谷中銀座から届ける“新しい夏祭り”──ライブコマースで語られた街と名店の物語

坂の下で、時間が動き出す
開幕の舞台は、谷中銀座商店街の坂の下。「ひゃっこい祭」のシンボルとなる氷柱が涼をもたらし、司会の僕とアシスタントの桜羽このはが登場した。氷に触れた瞬間「おお、すごい!」と声が漏れ、画面越しにも空気がひんやりするような感覚が伝わる。

そのすぐ後に語られたのは、この街の始まりの記憶だ。戦後すぐ、昭和21年の谷中銀座は瓦礫とぬかるみに覆われていた。復員兵たちが目にしたのは“焼け野原”の景色。
そこから立ち上がり、泥道を整え、魂を込めて商いを続けてきた人々の物語が、この配信の基調となった。「長い時間をかけて築いてきた思いを、今日少しでも伝えたい」。氷の冷気と街の熱が、同時に流れ始めた瞬間だった。
商品は届く、物語で届く
そもそも、この番組の出発点には、僕のコミュニティ「チームメイト」の存在がある。
僕の記事の価値観に共鳴した人たちが集まり、互いの価値を持ち寄りながらチャレンジしたり、誰かの挑戦を後押ししたりしてきた。そこから得た気づきを、それぞれが自分の場所に持ち帰る──そんな循環が「チームメイト」の本質だ。

今回の番組や試食を含む一連のイベントも、すべてこのコミュニティによって実行されている。ここにこそ、画期的な意味があるのかもしれない。
番組の趣旨は明快だ。「画面で祭りを味わい、気になったらその場でポチッと買える」。ただし今回は一歩踏み込む仕掛けがある。商品に“届け方の物語”を重ねたのだ。冷蔵、常温、EV——配送の違いをヤマト運輸の非売品ミニカーで象徴し、「どう届くのか」までが楽しみになるように設計された。
前半はネットで人気の名店が、それぞれの哲学や背景を語りながら商品を紹介。後半はその名店が谷中の商店とタッグを組み、街の記憶とコラボレーションを果たす。画面の右下には商品が並び、コメント欄は「食べたい!」「ワインに合いそう」と熱を帯びる。ライブコマースの枠を超え、街とネットが交わる“体験”へと昇華していった。
前半|名店の「言葉」が味を連れてくる
レバー嫌いに、好きって言わせたい
創業1921年、水郷のとりやさん。店主・須田さんが語ったのは、スーパーの登場で売上が落ちても「鶏肉だけは須田本店で」と言わせた地元の声だった。その声を糧に専門性を磨き、やがてネット通販へ挑戦した経緯を明かす。
試食で登場したのは自家製レバーパテ。実はこれは、須田さんが修行した焼鳥の名店『バードランド』(焼鳥で初のミシュラン星獲得)のメニューが原点だ。血管を一本ずつ取り除き、バターと丁寧に乳化させる——その工程をあえて省かず、通販でも一つひとつ手作業を貫く。「大量生産では、この味は守れない」。

会場の反応は素直だった。「なめらか」「レバー感がない」。レバーが苦手な桜羽も「全然食べられる」と驚き、コメント欄も「ワインに合いそう!」と盛り上がる。
続く手羽餃子は「鶏肉屋が作るからこその味」。あえてニンニクを入れず、手羽そのものの香りを際立たせる。ここでも「ジューシー」「お肉そのもの」と声が飛ぶ。届け方はクール便。その象徴として冷蔵トラックのミニカーがセットにつくと説明されると、配信のテーマ「届け方の物語」が自然に浸透していった。
カリッの先に、五年分の青春
伊豆河童は150年以上の歴史を持つ老舗。栗原さんが持ち込んだのは、地元の高校生と5年かけて商品化した“富士山型の琥珀糖”だった。試食ではカリッというASMR的な音がマイクに拾われ、会場からもコメントからも「音がいい!」「可愛い!」の声。

