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原宿をもっと“夜に開く”──ハラカド文化祭で語られた、水曜日のカンパネラ・詩羽のまなざし

 2025年4月17日、原宿の新しいカルチャー拠点「ハラカド」が開業から1周年を迎え、「文化祭」と銘打った特別イベントが開催された。各階の店舗が“+1”の体験を用意する中、特に注目を集めたのが夜に開催されたスペシャルトークイベントだ。登壇したのは、水曜日のカンパネラの詩羽さん、TRANSITの中村貞裕さん、れもんらいふ代表の千原徹也さん。多彩な三者が語り合うなかで見えてきたのは、“原宿の夜”の可能性、そして詩羽さんが感じる原宿という街の居心地のよさだった。

自分らしくいられる街、原宿

 詩羽さんが語った原宿の魅力は「目立たずに自分らしくいられること」だった。中学生の頃からこの街に通い、高校時代にはファッションを通してその懐の深さを感じたという。派手な装いでも街に馴染むこの空気が、他の都心とは違う原宿の特徴だと語る。

「私、基本的に家から出ないんですけど、久しぶりに来ても“嫌な感じがしない”のが原宿なんです」

 会場の「ハラカド」は、この日まさにその“自由な個性”を祝福するような場に変わっていた。ピックルボールを楽しむ人々の笑顔、1杯500円のHINEMOS BARで静かに語らう人たち、ジェラートを手に歩く若者たち──それぞれが思い思いの時間を過ごしながら、文化祭というより“街祭り”のような空気に包まれていた。

音楽と夜の原宿を繋ぐビジョン

 TRANSITの中村貞裕さんは、現在の原宿の課題を「夜に人がいなくなる街」だと捉えている。昼間の活気に対して、夜はまだ“閉じている”のが現状。飲食や音楽を通じて“開いていく”必要があるという。

「原宿とか青山、ここが盛り上がると、東京全体が元気に見える。けど、夜になると原宿って静かすぎるんですよね」

 彼の言葉を裏付けるように、Deus Ex MachinaではDJイベントと町中華「紫金飯店」のコラボ企画が開催され、3階の「スナック袖 CHEE」では“花を持ってママに挨拶する”という遊び心ある仕掛けで異業種交流が生まれていた。

 ハラカドの文化祭は、こうした“夜の原宿”にささやかな灯りを点すような試みでもあった。

原宿に“音楽が聴こえる場所”を

詩羽さんが口にしたのは、実にシンプルで本質的な提案だった。

「原宿にはライブができる場所がないんですよね。もしあったら、もっと原宿で音楽が身近になると思う」

 渋谷や新宿にはライブハウスがあり、若者が集まり音楽が循環しているが、原宿にはその拠点がない。だからこそ、ハラカドのような施設が、音楽に触れる入り口としての役割を果たせるのではないか。詩羽さんの視点は、“カルチャーの街”原宿が抱えるギャップを浮き彫りにした。

 昼には「Social Sounds」が開催され、DJと共にコーヒーを楽しむ場もあった。中村さんは「夜ではなく昼の音楽体験が新しい」と語ったが、詩羽さんの「夜に音楽のある原宿が見たい」という言葉もまた、未来の風景を予感させた。

人がつながる“余白”のある都市

 詩羽さんは「基本ひとりが好き」と語りながらも、時にはひとりで焼肉に行き、時には猫と家にこもり、でもライブのステージでは「無敵になれる」と笑う。そのコントラストの中に、彼女の生き方と表現の本質があるように思えた。

「嫌なことがあっても、ステージに上がったら全部切り替わる。私にとってライブはスイッチなんです」

 その言葉に、中村さんや千原さんも共感を寄せ、仕事や暮らしの中における“都市との関わり方”をそれぞれの視点で語った。

 一方、6階では1,000円のレシートでジェラートがもらえる企画や、5階では“特別福引”の抽選会が行われており、人々の小さな幸福体験が至るところで生まれていた。

 こうした余白のある仕掛けが、街を単なる“商業施設”ではなく“記憶と感情の交差点”へと変えていくのだろうか。

文化は、人が持ち寄ってできるもの

 今回のトークイベントが行われたのは、ハラカド内の4階。ピックルボールやコラボカフェ、限定グッズなどさまざまな試みが同時多発的に展開されていた。まるで「原宿という都市の文化レイヤーを、一夜で体験する」かのようだった。

「原宿で音楽をやれる場所があったら、もっとミュージシャンも集まるはず。街が持つ空気が変わると思うんです」

 詩羽さんのその言葉は、ただの理想ではなく、彼女がこの街に感じている“希望の兆し”でもある。

 街は、つくるものではなく、関わる人の思いが自然とにじみ出て“文化”になる。その最初の火種が、この夜のような“偶然と遊び心に満ちた時間”なのだろう。

 原宿は、まだ夜に眠る街かもしれない。けれど、その静けさを破る音が、小さなDJブースやトークイベントから少しずつ生まれている。

 水曜日のカンパネラ・詩羽が語った“目立たなくてもいい”という感性は、誰もが自由でいられる都市の設計思想そのものだ。

 ハラカドの1周年は、ただの記念日ではなく、「これからの原宿」を問い直す一夜だった。

今日はこの辺で。

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