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良平堂 挑戦の舞台裏 お客様と恵那の地域と心通わす

 ネット通販も展開するお店が果たすべき役割ってなんだろう。僕は、「良平堂」の名物女将、近藤薫さんの話を聞いて、地域への貢献というキーワードが心に残った。聞けば、地元に密着する店舗ほど、実は地域の恩恵を受けている。また、自ら手がけた商品を通して、自らだけではなく地域そのものの魅力を伝えることが大事なのは、その価値が倍化されて、自分にかえってくるから。それを彼女は強調するのである。

恵那のおかげで力をつけられ救われた

1.丁寧に時間をかけた「えな栗」

 良平堂は、恵那市の小さな店舗である。恵那市と中津川は栗きんとんで有名であり、かくいうこの店もそれを生業にしてきた。この日、僕は、特製の「えな栗」という羊羹をいただきながら話を聞いていて、見てほしい。この栗のボリューム。

 羊羹のほぼ大部分を占める栗は、この店のオリジナリティで、実店舗 兼 工場だからこその魅力。職人は一個一個手がけており、そういう大量生産にはない“手作り感”がファンを惹きつけるのだろう。

2.ネットで切り拓き気づきを得た

 良平堂がネット通販を始めたのは、今から18年前のこと。当時「ヤフオク!」で近藤さんは、洋服を売っていたから、そこに知見があったのだ。そして、出店料を払って、商売するということは、ヤフオク!とは違って確実に売れる素地があるのだろうと考えて、「楽天市場」の門を叩いたのが始まりだ。

 以来、AmazonやYahoo! ショッピングなど、ECにもその裾野を広げて、自らの商品価値の最大化に努めた。

 当初は、ネットでお菓子のお取り寄せができたら良いなと着想していた。彼女の好奇心旺盛で、発想が豊か。さらに、行動的な要素が相まってECを始めたのは、自然な流れであったのかもしれない。

3.商品を売ることで恵那の認知を広める

 売上が伸び始め、それを契機に、催事のオファーも増えた。それと共に、ECに対しての心境にも変化があらわれた。「恵那を知ってもらうきっかけ」を増やしたいと考えるようになっていく。

 なぜだろう。それは、彼らが催事に行く度に「恵那の価値」を実感できたからだ。例えば、バイヤーやお客様と話す際に、恵那をきっかけに話が広がり、打ち解けたことは数知れない。「今は寒いの?」。そんな会話がお客様との関係を深めるスタート地点だったりする。

 そうか、恵那であることが武器なのだと。

 そして、今の自分たちがいるのはやっぱり恵那のおかげなのだと。であれば、催事やネット通販で“外の”人たちと触れ合うたび、恵那の認知を上げていこう。そう思うに至る。

 「だからね、催事に行くときは、地元の小さな店舗にも声がけして、商品を持っていくこともあるのよ」と。なるほど。自分たちはきっかけであり、そこで皆が盛り上がることを念頭に行動力を発揮する。

 近藤さんの行動によって切り開かれたマーケットがきっかけとなり、恵那を活気づけているというわけである。流石に恵那まで来てもらうのは大変。だけど、その地の魅力を知ってもらうことなら、誰でもできるでしょう。そう言って彼女は笑顔を浮かべるのである。

頑張るだけじゃダメなのよ

1.自分たちが強くなってこそ、人や地域に還元できる

 その一方で、商売の難しさも口にする。「頑張っているだけじゃダメなのよ」という近藤さんの言葉が印象的だ。それは、お菓子屋を継いでから痛感したことだという。

 シンプルに「売上に関する数字も、利益率もとても大事」という事だ。お菓子は、単価の安い商材であるからだ。例えば、地域に還元すると言っても、恵那のリーフレットを入れたりできればいいが、それも難しい。

 それが適切かは、自分たちの事業に照らし合わせて考える。利益率から考えて、できることをやるべきだと。その答えは、そのそれぞれの企業ごとに違っている。だから、そこを各々見ていこうと。「頑張って売る」。ただそれだけではいけないということの真意はそこにある。

 愛を振り撒く為に、自分自身が強くならないといけない。そこに彼女は工夫することの価値を見出した。

 言い換えれば、ECはその意味で考えると、こういう地方の店舗を救ってきた部分は大きいだろう。生産性の高いネットを駆使しながらやりつつ、何が自分たちに求められているのかを考え続けてきた。ここまで伸ばしてきたのも、それがあってのことだろう。

2.各々の持ち味を活かして

 その中で、差別化要因は何かを考える。実店舗で普段、お客様が必要としているのが何かもわかっている。

 プレゼント需要があるのはわかっているから、その仕様を実装させるし、熨斗の対応だってしている。また、お店で手渡しするのと変わらない感覚を抱いてもらうべく、自社での出荷を続けている。極力、あす楽などにも対応して、早く届くように工夫してきたわけだ。どれもシンプル話であるが、そこには考えがあってそれを取り組んでいるから意味がある。

 つまり、求められているのは、実店舗の時と同じ。お客様への想いは、普段、和菓子屋で向き合っているお客様と変わらぬ対応で、やり切ることなのだ。どこでメリハリをつければ良いかの指標はそこにある。だから、受け入れられ、リピーターも多い。

 時に、催事で「このお店って有名なの?」なんて言葉を投げかけるお客様もいるという。説明しようとする近藤さんよりも先に、「何言ってるの!このお店はね」と説明してくれている姿を見て、感動したという。

3.お客様の笑顔に触れてそれは天職

「だからね、みんな、一緒なのよ」と。ネット通販も。リアルも。

 向き合うお客様への気持ちも、そこにかかるコストも同じくらいかけなければ、ずっと関係性を築けるはずがない。極論、和菓子はどこでも手に入るけれど、その一つ一つに、お母さんの手料理のような温もりを感じるようにと心がけている。

 それなら、真心こもった手料理がどのように手渡されてきたかを想像すれば、いい。

 ネットとリアルと各々違ったアプローチであるけど、その根本は何も変わらない。「いつもは夜にお届けなのに、今日は昼だから、お仕事お休みなのかな」。出荷の伝票を見るだけでも、そう思ってしまうこと自体がまさに、リアルとネットに違いがないことの証拠である。

 それは、他の店舗が“外へ”と出た時にプラスに作用する。また、先ほど話した通り、それが地域への愛着を生むから、そこに素敵なサイクルが生まれる。ぬくもりを大事に、恵那市に恩返しをして、地元一体でまた、他の店舗と手を取り合って、奮起するのである。すると、それは自らの店舗だけで奮闘するよりも倍になってかえってくる。

 お客様と、恵那の仲間と、通じ合う。そこから全て始まる。彼女が言っていた「私はね、今の仕事、天職だと思う」という言葉が、この街とお客様を優しく、盛り立て、幸せな毎日を作り出している。

 今日はこの辺で。

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