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商品から始まる体験革命──アイルが描く“売り先多様化時代”の『BACKYARD™』 OS

 ECは成熟し、チャネルは分裂し、ブランドの売り先は爆発的に増えている。楽天、Amazon、自社EC、SNSコマース、実店舗、卸、越境。顧客から見ればどこで買っても「同じブランド」だが、裏側ではチャネルの数だけ商品データが分断され、運用の負荷は加速度的に増えてきた。

 その混乱の正体は、在庫でも物流でもなく、“商品データそのものが揃っていないこと” にある。モール仕様差、売り先ごとの説明文の違い、卸先の独自運用、そして年に十数回もの仕様変更。丁寧に登録しても、環境そのものが揺れている。

 今回取材したアイルの本守崇宏さんは言う。

「商品から始めれば、体験は揃います。売り先が増えるほど、“商品を押さえること”が戦略なんです。」

 そのうえで本守さんが最初に口にしたのが、「だからこそ、まずPIMから考えるべきなんです」という一言だった。(PIM=Product Information Management)

 商品を軸に置くとは、すべての体験設計の“出発点”を商品データに揃えるということ。そこからアイルが提供する CROSS MALL(在庫軸)と BACKYARD™(商品軸)が連動することで、この2つは売り先多様化時代の“体験OS”へと静かに進化していく。

① 「体験の乱れ」は商品データの乱れから始まる

 EC担当者の苦労は「在庫ズレ」だけではない。もっと深く、気づきにくい場所に“体験の乱れ”の源泉がある。

 それが 商品データの揺れ だ。

  • ・売り先ごとに商品名が違う
  • ・卸先が勝手に説明文を書き換える
  • ・実店舗とECでサイズ項目が違う
  • ・セット品・限定品の扱いがばらつく
  • ・画像の基準も店舗で異なる

 こうした“微細な揺れ”が、実際には検索結果、出荷判断、問い合わせ対応、レビュー分析、商品戦略──あらゆる体験の乱れにつながっていた。

 さらに深刻なのは、モール仕様の違い である。楽天とAmazonでは求められる項目も文法もまったく異なり、同じ商品でも“別物のように扱われる世界”が生まれる。しかも、仕様は年に十数回変わる。そのたび数百点〜数千点の商品を修正し、現場は疲弊し、修正漏れが体験の乱れをさらに拡げる。つまり、体験が揺れていたのは「現場が悪い」のではなく、“揺れる前提で運用せざるを得なかった” からだ。

 アイルはこの本質を見抜いた。体験の乱れは、すべて“商品データの乱れ”から始まっていたのだ。

② CROSS MALL が“在庫”を揃え、BACKYARD™ が“商品”を揃える

 アイルといえば「在庫連動」と言われるほど、CROSS MALL はEC運用の現場に浸透してきた。楽天・Amazon・自社ECなど複数チャネルの在庫を同期させ、欠品や機会損失を最小化する仕組みだ。

 しかし今回の核心は、実はそこではない。BACKYARD™ は、“売る前の世界”の揺れ を解消する仕組みだ。商品を一度バックヤードで登録し、そこからすべてのチャネル──EC、実店舗、卸、越境──へ同じ意味を持つ商品として配信する。

 従来は「商品IDを紐づける」発想が中心だったが、これは“バラバラな世界を後追いで繋ぐだけ”の対症療法。

商品を起点にすれば、

  • ・商品名
  • ・属性
  • ・説明文
  • ・画像
  • ・セット構造
  • ・バリエーション

 すべてが “ひとつの辞書” に統一される。ここで重要なのは、アイルが商品軸へ踏み込めた理由は、CROSS MALL の経験があったから という点だ。

 何千・何万という店舗の楽天・Amazon運用を十年以上支え続け、

  • ・どの項目が揺れやすいか
  • ・どの仕様変更が現場を苦しめるか
  • ・どこを押さえておけば未来の仕様変更にも耐えられるか

 これらを“現場と一緒に”学び続けてきた会社だからこそ、何を登録することが必要なのかを、逆算して考えられた。つまり、商品を一次登録し、各モール仕様へ自動変換するという 現実的で強力なアプローチ を実装できた。

