農園からの果物狩りライブ配信「当日届けて」臨場感に ヤマト運輸のなるほどな視点
ネット通販の利用の増加に伴い、早く届けられるようになった。けれど、単純に「早く届けばいい」というわけでもないように思う。「早く届く理由」が大事。では、早く届けるってなんだろう。その考えの先に、臨場感という視点は考えられないか。そう思って、この話題をあげる。
自宅にいながら果物狩りができる理由
実は、先日、ヤマト運輸の 中西 優さんにこんな話を聞いた。2021年5月にクックパッドがこんな切り口で、新しい取り組みをしていたという。それは、自らが運営するオンラインマルシェ「Komerco(コメルコ)」で、「自宅にいながら収穫の体験ができる」というものである。
自宅にいながら収穫?そこに違和感を感じる人もいるだろう。
まず、この企画に賛同したのは、茨城県のメロン農園である。実際にその農園を、ライブ配信し、農家の人と共に歩いている感覚で、それ、欲しい!とお客様が言えば、それがその日のうちに届く。つまり、この臨場感は、自宅とこの農園をライブコマースで繋ぎ、配送品質を活かすことによって実現した。
一緒に歩いて回るような感覚で、それを眺め、そしてすぐに食べられるのだから「自宅で収穫」ってわけだ。
みそは、ライブコマース視聴者はそのライブ内で農家が収穫し、自らが選んだメロンをそのまま、その日に届けてもらえること。リアルと変わらない感覚で、これは嬉しい。鮮度でもそうだが、体験から間も無く実際に食べられるという視点でも。
当日届けることを付加価値に
まず前提として「Komerco(コメルコ)」の場合は、収穫体験として、4500円を参加費用として、事前回収している。その金額の中に、メロン2玉、送料が含まれている。
ただ、そんな当日に届けることが可能なのか?そこが気になるところだ。
ヤマト運輸によれば、実は、当日の11時に羽田のクロノゲートにあれば、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県、山梨県、茨城県、群馬県については、当日に届けることができる。だから、早朝にライブコマースを行い、選ぶだけ。それで、11時に到着させることを可能にしている。この場合で言えば、決済が済んでいるので、その流れもスムーズだ。
彼ら曰く、これは一例。でも、今のネットショップ側の視点で、こういう形で、物流のポテンシャルは生かすという考えはまだないのではないか。極論、これは事前決済だったが、その場で購入してもらうというようなことも、物理的に可能だ。
早く届ければいいの視点を変える
それをすることの意味は、顧客体験の向上であり、より一層、理解が深まり、愛着も増すという点にある。今まで言われてきた「早く届けばいい」という物流の議論とは明らかに異なる。だから、「早く届けばいい」という議論は、その理由が大事である。そうすれば、物流の活用の意味を見出す。昨今、顧客との関係性が問われる中で、果たせる可能性があるのではないかと指摘している。
お客様との間で、どんな体験がその企業ごとになされたか。それは、その後の各々の関係性に直結する。だからこそ、例えば農家であれば、この果物狩りの擬似体験は、そこにつながる一手である。さらに、それが現地に行き、その価値を深めることになれば、尚更だろう。
その体験価値は、そのお店へのファン度合いが増すに違いない。今までの「早く届ける」の流れは、物流を安易に、コストセンターにしがちな側面もあった。だが、こういう活用を見る限り、その付加価値をどう作るかである。そして、それは店側の工夫次第である。「早く届く」にはその理由が今こそ大事なのである。
今日はこの辺で。