伊豆特産の天草を海女さんが海に潜って採取し、天日干しで白く仕上げる。その素材で突きたてのところてんを実演すると、「スーパーとは別物」「コシが全然違う」と感嘆が続いた。さらに透明感ある琥珀糖と組み合わせた限定100セットには、常温配送を象徴するウォークスルー車ミニカーが付く。高校生の青春と150年の老舗の歴史、その両方を届ける“物語”がここにあった。
誰に食べてほしいかから、ぜんぶ始まる
セレクトフード・コパンの佐藤さんが口にしたのは「お客様の顔を思い浮かべる」という原点。小さな子に食べてもらうなら無農薬で安全なものを、という考えから選ばれたのが三ヶ日みかんのストレートジュースだった。皮を剝いてから搾るため苦味が出ず、甘みとキレが同居する。桜羽が試飲すると「めっちゃ美味しい!」と即答し、会場もコメント欄も「飲みたい!」の嵐。

驚かされたのは価格の決め方だ。「もっと高くした方がいい」「逆に安くしないと売れない」——農家と本音で話し合いながら調整するという。これぞ、ネットの強みを活かした価格設定。取引の優しさや誠実さが「セレクト」という言葉に込められている。セットはジュース6本とEV配送車のミニカー。環境と人の心を両立させる“サステナブル”の物語が、観客に強く響いた。
仕掛け人の合図|届ける仕事を、見える化する
59秒の変身と、翌日の約束
「ここはねこのまち。だからクロネコに来てもらった」——司会の呼び込みでヤマト運輸の山崎さんが登場。

場をわかせたのは、ロボ玩具“ジョブレイバー”を59秒で組み立てる挑戦だった。汗だくの実演にコメントも大盛り上がり。「本当に59秒!?」と驚きと笑いが混ざった。

さらに飛び出したのは、トミカを“こねこ便420”で翌日ポスト投函する挑戦。配送資材そのものまでライブで販売が決まり、まさに「今この場」で商品と体験が増えていく瞬間だった。裏方の運送会社が表舞台に立ち、配送が“物を届ける”だけでなく“体験を届ける”仕事だと見せてくれた。
後半|“まち”が相棒になる
泥道から始まった商店街は、今日も自分で立ち上がる
谷中銀座商店街振興組合の理事長・福島さんは、戦後の泥道を自ら整備し、共進会を立ち上げた歴史を語った。昭和50年代の「谷根千」ブームや朝ドラの舞台化、スーパーとの攻防——「危機のたびに自分たちで立ち上がる」という言葉が胸に残った。

川魚の町に、うなぎの余韻
コパンと福島商店のコラボは、浜名湖産“でしこ”(すべてメスのうなぎ)とどじょう唐揚げ。脂がのり、柔らかさが際立つうなぎに、「永遠に食べられる」と桜羽が笑う。骨までカリッと揚がったどじょうと組み合わせた20セット限定の特別セットは、川魚文化を次世代へ繋ぐ意義を語っていた。

和の余韻に、日本酒の一滴
越後屋酒店と水郷のとりやさんは「レバーパテに合う日本酒」を探る実験的コラボ。三種の酒を試し、選ばれたのは茨城の純米「山」。パテが醤油ベースで和の余韻を持つからこそ合う、と納得の理由が添えられる。師匠・和田さんが茨城出身という偶然も重なり、48セット限定の運命的なコラボが生まれた。

透明な柚子が、コシを立ち上げる
九州堂と伊豆河童は、突きたてところてんに熊本の透明柚子ポン酢を合わせる挑戦。果肉感のある柚子と七味のアクセントで、爽やかさが跳ね上がる。「控えめの予定だったけど、入れたら美味しかった」と現場の声。静岡と九州、150年の老舗と新しい風が一皿で握手した瞬間だった。

路地の乾杯は、画面のこちらまで届く
配信は街へと飛び出す。奥路地 カフェ&バル九州堂ではチームメイトがみかんジュースで乾杯。

越後屋酒店では立ち飲みの賑わいが映り込み、福島商店は“夏祭りに全力”でシャッターが閉まっていた。生放送ならではの“抜け落ち”さえ、この街のリアルを示すシーンになった。
最後に僕が語ったのは、「こんな景色が日本各地にまだある」という実感。そして「ネットの名店とまちの老舗を一本の道でつなぐ」ことの意味だ。
それではこの辺で。
1時間半にわたる配信の様子を撮影した動画はこちら。
続きはこちら。
