旧Twitter「X」のその後
昨今、SNSは売上を左右する存在になり、企業もその存在を無視できなくなった。とはいえ、一方で、SNS側も転換期を迎えているのも事実。先日、総合EXPOのセミナーの中で、Twitter Japan代表取締役 松山歩さんは「X(旧Twitter)」について今後の戦略について述べていた。140字の投稿で「集まる価値を活かす」。それだけでは、もうダメなのである。その進化の中身を知ることで、企業はXとどう向き合うべきかを考えたい。
アルゴリズムにより実は足元で変化が
自由に投稿する特徴はそのまま。ただ、新しいアルゴリズムは、向き合う相手を見定めながら、マーケットを作っていく。具体的には、その体験価値の質を高めるため、惜しみなく投資を行い、価値を還元していく。その代わり、それによって価値あるユーザーの投稿の力を最大化させて、Xもまた、人や企業の課題解決に繋げるわけである。
課題解決は、誰かしらの利点に繋がる。ユーザーが使うに値する必然性が伴うから、マネタイズポイントとなり、その課題解決をするには、どこへ投資したらよいのかを明確にしていく。つまりは、ビジネス上の着地点を見て積極的に投資をするところに、TwitterからXへと変わっていく所以がある。
課題解決の突破口は、体験価値の向上にある。既に、新しい姿勢に伴う変化は見られている。「X」のアルゴリズムを見直すことで、体験価値の向上が見られているのです。この体験価値こそ、新しい「X」のキーワード。確かに「X」においては急なプロダクト変更で、混乱も招いた。
しばしば、メディアにもその点で取り上げられがちである。しかし、見るべきは「滞在時間」であるとしている。
・滞在時間の価値を向上させるために
グローバルでは前年比で13%増で、過去最高の「32分以上」。ちなみに日本では43分。グローバルとの比較で39%も高い。つまり、体験価値が底上げされていることで、滞在時間に反映されている。もう少し具体的に説明するなら「体験価値のその質の向上」とは、「役立つアプリ」への転換を果たす中で、行う。
「役立つアプリ」って?
それを松山さんは「AI」「動画」「金融」というキーワードで説明している。注力していく分野の一つ目は「AI」で、それを通して、実現するのは、高度な検索である。最近は、Xで投稿をする一方で、探し物をする時も使う傾向が高まっている。だから、Xが訴求できる価値は何か。それは検索精度ということになって、ではその「精度」とは何か。
ただ闇雲にAIを使えばいいのではない。「その検索結果がいかにタイムリーであるか」。Xの検索では、そこに価値があるのだ。だからXの「AI」はウェブにとどまらず、X上のタイムラインの内容を学習していく。つまり、彼らが導き出すデータは、昨日や今日の最新データでアクティブなものとなる。タイムリーな検索結果に反映されることで、利点を感じるのは、ユーザーである。その利便性の向上とともに、その価値を実感した人は、Xをそういう観点で信頼を持って、受け入れる。
強みを活かしたAI活用で検索精度をUP
このユーザーの変化こそが大事なのだ。出来事に対して、迅速に投稿する。ユーザーの投稿に基づく、X独自の価値を強みに変えて、着地を考え、投資をした結果である。これがますます、ユーザーの体験価値の向上に繋がる。そうすれば、Xそのものの滞在時間の増加をもたらし、そこに裏付けられた上記のデータだから、未来に繋がる数値だと彼らは説明する。
当然、BtoCに限らず、BtoBにおいても有益である。これらのXのAIを「Grok」と呼んでいる。例えば、それを用いれば、マーケターにとっては、一つ一つ自分で探さずとも、コメントやインサイトをまとめて教えてくれる。専用の管理画面上で、「一番ターゲティングする上でパフォーマンスが良かったのはどこか」など、広告プロダクトに関連することまで答えてくれる。
それを自然言語のやり取りでそれを具現化していきますから、それは、企業の担当者レベルの敷居を下げることになる。より企業におけるXの活用が触発されるということになる。だから、冒頭、書いた。より実践的な価値を生み出す土壌を彼らは、投稿という最大の強みを活かしながら、築いていく。
