1. HOME
  2. News
  3. 買い談
  4. 通販/eコマース
  5. なぜSK-IIは楽天市場で評価されたのか|SHOP OF THE YEARに見るブランドの論理

なぜSK-IIは楽天市場で評価されたのか|SHOP OF THE YEARに見るブランドの論理

 Rakuten SHOP OF THE YEARの会場で、SK-IIの話を聞いていて、静かな納得感が残った。それは「売れた理由」がわかった、というよりも、「評価された理由が腑に落ちた」という感覚に近い。楽天市場というモールに出ること。高価格帯・プレステージブランドであること。リアルでは当たり前の美容部員が存在しないこと。一見すると、難しさの方が先に立つ条件ばかりだ。だからこそ、なぜ評価されたのかを、丁寧に見ていく必要がある。

 それでもSK-IIは、感覚や勢いではなく、極めて論理的にこの場所と向き合ってきた。その論理は、「EC攻略法」ではない。ブランドとは何か、顧客接点とは何かを、あらためて問い直した結果だった。

楽天に出た理由は「販路」ではなく「顧客の現在地」だった

 SK-IIほどのブランドであれば、自社ECや百貨店を軸にした展開だけでも成立する。
それでも楽天市場を重視した背景には、非常に冷静な視点があった。

 それは、「売り場を増やす」という発想ではない。
本当に使ってほしいお客様が、いまどこにいるのかという問いだ。

 消費者の行動は、確実に変わっている。百貨店に行くことと、ECで購入することは、もはや対立関係ではない。生活の中で自然に行き来する、ひとつの連続した動線になっている。

 楽天市場は、その動線の中で「忘れられない場所」になっている。だからこそ、SK-IIにとっては、避けて通る場所ではなく、きちんと向き合うべき起点だった。

出店する時代から、向き合う時代へ一見すると、難しさの方が先に立つ条件ばかりだ。

 従来の考え方では、楽天市場への出店とは、全国の商店が販路を広げるための選択肢のひとつだった。
「出店すること」そのものに意味があり、どれだけ多くの店が並ぶかが価値とされてきた。

だが、昨今の楽天市場は、そうした発想を超えた存在になりつつある。
すでに多くのユーザーが集まり、日常的にショッピングが行われる“拠点”として機能している。
そこに人が集まるということは、単なる売り場ではなく、明確なマーケットが成立しているということでもある。

だからこそ問われるのは、「出店するかどうか」ではない。
そのマーケットに対して、自らのブランドがどう入っていけるのか、どんな価値を提供できるのか、という視点だ。

 SK-IIの取り組みは、その変化を象徴しているようにも見える。楽天側が、高価格帯ブランドやプレステージブランドに対しても、単に“並べる場”ではなく、“伝えるための道筋”を示し始めた。その変化の上に、SK-IIの設計が重なった結果だった。

モールに入ることで、ブランドは薄まらなかったのか

 高級ブランドがモールに出るとき、必ず浮かぶ不安がある。「楽天の色に染まってしまわないか」という問いだ。

 この点について、SK-IIの考え方は明確だった。重要なのは“どこに出るか”ではなく、“どう設計するか”だ。特に大きかったのは、楽天側の理解と協力体制だった。
 ブランドとして「やりたくないこと」「譲れないこと」を丁寧に共有し、その前提を壊さずに表現を組み立てていく。

 モールに合わせてブランドを変えるのではない。ブランドの思想を、モールの文脈に翻訳する。その姿勢が一貫していたからこそ、ブランディングは損なわれなかった。

楽天のレビューとデータは、商品開発にも戻っていく

 SK-IIは、単に楽天を「売る場所」として使っていない。顧客の声が集まる場所として、極めて重視している。

 レビュー、購買データ、行動履歴。それらはマーケティング施策のためだけではなく、「本当に必要とされている商品は何か」を考える材料になる。

 P&Gの思想として語られた「消費者こそが本当の上司である」という考え方。それは、このECの現場でも生きている。

 ECで得られた声が、商品やコミュニケーションに反映され、また次の顧客体験へとつながっていく。楽天市場は、その循環が起きやすい場所だった。

美容部員がいないECで、どうやって一歩を踏み出してもらうか

 リアル店舗とECの決定的な違いは、美容部員がいないことだ。

 高価格帯の商品を、誰にも相談せずに選ぶ。その心理的ハードルを、SK-IIは最初から正面に据えていた。リアル店舗では、美容部員に声をかけられることで安心が生まれる。一方で同時に、「買わなければならない空気」も生まれる。ECには、その圧がない。

 誰にも話しかけられず、自分のペースで情報に触れ、納得した瞬間に決断できる。
SK-IIは、このEC特有の環境を弱点とは捉えなかった。むしろ、「自分で選びたい人」にとっては、最適な状態だと捉え直したのである。

 そこで活用されたのが、楽天のShowroomの仕組み。これは、楽天が用意している、ブランド向けのプロモーション施策のひとつだ。楽天市場の中に、ブランドの考え方や商品の背景を伝える専用ページを設け、ただ商品を並べるのではなく、ユーザーとの接点をつくるための仕組みである。

