“サスティナブル”を 加藤ジーナ 片岡沙耶 ら20代の若き力が先導する
“サスティナブル”という言葉をよく耳にする。それが今を謳歌する20代の価値観を変え、自ら行動を奮起させるほど、影響を与えている現実をご存知だろうか。僕がこの日、会ったのは 加藤ジーナ さん 。自らサスティナブルのお店を立ち上げたといい、その横にはそんな彼女に刺激を受けて、この日一緒にイベントをすることになった 片岡沙耶 さんの姿もあった。彼女もまたブランドを手がける経営者である。
加藤ジーナ 片岡沙耶 とS.I.C.を結びつけたサスティナブル
そもそもこのアップサイクルイベントS.I.C.ショールームの呼びかけで始まった。同社はリボンなどの服飾副資材を手がけていて、その中には処分せざる得ないものもあるという。
その理由は色々あれど、例えば、その元となる糸や染料が生産しなくなることで、彼らは自らのリボンで意図する色を再現できなくなったり。つまり、作れないのに中途半端に残してしまえば、取引先に迷惑をかけかねないから、といった具合である。
だからS.I.C.ショールームの鎌田進さんは、廃棄の対象となったリボンなどの服飾副素材を、サスティナブルのお店を手がける加藤ジーナさんと連携し、イベントをしようと着想した。これでリボンなどを無駄にすることなく、かつ一度、価値を失ったものが、彼女の手により息を吹き返すことがあればこれほど企業として嬉しいことはない。
加藤ジーナ さんがサスティナブルに拘る理由
加藤ジーナさんは「miss♡gina」というお店を展開していて、扱う商品は全て企業から集めた廃棄の布や服飾副資材を元に自らが作ったものである。ではなぜ、彼女はそのようなサスティナブルに目覚めることになったのかというと、きっかけは母親が営んでいた洋服屋。ネットでもそれを販売したいので、手伝って欲しいと言われたのが始まりである。
ただ、元々ジーナさんがテレビ出演経験もあって、お店のネットを裏方でやるよりは自分でやったほうが良いという後押しを受けることになり、紆余曲折を経て、自ら別にネット通販で服飾系を販売する決意に至る。しかし単純に洋服を売り出すことはしなかった。それは、バングラデシュのビル崩落のニュースなどを耳にして、サスティナブルに強い関心を抱いたからである。
「バングラデシュのビル崩落?」と僕。すると、彼女は「バングラデシュは世界の名だたるブランドの衣料品工場が数多く集中しています。ただ生産を優先して工場に耐久力に不備があってもそれを放置していました。そして悲劇は起こり、その衣料品工場で働く若い女性の命が多く失われたのです。もう何年も前の話です」と。
そこからヨーロッパでは倫理的な問題としてファッション業界の実態に向き合い始め、著名なモデルは動物の皮を使わず作成したバッグなどを手がけるようになった。ただ、日本は遅れていて、そういうブランドが来るようになったのは昨年くらいだったという。
彼女はだからこそ洋服を売るにも「どこの企業から仕入れて売るべきか」を考えなければならない、と思うようになったという。そして、熟慮に熟慮を重ねて、廃棄の布や服飾副資材で、服飾系のアイテムを作り、販売するお店をやることにした。それが、「miss♡gina」だ。最初、あらゆる企業に自分から連絡を入れて、廃棄するものを譲って欲しいと声がけしたそうで、それほどの熱意でスタートしたものだった。
例えば、カーテンなどの素材で余ったものをベースに様々な廃材を掛け合わせ、エコバッグにするなどのアイデアを発揮。今回のイベントで言えば、写真の手前にある通り、リボンの素材をマスクストラップにするなどしていて、ものによってはリボンを上手に編み込んでいる。
ジーナさんの行動が自身と仲間の才能に光を当てる
そして、ジーナさんがこういう行動をすることで、また別の才能も発掘されるという現実も見逃してはならない。彼女とともに「miss♡gina」でデザインをしている富田志帆さんである。彼女もジーナさんとともに、このお店の商品を手がけていて魅力を言うならば「素材を活かす」斬新な発想である。