ここが、今までとは違う点である。多くの人が投稿する機会を創出できたことは素晴らしい。結果、そこで人と人との引き合わせが生まれて、価値が生まれていた。けれど、もはや、集まるだけでは、もうダメなのであり、そこに時代の変化がある。
役立つアプリの本領発揮
「投稿の持つ価値をどうやって課題解決に繋げるか」。それを模索するわけであり、その為には「ビジネスとしての利用価値をどう高めていけるか」。そこから逆算して、投資の是非を考えれば、投稿の質は向上する。価値あると認識するヘビーユーザーがこのアプリを「役立つアプリ」へと変貌させていくのである。
その再定義の中で、今までない要素として挙げられるのが、肝となる「金融」である。ユーザー同士、法定通貨を通じて、お金のやり取りができるようになる。できることの幅が増えれば、ますます、Xの滞在時間は間違いなく増えていく。投稿自体の信用が、それらの利用幅の広がりとともに、さらに、増していく形となる。
当然、それらはコマース領域においても発揮される。検索の精度が上がれば、最も関連性の高い商品を引き合わせることになる。将来的にはXのインフラを使って、ワンクリックでそれらの商品を購入できることを目指している。プロモーションと行動できる場所が一体で考えられ、金融とXの親和性の高さもある。ここにもXの新たなビジネス的な価値訴求の視点があり、故に彼らはそこに投資をして、成長を見込む。
そして、彼らが投稿上で重視していくのは「動画」である。現状、その滞在時間の向上に大きく寄与しているのが動画である。ビデオ視聴をしている人は利用者の56%にも及ぶ。特にその傾向が強い人は、滞在時間も長いということで、体験価値の底上げにこれらが需要な意味を持つ。
・タイミングを逃さぬX
つまり、彼らの動画というのは、投稿自体についているもの。それをタッチすると、各デバイスで最大表現となり、配信サービスと変わらぬ環境で、視聴が可能だ。その動画自体も長尺になっていて、それが上記の傾向を後押ししている。
だからこそ、先ほど、触れたAIを活用したアルゴリズムは動画などでも積極的に実施。動画への誘導機会も増やしていくことが彼らの強みになる。これまでの動画といえば、中毒性の高い動画で再生時間を稼いでいなくもない。そこで、彼らの旬な活字の持つアルゴリズムと組み合わせるわけだ。精度の高いアプローチを実現させれば、それが動画の視聴機会を増やす。
大事なのは、これが「目的を持って配信サービスを見る」のとは違った出会いを創出する点。X独自の価値となるので、そこに彼らは投資をしていくわけだ。逆にそれができるとすれば、新たな発信源も生み出す。著名なアナウンサーやコメンテーターによる番組を、X上、動画で配信していくことを予定しているとか。
それを土台に、アニメでも革新的な取り組みを見せた。2024年4月、アニメ「怪獣8号」では、地上波(テレビ東京系)と同時刻に丸々一本、リアルタイム配信をしていく。特に、漫画やドラマのような連続ものは、極力、一回一回、機会損失をなくす必要がある。
その意味で、Xのタイムリーな発信は、ユーザーにアラームの如く、気づかせる。だから、配信サービスとも競合とならない。むしろ、連携が増えていき、配信サービスのうち、ABEMAが「聖剣学院の魔剣使い」で無料配信をX上で行った。
・見るべき時に見せるリーチ力
認知の意味で行うプロモーションとして貢献しているのだ。そして、アーカイブで見るにはABEMA primeの会員になってもらう。そうすれば、お互い、WIN-WINで渡り合える。つまり、動画に触れる機会が増えたから、そこに対しての役回りも多様化している。彼らはそこで、そのタイムリーな投稿が果たす部分で、動画に触れやすくなるよう、機能している。だから、共存共栄できるというわけである。
おわかりだろうか。
Xとなり、投稿から派生して、あらゆる生活における課題解決に着目している。そして、その課題解決から着地点を見出すことで、投資も可能となる。それが利用者の利便性に繋がり、滞在時間を増やしていく。
この滞在時間こそが肝。その接点の度合いが増せば、より利用場面がシームレスになる。金融など投稿以外の価値を持たせて、スーパーアプリとしての体裁を持つことができるわけだ。まさに、SNSも変貌の時を迎えている。僕らのSNSに対しての向き合い方も変わりそうな予感がしている。
まさにそれこそが、時代の流れである。
今日はこの辺で。