流通サービス 入魂 オルビス 通販で生きる 唯一無二の AGV
通販の需要に対して、大事だと思うのは、荷主の「ブランド」と「物流」の関係性である。そこで 流通サービス と オルビスの関係性に迫った。流通サービスはオルビスの物流を担っていて、オルビスの為に、既存に存在する AGV を自らアレンジした。オルビスのブランド戦略を熟知しているからこそ、オルビスにとっての最適な物流環境を編み出したのだ。
オルビスと流通サービスは互いにその価値を理解している
1.30年以上の付き合いゆえに生まれたAGV
オルビスと流通サービスとの関係性は深い。なんせオルビスがまだ一日、数百件という、通販を始めた当初からである。流通サービスは彼らの物流を請負い、付き合いは30年以上だというのだ。だからこそ、彼らがオルビスの環境改善に投資ができる。僕が注目したのは、流通サービスで導入した「AGV」である。
「AGV」?要は、倉庫にある品をあちらからこちらへと、無人で搬送するロボットのような存在。ものを運ぶための搬送車である。実は、Amazonなどもこれを使って物流倉庫内の効率化を徹底している。
でも大事なのはそこではない。単純に、流通サービスが、それを導入した事実よりも、その裏側にある。従来に存在する「AGV」を自らカスタマイズして、「オルビス商品の出荷」での最適な仕組みを作り上げたのである。つまりは、この「AGV」は唯一無二、他には存在しない「AGV」なのである。
2.流通サービス が考えた オルビス 通販で生きる AGV の中身
この背景には何があったのか?。これを手がけた 佐藤 正晃さんに話を聞いた。
元々、オルビスから依頼を受けたのは2年前。その中身はこうだ。
「LTVを向上させ、現場で将来起こりうる人手不足に対しての解決策を提示してほしい。その為に物量増を可能にするマテハンが欲しい」というものであった。その要望によればその時の件数の1.3倍を実現しなければならなかったという。
それで約一年くらいはマテリアルハンドリング、つまり物流機材に詳しい、椿本チエインという企業と打ち合わせを繰り返した。そこで最初交わされた議論は、旧来のものをどう改造しようか、というものだったという。
とはいえ、現行ラインを残したまま工事できるのか。色々課題もあったのは事実。そこで、会社として「まだ導入していないAGV」への関心が高まったのである。
3.既存の AGV ではオルビスの要望に応えられない!自分達で考えよう!
「AGV」というのは、本来、人が歩いて商品を取りに行くことを置き換える、棚搬送に重きを置いたもの。しかし、それではオルビスが求めている能力が出ないことに気づく。
「オルビスが求めている能力が出ない」。それは、どういうことか。つまり、オルビスの出荷に関しては、お客様一人当たり、大体8〜10件くらいのピック件数がある。だから、それを棚搬送で持ってくるとなると、8台も10台も入れ替わり立ち替わり、商品を持ってこないといけない。これでは、完結するのに時間がかかってしまうのだ。それでは意味がない。
その後、佐藤さんは「AGVが回転する時間にどのくらい要するのか」など、あらゆる数値計算を行い、搬送能力を洗い出した。ただ、やればやるほど、「従来のAGVではどうやってもそれに応えられない」という現実であった。
「それなら旧来の搬送能力を超えるものを作ろう」
AGVというハードではなく、ソフトウェアでの改善視点で、動いてはみた。だが、それでは機械に負担がかかる。今度は、物流現場を踏まえた視点になるが、発想的にはエンジンと一緒。高回転で回し続ければ機械が摩耗してしまい負担がかかるので寿命が短くなってしまう。搬送能力を無理に高めようとするのは、妥当ではないという結論に至るのである。
椿本チエインの「いい提案」が流通サービスの「いい着想」に
1.AGV一台に対して1オーダーの着想
ただ、突破口のヒントをくれたのは椿本チエイン。AGVにしても様々。それを熟知していたのが椿本チエインである。彼らが提案を繰り返す中で発掘したのが、今回の「AGV」の土台になるものだった。「土台」と書いた通り、その「AGV」は、今、流通サービスがオルビス向けに実現している仕様とは全く違っていた。
ここからが、流通サービスの佐藤さんの本領発揮だ。「AGV」1台に対して1オーダーにして、商品を上に乗せてしまったらいいのではないか。そんな着想に至ってその骨子が見えてきた。
AGVにそれまでの用途を捨てようと。そして仕様そのものを変えて、ピックケースを載せて搬送してしまおう、と。それは、まさに、オルビスの出荷体制に合致するもの。流通サービスが長年、オルビスと培ってきた関係性故に発揮されて、実現したわけだ。
2.その生まれ変わった「AGV」を見てみよう
騒音もなく、スーッと駆け巡る。この一台一台が、一人のオーダーである。オルビス一人分の受注データは、管理のスタッフの手により、この一台一台に紐づけられ、そのオーダーごと受注した商品が置かれていく。そして、商品受け取りの拠点へと向かい、それを受け取ってまた走り出す。
これにより、処理能力は導入前1800件/時に対し、導入後は2400件/時と約30%の大幅増となった。しっかりオルビスの要望に応えつつ、現場の配慮も踏まえた改善が実現できているわけだ。
ちなみに、左右の商品受け取り拠点では、スタッフが陣取っている。だから、そこに「AGV」が駆け寄ると、受け取る商品が何であるのか表示されるので、それをとりにいって、AGVの上のピックケースに乗せる。
3.過去の仕組みを踏襲して新しい要素が機能
このAGVが稼働している横で、このスタッフが対応している作業そのものは、過去の仕組みを踏襲している。つまり、新しい仕組みとかつての仕組みが調和しながら、生産性を高めているのだ。ここも注目すべき点である。
過去の積み重ねも、生かされる。このAGVの魅力を活かすことに寄与しているわけだから。
そして、佐藤さんが強調していたところでもあるが、この作業の中でスタッフが触るのは「商品だけ」。ケースを持ったりする必要が一切なくなっている。負担が軽減しているのは、通販の倉庫での作業では画期的ではないかと胸を張る。
スタッフそのものの稼働も抑えている。過去、オルビスへの通販対応の人材投入は89人であったのに対し65人と27%減。働く環境を向上させ、人員不足に対しても解決策として提示できている点にも注目したい。
4.ブランドと物流のあるべき関係性
最後になるが、年商250億円の流通サービスにおいて、ここにかけた投資額は10億円にも及ぶ。これは、30年以上のオルビスとの関係値があり、これからもオルビスと関係を構築していくという信頼に基づいてこそ、その投資に至る。
流通サービスにとってもそれなりの決断だったろう。オルビスはオルビスで、お客様と真摯に向き合い、商品力の向上と、あるべき関係性を築いて、長きに渡る繋がりを形成している。その一方、流通サービスは、そのお客様の特徴を踏まえて、物流の視点から、よりオルビスのブランド価値が向上に寄与する。互いに、成長できる道筋を照らしているから未来へと続く。
繰り返すが、流通サービスはオルビスの特徴を理解しているからこそ、これができる。自らの現場の環境も考慮し、何がお互いにとっての最適か。それを考えて投資しているのである。これこそが、僕が冒頭話した、ブランドと物流のあるべき関係性なのではないか、と思う。どちらが欠けても、通販は存在し得ないのだ。
今日はこの辺で。
【特集】オルビスや生協の物流で培った“流通サービス”の価値
ネット通販が当たり前になるほど 物流 との関係性が課題になる。 化粧品 と 食品 という難しい商材と向き合う現場を取り上げます。協力してくれたのは、オルビスや生協などでがっちりとタッグを組んで存在感を示す流通サービスです。