 CROSS MALL が“販売の揺れ”を消したなら、BACKYARD™ は“商品そのものの揺れ”を消し去る。商品から世界が揃い始める。

商品データは“原因”、POSは“結果”である

 ここで、本守さんが取材の冒頭で口にした「PIM」という考え方に触れておきたい。PIM(Product Information Management)とは、商品名や説明文、画像、SKU、規格といった “商品そのものの情報をひとつに束ねる” ための考え方だ。本来、商品にまつわる情報は最初に正しく整えておき、そこから各チャネルへ派生させるべきだという思想である。

 その視点には、POSも含まれてくる。ただ、POSの性質は他の要素とはまったく異なる。POSで得られるのは “売れた後の情報” であり、販売実績や客単価は貴重ではあるが、あくまで 結果のデータ にすぎない。性質の異なるデータであることを踏まえて、一つで捉える工夫がなければ、戦略も体験も揺れてしまう。

 だからこそ、多チャネル化が進むこれからの時代では、すべての情報を“商品”という軸に戻して把握すること が、戦略の要となる。商品という原因が揃えば、POSという結果も正しく活きてくる。そうした“データの出発点”を整えることこそが、BACKYARD™の思想なのだ。

だからこそ、まず商品を軸に整える必要がある。

③−1 外資系スポーツブランド──日本市場の“独自性の強さ”が生んだ構造的な壁

 では、ここから具体例を見ていきたい。

 とある有名外資系スポーツブランドの日本市場は、アパレル業界の中でも特殊だ。本守さんはその構造を「日本独自の切り口が強い」と語っていた。日本では商品の魅せ方や商品名、説明文が“日本でどう受け入れられるか”を基準に最適化される。

 たとえば、日本人有名選手を広告に起用するように、日本市場を深く理解した表現が求められる。その結果、同じ商品でも海外とは語られ方がまったく違うことが多い。

 これは日本の強みでもあるが、一方で グローバル企業としては大きな壁 だった。

 理由はシンプルだ。日本だけ切り口が違うと、グローバル本社が持つSKU体系(世界共通の“商品辞書”)に日本のデータがうまく流れ込まない。

 つまり──

  • ・世界で売れている商品のトレンドが、日本に落とし込みづらい
  • ・世界基準のMD(商品計画)に日本だけ参加しにくい
  • ・日本市場の販売データが、グローバル戦略に統合されない

 だから、無理に、グローバルに共通したデータをそれ専用に持たないといけなかった。つまり、それで言えば、日本市場は“世界のブランド戦略から分断される”構造に陥っていた。これは単なる運用上の問題ではなく、グローバルブランドとしての成長に関わる深刻な構造課題 だった。

③−2 BACKYARD™で“商品が先、売り先が後”の構造に変わる

 この断絶を解決する鍵が、BACKYARD™の思想だった。BACKYARD™を導入すると、まず商品をバックヤード側に “一つの辞書”として正しい形で整える。これにより、売り先よりも先に“商品軸”が存在する構造 に生まれ変わる。

 そこから必要に応じて、日本市場向けの独自の見せ方・語り方を“派生データ”として作り出す。

つまり──

  • 商品情報そのものは、世界のSKU体系と完全に揃う
  • ・日本独自の表現は、商品を汚さず“派生ルール”として自由に設計できる

 この構造が成立する。すると、これまで難しかった“世界 ↔ 日本” のデータ連携が一気に滑らかになる。

  • ・世界の売れ筋が日本に反映しやすい
  • ・グローバル商品計画の流れに日本も自然に乗れる
  • ・日本の販売データもグローバル戦略に貢献できる
  • ・日本市場の独自表現も壊れない

 要するに、商品を軸に置くことで、世界と日本の両方を“正しい順番で”扱える世界が生まれる。商品を軸に考えるとは、売り先の都合よりも前に“商品の正規情報”が存在し、そこから各市場向けに枝分かれしていく構造をつくるということだった。

