこに入れるインソールは、街中のショップにも溢れている。けれど、プランドゥの商品は、人の何気ない行動を引き起こして、悩みを解決するのであり、ここが見事なのである。
歩くのに不都合な悩みというのは結構あって、むくみや外反母趾、股関節が痛い等、様々。そういう苦痛をインソールによって解決しようというわけだ。その解決の仕方が、人の“何気ない行動”を引き起こして、それをテコにしたもので、実に爽快である。
2.そのメカニズムは人間の習性を利用する
案内してくれたのが体幹筋インソールである。例えば、体幹筋を鍛えたいと考える人に向けて用意したのがこちら。インソールの前方に体幹ボールという突起があるというのだ。
なんでですか?山中さんがにっこりして答えた中身が痛快だ。「人は誰でも、母指球に力を入れると、立った時に体幹筋に力が入るんですよ」と述べる。
「え?母指球」ってなんですか?まず「母指球」は足のこの部分のことを言う。
先ほどの写真の通り、このインソールはこのピンク色の部分(母指球)に自然と力が入るように設計されているわけだ。すると、山中さんが言う通り、人は母指球に力が入ると、自然と体幹筋に力を入れてしまうわけある。皆さんも自分のこのピンクの部分に力を入れてみてほしい。
3.惹きつけられる“見せ場”
プランドゥの商品は全てこういうロジックが散りばめられている。とはいえ、それ自体は地味な要素。だから見せ方にも配慮し、感性に訴えかけるようにして商品企画に生かすわけで、このバランスが秀逸だ。
例えば、腰痛対策の商品ではその第一印象からこだわっている。
写真の通り、インソールを裏返すと、ハニカム構造という蜂の巣のような形状を裏面に取り入れている。これは衝撃を吸収していくものである。ごく一般的に言われている要素で、それでキャッチーに気持ちよさそうという印象を抱かせるわけである。つまり“見せ場”である。
4.ロジックがブローのように効く
一方でもう一枚写真を見てほしい。この腰痛を持つ人へのインソールは外の方(踵の部分)がやや高め。そして、中にいくほど低く設計されている。つまり、さきほどのハニカム構造で衝撃吸収をした後は、今度、その設計で膝への刺激を軽減し、力をかけることなく、蹴り出せる高反発の要素を持つ。だから、腰に負担がかからないのだ。
「商品というのはそういう理性の部分とパッと手にとりたくなる感性の両面で訴えかける事が大事」と山中さんは説くわけである。商品作りとアピール要素を兼ね備えたところを念頭に置いて、開発しているのがプランドゥの真骨頂といえよう。
まさに、そういう悩みがこのインソールと普通のウォーキングで解決するのだから、飛びつくのはよくわかる。
アイデアは無限に広がる
1.雑貨でもそれは生かされる
この姿勢はどの商品においてもブレていない。必ずロジックと見せ場を共存させているのだ。僕が感心してしまったのは、「お魚天国バイオキューブ」である。要は、これを入れておくと、水槽が綺麗になるという商材。
勿論、説明の中には「納豆菌」というキャッチーな“見せ場”を入れて、浄化能力を謳ってはいる。けれど、ここでも彼らなりのロジックが働いている。それは「多孔質」と呼ばれるものである。これは、多数の小さな穴が空いている構造のことを言う。
そこで水の性質を利用する。これを水の中に入れていると「多孔質」の場合、そこにバクテリアが住みつく。だから、そのまま置いておくほどに、それらの間を水が通り抜けて、自然と濾過されると言うわけである。先ほどは人の力をテコにしていたけど、ここでは自然をテコに、別の悩みに応えている。
つまり、インストールと根本は変わりない。ロジックと感性の両面から訴えかけることで、人を惹きつけつつ、実用的な側面を抑えて、ヒットになっているわけだ。これは見事である。日毎のインプットもただそのまま、アウトプットするのではない。独自の視点で、ユーモラスにアレンジして、“変化球”に変えるから、独自のマーケットを築けるのだ。
2.アイデアは感性に訴えかける
上記の通り、感性とロジックのハーモニーは、彼らが生協の一枚絵の商品説明で、どう伝えるかに真摯に向き合ってきた功績かもしれない。商品での説明を念頭に置いて、アイデアをどう抽出するか。常に、彼らは商品をメディアのようにして、何気ない視点を違った視点で演出して楽しませるのである。
最近では、それらの広告なども自ら手を入れて、文字や写真など全て、同社が手掛ける。つまり、彼ら自身が表現や文言を自ら一手に受けることで、その反応はダイレクトに反応となって返ってくる。でも、そうやって彼らは自らの表現力を鍛えて、商品力を高めているのだ。
山中さんの表現は常にユニーク。そこでの表現に関して、こんな言い方をして、何を伝えるかにおけるヒントを教えてくれた。
3.見せ場で惹きつけ、ロジカルに解決
「例えば、ジョージアの缶コーヒーを見て、別に「じょーじあ」と読んでいる人はいないんです。あのロゴを見て直感的に「あ、ジョージアだ。コーヒーだ。」と認識しているはずなんです」。
「読ませちゃダメなんです」と。言うなれば、「外反母趾」といったキーワードも、そのジョージアに等しい。悩みのある人にとってはそれは、シンボリックな画像なのである。それをその原稿に入れておくだけで、衝動的に手を出してしまうという事なのだ。
これが商品作りに戻ってきて、“見せ場”を作っている事が活きてくるという事になる。それがハニカム構造であったり、納豆菌であったり、といった具合。それで引き寄せつつも、結果、それはこの会社のロジックに誘うことで、それに皆が納得するわけだ。
商品は伝わらないと意味がない。また、伝えるべき価値が商品になければいけない。まさにその両者のバランスの中に、彼らの今の勢いを形成している。プランドゥ、あっぱれ。
今日はこの辺で。