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ウクライナ情勢 ロシアの輸入品で小売業に与える影響

 連日、テレビやネットのニュースを賑わせるロシアによるウクライナ侵攻。単純に「戦争反対」という意味合いだけではなくて、経済制裁を通して、ロシアから輸入が制限されるものも出てきて、小売業においては、対岸の火事と言えない。今回の件で、どれだけ影響を受けるのかを考えてみることは、実は事業を運営していく上で大事なことだと思う。

ウクライナ情勢は小売業に打撃 ロシアの輸入の影響

1.どこに影響があるのか?

 仕入れるにしても、ずっとそれを継続しているうち、自動販売機のような感じで、流れ作業でルーチンワークでやってしまいがちだから、注意をしたい。僕らが常識と思って当たり前にみていたものが少しも常識でも当たり前でもないことに気付かされるわけである。

 それでいうと、具体的に数値でそれをみていくべき。

 今回はそのデータを出すのにデジタルコマース総合研究所 代表取締役 本谷知彦さんに協力いただいた。それは、彼が2021年12月末まで大和総研にいて、「電子商取引に関する市場調査」の制作に携わっていた関係で、必要なデータを導き出すことには長けているからなのだ。

参考記事:ネット通販 の 市場規模 拡大に限界!?コロナ禍 経済産業省 EC 市場調査 を読み解く

2.財務省貿易統計を紐解く

 今回、本谷さんと話して「財務省貿易統計」というデータを主として、対ロシアと日本の関係を、数値を出してもらうことにした。具体的には、その輸入量である。

 このデータを用いる理由は、日本の通関システムとこのデータが紐づいていて、つまり通関を通して貿易されているものは全てここに反映されるからである。

 これは余談だが、「それならそのHPを見ればわかるじゃないか」と言われそうだが、それが実は難しい。「対象国」指定にしても国名で指定できなかったり、「品目」もそれらの番号なりを把握していないと、数値が出せない。

 まったくもって、おかしな話で、ネット上に存在するということは「調べてもいいよ」ということであるはずなのに、調べづらい。システムは理解しているけど、ユーザビリティが理解できていない業者に頼むと、こういうことになるのか、と反面教師でその事実を受け止め、数値を出してもらうことにしよう。

日本は何をロシアから輸入しているのか

1.原価の高騰が避けられないカテゴリー

 さて、日本はロシアから何を輸入しているのだろう。そして、今回の経済制裁によって、主にどういうジャンルに影響が出るのか。

 ここでは、特に、小売業で販売されているものに絞ってみていくことで、よりリアルに小売業に与える影響を感じていただこうと思った。

 今後、それらは国内で、流通する絶対数が減少するので、間違いなく原価は高騰し、粗利を減少させ、定価の変更を余儀なくされる。下手すれば、企業においてはそのビジネスの枠組みそのものに影響しかねないと思う。消費者もそういう事業者への理解を深めるべきで、そこを踏まえて、値段云々ではなく、質と今の市場の状況を見ながら、付き合うべきだ。

 ズバリそれでいうと一番、影響が大きいのは「魚介類」である。下はそれで調べたものをもとに表にしたものである。

2.政治リスクを持つ国との取引リスク

 具体的には、貿易統計の分類では「魚介類および同調製品」というカテゴリーになり、その額は1374億3867万8000円に及ぶ。

 この数字が丸々、ウクライナ情勢によるロシアへの経済制裁により輸入されづらくなる。

 政府としては直接、これらを仕入れないようにという指示があるわけではないので、幾分、それらの影響は抑えることができるかもしれない。ただ、決済手段に制限があるので、危機感を持った方が良い。

 そういう意味で、取引相手としてふさわしいのかという部分を鑑みれば、いつそれがどう変化するかはわからず、安定した仕入れ元ではないことは明らかだ。

3.少し具体的にみるとリアルに

 もう少し身近であることを実感するために「魚介類および同調製品」の内訳も出してもらっていて、ここまでくると、我々も想像がつきやすい。数字として輸入額が最も多かったのは「かに」である。