 その結果、商品は常に「綺麗な状態」で保たれ、日本市場の独自性と、グローバル戦略の一貫性を両立できる前提条件が整った。

④ 国内ブランド──商品を揃えるだけで、サプライチェーン全体が滑らかになる

 とある釣具ブランドでも歓迎された。実は、日常的に、混乱が起きていたのだ。メーカー → 卸 → 店舗 という流れの中で、一度、メーカーの手を離れると、商品が異なった視点で描かれる。つまり、同じ商品でも店舗によって説明も画像もバラバラになってしまう。表現が売場任せになってしまう。

 すると──

  • ・顧客が混乱する
  • ・店舗ごとに誤情報が生まれる
  • ・クレームはすべてメーカーに届く

 という“不合理な構造”になる。

 BACKYARD™でメーカーが商品を“一次登録”し、卸や店舗はそのデータを そのまま受け取って使うだけ の仕組みになると、この構造は一気に反転する。

  • ・全店舗の情報が統一
  • ・メーカーの意図が正しく伝わる
  • ・問題は店舗でなく、構造であったと判明
  • ・現場の負担が下がる
  • ・ブランド価値が守られる

 商品が揃うという“たったそれだけ”で、サプライチェーン全体のストレスが溶けていく。本守さんの言葉は、すべてこの実感から生まれていた。

⑤ 楽天・Amazonの仕様変更地獄を“商品一次登録”で吸収する

 EC担当者は長い間、モール仕様差 × 年間十数回の仕様変更 に振り回されてきた。楽天とAmazonは求める情報の項目、形式、画像ルール、SEOの書き方すら異なり、同じ商品を登録しても“別のルールで競技をする”ような世界になる。

 そのうえ、仕様は突然変わる。カテゴリー構造の変更、必須項目の追加、文字数制限の変更。そのたびに何百SKU・何千SKUを修正し、現場は疲弊し、表現の揺れが体験の揺れへと連鎖してきた。

 これも、BACKYARD™で商品を一度登録してしまえば

  • ・アイル側がモール仕様に合わせて自動変換
  • ・仕様変更はアイル側で吸収
  • ・店舗は商品情報を触る必要がない
  • ・商品価値もブランド表現も揺れない
  • ・未来に売り先が増えても手間は増えない

という“安定した世界”が成立する。

 ここにもアイルの強みがある。CROSS MALLで築いた膨大な店舗支援の経験から、どの情報さえ押さえておけば、どんな仕様変更が来ても吸収できるか。その“現場の深部”を理解している。

 だから商品軸で戦える。商品辞書を持つという発想が“リアルに機能する形”で実装できた。これは、他社が言葉だけで真似できる領域ではない。

⑥ 商品を押さえる企業が、売り先多様化の未来を制する

 おそらく、売り先は今後さらに増える。SNSコマース、D2Cコラボ、越境、アプリ販売、マーケットプレイス、ライブコマース。チャネルは無限に増殖し、ブランドはそれに追いつくためのリソースを奪われ続けている。

 だが未来で勝つのは、そうやって様々な接点を作っていくからこそ、混乱させずに“商品を軸にして整えていく”姿勢だ。

商品がひとつの辞書で揃えば──

  • ・どこで売っても同じ表現
  • ・ブランド世界観が揺れない
  • ・全チャネルでMD戦略を統一
  • ・AIによる在庫・販売最適化が成立
  • ・新しい売り先が増えても、手間は増えない
  • ・顧客体験の“手ざわり”が揃う

 これは単なる効率化ではなく、ブランドの戦略的基盤を商品軸に置く という考え方だ。

 外資系スポーツブランドのように、商品が揃うことで“世界とつながる”。国内釣具ブランドのように、商品が揃うことで“サプライチェーン全体が滑らかになる”。

 BACKYARD™は、こうした“商品軸の必然”を日本市場でも実現可能な形に変換したOSと言える。本守さんが最後に語った言葉が、

その思想を最もよく表していた。

「結局、商品からすべてが始まります。そこさえ整えれば、世界はもっとシンプルに動くんです」

 商品軸で世界を整える。その当たり前を実装した会社がアイルだった。さあ、転換期よ来い。

 今日はこの辺で。

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