 つまり、一度商品ページに触れた人や、関心を示した人に対して、実際の使用者の声や、商品の意味を丁寧に届けていく。それは、背中を押すための演出ではない。迷いを減らすための情報提供だ。SK-IIがECで行っていたのは、まさにそのための設計だった。

コロナ禍が突きつけた、ECに本気で向き合う覚悟

 思うに、SK-IIが最初にSHOP OF THE YEARを受賞したのは、コロナ禍だった。百貨店が閉まり、リアルの接点が失われた時期だ。

 当時は、生き残るための選択でもあった。だが、その後の成長と停滞を経て、彼らは再び基本に立ち戻る。

 このチャネルで、このブランドを買う人は誰なのか。どんなカテゴリーと親和性があるのか。購入データを一つひとつ紐付けながら、愚直に考え直す。

 派手な打ち手ではなく、顧客理解を積み重ねることを選び続けた結果が、今回の評価につながっている。

セールで売らない。準備が整った人に、選ばれる

 楽天市場には、セールとポイントという強力な仕組みがある。だがSK-IIは、値引きで売れる商品ではない。だから彼らが考えたのは、「セールで売る」ことではなく、セールに入る前に、買う準備を終えてもらうことだった。

なぜ買うのか。
誰が買うのか。
何を、いつ買うのか。

 これらを感覚ではなく、論理として設計し、実行する。SK-IIの強みと、楽天の強みを掛け算するとは、こういうことだ。

 評価されたのは、売上の数字だけではない。ブランドと顧客をつなぐ構造を、地道に作り続けた思考そのものだった。

 今日はこの辺で。

関連記事

145が自らの考えを大事に、わかりやすく想いを持ってビジネスの本質に迫るメディアです。主に小売業、ものづくりとキャラクターライセンスを追っています。
詳しくはこちら

all/初心者 culture/SDGs culture/学生クリエイター culture/推し活 culture/渋谷 culture/生成AI culture/調査・データ DEEP DIVE: 1推し(イチオシ) DEEP DIVE: ものづくりのセオリー DEEP DIVE: アーティストの感性に触れる DEEP DIVE: ボーダーレス─僕らは空間と時間をクリエイトする DEEP DIVE: 奥深きキャラクターの背景 DEEP DIVE: 店の声─舞台裏での奮闘記 DEEP DIVE: 潜入イベントレポ DEEP DIVE: 賢くなろう─商売の教科書 DEEP DIVE: 超境─クールジャパンの新次元へ EC/Amazon EC/au PAY マーケット EC/BASE EC/Instagram EC/LINE EC/Shopify EC/TikTok EC/Yahoo!ショッピング EC/YouTube EC/フューチャーショップ EC/メイクショップ EC/日本郵便 EC/楽天ファッション EC/楽天市場 ECshop/MA ECshop/OEM ECshop/ささげ(採寸・撮影・原稿) ECshop/アプリ ECshop/オンラインモール ECshop/コンサルタント ECshop/コールセンター ECshop/チャット ECshop/ライブコマース ECshop/多店舗統合システム(OMS) ECshop/自社EC Fancy/Curious George Fancy/PEANUTS Fancy/すみっコぐらし Fancy/カピバラさん Fancy/サンエックス Fancy/サンリオ Fancy/シルバニアファミリー maker/バンダイ maker/ユニクロ RealShop/ZARA RealShop/コンビニ RealShop/スーパーマーケット RealShop/専門店 RealShop/百貨店・商業施設 RealShop/飲食店 Shop/接客スキル Shop/決済 【Buying】オムニチャネル・OMO 【buying】サプライチェーンマネジメント 【Buying】フィンテック・金融 【Buying】フルフィルメント 【Buying】フードデリバリー 【Buying】マーケティング・CRM 【Buying】リユース 【Buying】レンタル 【buying】ロジスティクス(流通) 【Buying】商品企画/マーチャンダイジング 【Buying】海外 【Buying】集客 【Fancy】ディズニー 【Fancy】ピーターラビット 【Fancy】ムーミン 【Game】Nintendo 【IP】Buzzverse – SNSから拡がる共感の宇宙 【IP】Gameverse–Gameから派生し、自分ごととして関わる世界 【IP】Storyverse –物語から生まれたキャラクターたち 【IP】Zakkaverse–モノとともに日常を彩るキャラクターの世界 【IP】キャラクター・スポット 【IP】ファッションブランド 【IP】未来図(WEB3/NFT等) 【Product】ふるさと納税 【Product】アクセ・ジュエリー 【Product】アパレル 【Product】インテリア 【Product】コスメ・健康 【Product】スイーツ 【Product】ホーム・台所 【Product】文具 【Product】玩具・ガチャ 【Product】花・植物 【product】製造業テック 【Product】雑貨・小物 【Product】食品 【Product】飲料・酒 キャリアと生き方|HERO insight —逆境をチャンスに変えるストーリー ビジネス思考法|HERO insight —“仕組み”と“本質”を捉える視点 事業化のリアル|HERO insight —アイデアを持続可能なビジネスへ 創造のヒント|HERO insight —人の心を惹きつけるアイデアの源泉 経営・マネージメント

最近の記事