彼女が意図したのはS.I.C.のリボンの意外な“使い道”で、部屋着である。コロナ禍で外に出ない分だけ、機能性の高い部屋着をと考えられたもので、腰のところにリボンがついている。ちなみにこの服の素材も不要なものである。
下の写真を見て欲しい。左が一見ワンピースのようだが、この腰にある紐を引っ張り、足先の生地を上に持ち上げ、うまく束ねることで、右の写真の通り、足の部分がショートパンツになる仕様になっていて、リボンがあることでこの服の付加価値を高めている。一度、価値を失いかけたリボンが「miss♡gina」の手により息を吹き返したと言って良い。
自分のできることを追う中に片岡沙耶さんはサスティナブルを見つけた
そして、こういう「miss♡gina」の健闘ぶりに感化されたのが片岡沙耶さんで、彼女はグラビアを飾る仕事をこなしながらも、株式会社Amu 代表取締役という顔も持ち「BOW」というお店も手がける。
彼女は服飾系の専門学校を出ていることもあって、グラビアの仕事をしながらも、そういった水着やランジェリーを自分で作っていたそうだ。そうか、だから会社名もAmuで「編む」なのである。ただ、満を持して始めようという2020年春に、コロナ禍に陥ったわけである。「それらを販売するよりももっとやるべきことはあるよね」と予定を変更して、手がけたのがハンドメイドマスクだった。
一番、着目したのがサイズ感。「マスクをつける際、サイズが合わず、ゴムのせいで耳が痛い」という声であった。そこで、マスクの紐自体に長さを調整できるアジャスター機能を持たせる発想で、工夫を見せたのだ。当時、マスクの需要も高かったことで出だし好調で幕を開けた。
ただ、彼女もまた想いを大事にする素敵さを持ち合わせている。「マスクがなくて困っている人を助けたい」という気持ちが強く一部は無償で渡したりもしたが、それが結果的に、新たな仕事を舞い込む要因となり、仕事の幅が広がったとも話している。
さて、今回に至る経緯だが、片岡さんの積極的な動きが引き寄せたと言っても良い。元々ジーナさんとは同じ事務所に所属し、その動きを知っていたので気になる存在だったと振り返る。それは、自分と同じく「ものづくり」を追う存在だからと。それである時、彼女が原宿に立ち寄った際に、ジーナさんがラフォーレ原宿でイベントをやっていたことを思い出して、まだ接点のなかったジーナさんに会いに行くわけである。
結果、二人は意気投合した。「ジーナちゃん、こんな事やっているんだ!?」と彼女の活動を知ったことを契機に、今回、サスティナブルを意識したマスクを手がけた。今回のイベントでは、紐部分にS.I.C.の素材を使いながら、アジャスターの要素を加えて一つ一つ、手作りで作り上げた。彼女なりに“サスティナブル”に花を添えたわけである。
メッセージは伝わる、その想いとともにものづくりはある
今や物が溢れ、極論、同じ商品を探せば、どこにでもあるという時代である。勿論、良い物に巡り会いたいけど、人々の関心は、どこの企業から、あるいは誰からものを買うかに移ってきていると、僕は思っている。その中にあって、以前も書いたが、楽天リサーチのデータによれば「サスティナブルな買い物をする傾向が強まった人」の数は20代女性の全体の41.8%を占め、この数値は無視できないと僕は思っている。
だから、20代のジーナさんが自らの商品を通して、サスティナブルを啓蒙することに意味があると思ったし、これを受け止める人たちの行動を変えることが、また世の中を変えていく。また、サスティナブルというポジティブな視点で、富田さんのような才能が発揮されれば、クリエティブも素敵に変わっていく。
自らの行動力によりあらゆる事を引き寄せ続ける片岡さんの積極性は、常にこうした時代に必要な要素を吸引して、その愛くるしい笑顔とともに、多くの人を勇気づける力強さがあって、それも込みでの商品力だと思うから、その更なる飛躍を期待したい。
もう商品だけで購入の判断をする時代はもう過去の話だ。なぜなら、一人一人が自分の意思を持って動き出しているから。サスティナブルは世界を救いつつも、彼女たちの行動を後押ししている。意志あるところに未来がある。
今日はこの辺で。