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2025年、ECの現場で起きていたのは「AI導入」ではなく「順番の入れ替え」だった── 広告・SEO・モールが、同じ一本の線でつながった夜

 2025年を振り返ったとき、多くの人が「AIの年だった」と言うだろう。だが、今回ここで活字化した内容は、一般論としてのAI論ではない。先日開催した「すなっく145」の場で、物流、EC、広告、SEOと、それぞれ異なる現場に立つ実務者たちが、肩書きも立場も一度脇に置いて語り合った記録である。テーマは決めていなかった。

 ただ、「今年、何が変わったのか」を率直に話しただけだ。その結果、浮かび上がってきたのは、AIの進化そのものではなく、人の仕事の“順番”が静かに入れ替わっていたという事実だった。

 議論は濃く、具体的で、そのままでは場の熱量とともに流れてしまうには惜しい内容だった。だからこそ、あえて活字として残すことにした。

 以下は、そこで交わされた実感をもとに、広告、SEO、モール、買い物体験という異なる論点を一本の線として整理した考察である。

 なお、この場にはシナブルの曽川さん、インサイトアイズの榊さん、ボトルシップの佐山さん、UZEN 伊藤さん、ISSUNの矢崎さん、天真堂の松崎さん、NiceEzuの古賀さん、リンクスの小橋さんが参加し、進行は石郷が務めた。

それぞれ立場も専門も異なるが、2025年の現場で感じていた違和感は、不思議なほど重なっていた。

「すごい」から「前提」へ。まず空気が変わった

 2025年の特徴は、AIの性能よりも「空気の変化」だった。話題としてのAIが落ち着き、実務の道具として定着した。壁打ち、資料、スライド、画像生成、動画作成まで、やれることが増えたというより、やるのが当たり前になった。

 ここで重要なのは、AIが万能になったからではない。現場がAIを“扱う”前提に切り替わったことで、仕事の設計が変わった点だ。

 これまでの仕事は、序盤で人が時間をかけて「考えて・作って」から、最後に判断していた。

 2025年は逆になる。最初にAIが作り、人は判断に時間を使う。

 だから「AIの話をする」こと自体の価値が薄れる。

 言い換えれば、AIはトピックではなく、作業台の材質になった。誰も木目を褒めない。だけど、その材質が変わった瞬間、仕事の進め方は別物になる。

SEOは終わってない。ただ「記事」を読まれなくなった

 対談の中で刺さったのが、「それっぽい情報が溢れている。お前に聞かなくてもAIに聞くわ」という感覚だ。これ、ユーザーが人間に対してそうなっているだけじゃなく、SEOにも同じことが起きている、と語られている。

 ここで起きているのは、SEOの価値がゼロになった、ではない。“検索で見つかる”は入口条件として残る。けれど、入口の先で「読む理由」が変わった。

 象徴的なのが、SNSで伸びる話の質だ。

 とあるお醤油の会社のSNS担当が「ダメだったらクビ」と言われつつ、フォロワー数を恐る恐る見せたら「やばい、何人(本当に数人)もいるじゃん。頑張ってるな」と言われた──この種の、完成度の低さや至らなさが共感を呼び、バズる。

 つまり今は、正しい情報の量では勝ちにくい。代わりに、読まれるのは「人が見える情報」だ。そしてこの“人の見え方”は、後で述べる広告にも、モールにも、そのまま効いてくる。

広告は「作る」より「回す」。クリック率5%が12%になった話

 具体例が一番わかりやすい。

 アパレル案件で、商品ページの説明をそのまま出した広告はクリック率が約5%。ところが、商品ページのLPを読み込ませてAI(ジェミニ)に訴求案を5パターン出させ、「お客さんが喜びそうな文章」に寄せたら約12%まで上がった。

 しかもポイントは「12%が出た」ことより、こういう運用ができることだ。

 同時に4%の案も混ざる。だから、5本のうち良いものだけ残し、悪いものを捨てて、また「これダメだったから新しいの考えて」と回していく。

 ここで、仕事の中心が移動する。

 以前は、ペルソナを作って、訴求を考えて、コピーを磨くこと自体がメインだった。

 今は、AIが叩きを出し、人は「選別と改善のループ」を設計する。だから「ペルソナ作って訴求考える作業は要らなくて大丈夫でした」と言い切れる。これが実務の核心だ。AIは天才コピーライターではない。ループを回すためのエンジンだ。人は“良し悪しを決める係”に戻される。そして、その判断が当たり外れを生む。

AmazonのRufusは「検索機能」ではなく「売り場の入口」を変える

 広告の話がモールに繋がる。対談では、AmazonにRufusというショッピングアシスタントが入ってきていること、米国では使われているが日本版はまだ微妙、そして今後Rufusの検索画面に広告が出始める可能性や、広告設定の簡便化の話が出ている。

 ここで現場が見ているのは、「新しい機能が増えた」ではない。

 売り場の入口が「検索」から「質問」に寄っていく、という変化だ。実際、RufusはAmazonアプリ下部にある青とオレンジのアイコンから入り、Amazon版ChatGPTのように質問できるものとして説明されている。

 初期は2回くらい質問すると「その質問には答えられません」という具合で使えなかったが、最近はちゃんとワークするようになってきた、という体感も語られている。これが意味するのは、商品ページ改善やモール内SEOの重要性が消える、ではない。むしろ逆で、AIに拾われる形で情報が整っていないと、質問の入口で候補に上がりにくくなる。

そして、候補に上がった後は「どう説明されるか」が勝負になる。

 ここで最初の話に戻る。

 AIが前段で要約する世界では、正しさだけでは足りない。人が選びたくなる“理由の見え方”が必要になる。

まとめ|AIが仕事を変えたのではない。仕事の「順番」が変わった

 今回、広告・SEO・モールという異なる領域を横断して見えてきたのは、AIが仕事を奪った、という話ではなかった。

 起きていたのは、もっと地味で、しかし決定的な変化だ。

  • ・まずAIが叩き台を作る
  • ・次に人が選ぶ
  • ・数字が結果を返す
  • ・またAIに戻して改善する

 この循環が、コンテンツ作りでも、広告運用でも、Amazonの売り場でも、同じ形で回り始めている。

 だから今、問われているのは「AIを使えるかどうか」ではない。

どこで人が介入し、どこで判断を引き受けるか

 その設計ができているかどうかだ。SEOは入口条件になり、広告は一発勝負ではなくなり、モールは検索ではなく“質問”の場へ変わりつつある。

 そのすべてに共通しているのは、「選ばれる理由」を、人の言葉で説明できるか、という一点である。

 2026年に差がつくとすれば、AIの性能ではない。この循環を、どれだけ自分の仕事に落とし込めているかだ。

 今日はこの辺で。

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