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楽天市場に学ぶ、売れる商品設計とブランド現象論──お客様の反応から立ち上がる“本質的価値”とは

 面白いなと思って聞いていた。商品開発をする上で、ブランディングが大事だとよく言われる。でも、「ブランディングとは何か?」という問いに対して、ボトルシップ代表・佐山陽介氏は、こう答えたのである。「それは本来、企業が“起こすもの”ではなく、あくまで 『お客様の心の中に“起きる”現象』である」。

 あれ?逆なのだ。つまり、どれだけ優れた理念やデザインを掲げても、顧客が“そう感じる”体験を通さなければ、ブランドは成立しない。ブランドを作る前に、重要なのは、どんな商品をつくるか。その商品が、どんな風に顧客と交差し、どんな反応や使われ方を誘発するか。そこにブランドの“種”が宿る。

 この思想は、楽天市場では、とりわけ顕著に現れてくる。ここではその話である。

第1章|商品は売ってみて、見えてくる──レビューが育てる商品設計

 楽天市場では、単に「作って、売る」だけでは終わらない。むしろ、売った“あと”にこそ、商品の本質が見えてくるという。

 あるショップでは、スリランカ産のセイロンシナモンパウダーを販売していた。当初は食品やスパイスとして販売していた。だが、レビューを見てみると「お風呂に入れて使っています」という声が多く見られるようになった。

 これにより、用途が食品からバスグッズに“ジャンル転換”する現象が起きた。これこそまさに、「ブランドは現象である」という真意だ。想定外の用途が見つかり、そこで新たな需要層が生まれ、結果としてブランディングされていく。

 だが、これはあくまで導入の例に過ぎない。とは言え、楽天市場は、Amazonのように単品勝負で戦う場ではない。

第2章|“売れるポジション”を見極める──カテゴリを取りに行くという発想

  ショップは、商品の「カテゴリ戦略」が重要である。そうであるとしながらも、それを、複数商品で、うまく掛け合わせながら、店の特徴を出していく。結果、それらは、その店であることに集約されて、そこから先は店自体のリピーターとして購入してもらう。その戦法がうまくいきやすい。

 たとえば、最初に商品を出すときには、既定のカテゴリに所属させる。だが、売り方や用途の見せ方によっては、まったく違うカテゴリで存在感を放てる可能性がある。先ほどのパウダーが良い例だ。

 だから、例えば、佐山さんの支援する店舗では、同じ商品でも「ページの見せ方」を変えることで、別の需要を取りに行くという手法が取られていた。 先ほどの例でもう少し深掘りするなら、パッケージを変えず、商品ページのデザインやキャッチコピー、画像を調整するだけで「バスグッズ用」に転用するわけだ。

 つまり商品そのものは変わらずに、外側だけ変える。

 それがまさに、商品の“看板の掛け替え”による市場のスライド戦略である。裏側は同じ商品なのに、提案の仕方を変えて違う顧客を取りにいく。

 ゆえに、逆説的になるけど、佐山さんが勧めるのは「店構えはシンプルに、商品ページに全力投球」という設計。店全体の世界観をつくり込みすぎると方向転換が難しくなる。そのため、商品の柔軟性を訴求できる余地を残しておくことが重要だという。

第3章|楽天だからできる“育成型”戦略──季節と共に設計するラインナップ

 そして、提案の仕方が反映されやすいのは、上記の通り、楽天市場におけるページは基本「縦長」構造であるからだ。これは以前と、昔から変わっていない。そのため、店全体のブランド構築というよりも、ページ単位で“売りのポジション”をどこに設定するかが問われる。

 そこで顧客の反応を利用して、自分の店の立ち位置を知るわけだ。

 改めて、思うのは、楽天市場の特徴は「お客様がすでに流れている」状態にあるということ。すでに多くの顧客がそこを泳いでいる。

 つまり、自社ECのようにゼロから流入を作るのではなく、「どのような検索導線を利用して、自社商品をそこに位置づけるか」が肝になる。 その際、単品で勝負するというより、「季節戦略」「カテゴリ戦略」を組み合わせた年単位の設計が求められる

 それこそが楽天のもう一つの特徴で、極めて大事な点だ。

 例えば、1月〜8月まで「お惣菜ジャンル」で常連顧客を作り、12月のおせち商戦に流す。 これが“カテゴリを取る”という発想と、楽天の流通を利用して、店としての立ち位置を明確にする戦略である。

 だから、店に対しての継続顧客が重要であり、Amazonの単品単位での戦略とは異なるわけだ。Amazonは徹底的に商品単位での差別化である。

参考:Amazon 広告活用する前に おさえておきたい大鉄則

第4章|商品開発と広告設計は、切り離せない

 そして、楽天市場に出店して成果を出すには、「広告施策」と「商品設計」は、ワンセットで考えなければいけない。たとえば、RPP広告(検索連動型広告)での反応を見ると、お客様が実際にどんな“使い方”や“ニーズ”で商品を探しているかが明らかになる。

 これを先ほどのカテゴリーの理論と掛け合わせる。どういうことか。

 ある企業はポータブル冷房を販売していた。だが、それを「車中泊」という検索ワードと組み合わせて訴求したことで売れ行きが激増。

 要するに、持ち運びできるクーラーのこと。エアコンの室内機と室外機が一体になった小型のクーラーである。車中泊という切り口で、それらが必要となるわけである。つまり、カテゴリーごとの競争が激しい中で、どのジャンルなら自社商品が“空白地帯”を埋められるのか。商品と市場の交差点を見極める力が問われる。

 このように「広告で得た反応を商品にフィードバックする」ことが、商品開発の延長線にある。

 お気づきだろうか。これが、佐山さんがブランディングとは現象であると述べた真意である。顧客の反応が得られる場所に身を置いて、そこで自分たちの店のブランディングを形成するのである。彼の言う通り、極力、商品登録をして、場数を踏むことで、立ち位置が明確になりやすい。

第5章|仕入れ商品×自社商品のハイブリッド運用

 また、商品を開発するというと、「すべて自社オリジナルでなければ意味がない」と考える人もいるかもしれない。だが、楽天市場におけるリアルな運用では、仕入れ商品と自社商品の“役割分担”こそが成功の鍵になる。佐山さんはその様にも語る。

 たとえば、仕入れ商品は「楽天ランキングに掲載される」「商流をつくる」ために活用する。 薄利でもいいから動かしておくことで、流入を確保し、ショップとしての信頼度を上げる。

 そして、そこに「利益の取れる自社商品」を差し込んでいく。

 ここに先ほどの年間通して、店との接点を生み出す工夫が、実るわけである。つまり、場合によってはセールなどで一旦、利益を度外視して、顧客を獲得しつつも、しっかりそこで元を取れる。それができるのは、店単位での考えに基づくからである。商品単位での戦略では決して、これはできない。

 この“掛け合わせ戦略”があって初めて、楽天市場での長期戦が成り立つ。繰り返しになるが、これが楽天市場ならではのマーケット的特徴である。

終章|ブランドは「現象」であり、商品は「接点」そのものである

 つまり、店のブランドは本来、企業が“起こすもの”ではなく、あくまで 『お客様の心の中に“起きる”現象』である。

 それらは楽天市場に限って言えば、そこにすでに顧客が存在するわけだから利用しない手はない。そのマーケットに自らの商品を馴染ませたときに、商品の立ち位置が見えて、それをベースに年間計画で、店としての収益を考えて、計画を練るのである。

 だから、安易な安売りも、セールでの売上増単体では、意味をなさない。だから、売上が高くても沈没する店舗が出てくる。楽天は合わない、、そう言う店舗に限ってそう口にする。それは向き合い方が違うのだ。

 ゆえに、安売りがダメだと言っているのではない。トータルで見て店は何をするべきなのか。それは、ただ商品登録だけしていたのでは見えてこない。

 ここまでの話を総合すると、楽天市場において「売れる商品」とは単なるスペックや価格競争の産物ではないことがわかる。 それは「お客様がその商品をどう使い、どう感じるか」という“現象”としてのブランド体験に結びついていく。

 だからこそ、商品とは“仕掛け”ではなく“接点”であるべきだ。 

 接点を設計するには、レビューの観察、広告施策の検証、カテゴリの見立て、季節の流れ、仕入れと自社商品の使い分け。 すべての要素が複合的に絡み合い、結果として「売れるポジション」に商品が“起きて”いるのだ。

 そして、それこそが、ブランディングという現象の正体である。それを時代性とともに店の成長を加味しながら進化させていくこと、それが大事なのである。

 今日はこの辺で。

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