 小売業で「かに」に関わる事業者は多い。「日本人は好きだからなあ」なんて、思いながら、その中身を見て驚いた。ロシアからの輸入額は379億8900万1000円。

4.日本の捕獲量と輸入量で見ると更に明白

 これを「漁獲量」と「輸入量」とで比較してみると、現状がわかりやすい。

 2020年の農林水産省の「漁業・養殖業生産統計」に基づけば「かに」に関して国産の捕獲量は2.1万トン。それに対してロシア産の輸入量は1.1万トンである。日本はそれだけこのジャンルでロシアに依存しているか、よくわかる。

 さて貿易統計のデータに戻ると、「かに」に続いて多いのが「さけ及びます」。

 「さけ及びます」は、199億6723万9000円で、本谷さん曰く、多くは「さけ」の方ではないかという。これも、想像がつきやすいはずだ。サーモンを食べている人は読者の中でも多いのではないか。

 ただ、あなたがいつも値頃だと思って購入して、食べているのは、ロシア産がそれなりに多くて、それゆえ、価格帯が保たれて、その生活習慣が生まれているということなのである。

5.意外に浸透しているロシア産

 その他では、意外に多くて驚いたのが「うに」。「うに」は、97億7592万1000円である。

 こうやって、僕らが日頃、食べているもののなかで数字が出てくると、ロシア産のものが日常生活と密接に結びついていることがわかる。これは小売業には影響しないけど、パラジウムなども実は、割合が大きくて、何に使われるのかというと、銀歯を作る時に使う素材である。

 ロシアは広大な大地を持ち、資源に溢れた場所なので、それをテコに海外との取引を行い、積極的に外貨を入れて、国力を増強してきたのだということがわかる。ただ、残念なのは、本谷さんいわく、軍事と宇宙開発に力を入れるのではなく、もっと内政をしっかり強化して、経済を生産性高く、成果を上げるような仕組みを整えるべきだったのではないかと嘆くわけである。

ロシア人のメンタリティ

1.ロシアにはロシアならではの特徴

 と、まあ、こうやって、本谷さんが親戚のような感じでロシアについて語る理由は、これまた偶然ながら、本谷さんがいた大和総研は、政府系シンクタンクとしてロシアの案件に関わっていたからである。

 安倍晋三元首相がロシアとの関係構築に熱心だったこともあり、あらゆる関係各所をつれて、それを全面的にサポートしていた時代がある。本谷さんはロシアに合計27回渡航し、うちモスクワは19回渡航。出張ベースでのモスクワ滞在通算期間は3カ月に及ぶので、それを身近に語るのもうなづける。

 だから、率直にロシアに関しての印象を伺った。すると、街並みの緊張感、人々の緊張感、そうではありながら、資本主義の自由なところが入っていて、不思議なバランスの上に成り立つ国だったと振り返る。

2.ロシア人を象徴する「三つのS」

 興味深かったのが本谷さんは「ロシア人」は3つのSで表現できるんですと話していたところである。

 一つに「そっけない」けれど、二つに「素直」で、でも三つ目「粗暴」だと。

 なんとなくわかるような気がする。社会主義の影響かもしれないけど、用心深く、どこか人を信用していなくて、コミュニケーション下手になりがちなのかなと。

 最初はそっけないし、商談に行っても笑顔一つ、浮かべない。しかも自分の意見を簡単に捻じ曲げることなくて、それが時に粗暴だと感じられるけど、一度、お酒を交わせば、本当に素直な一面を持ち、接しやすいことがわかると。

3.気質を考えると強ち予測できないことはなかった

 常識に照らし合わせれば、プーチン大統領のやっていることは明らかにおかしい。けれど、ロシア人のメンタリティを思い浮かべて、ベースとなっているものを考えれば、ありえなくもない話なのかなと彼は率直に話してくれた。

 余談かもしれないが、プーチン大統領はサンクトペテルブルク出身。本谷さんいわく、そこは素晴らしい街並みで、華がある。かつてのロシア帝国の首都であり、そこで彼は育った人間なので、古き良きロシアの時代を取り戻すんだという思いがあっても不思議ではないと話す。決して、戦争は許されないけれど。

現場まで行かねば真相もリスクも見えてこない

 最後に、僕は、なぜ、ロシア人の話に触れたのかというと、今一度、僕らが認識しなければいけないのは、「日本とは違う人種を相手にしている」ということではないのだろうか。それでいて、日本人と同じ感覚で輸入したりすると、実はそこに潜むリスクに気づかずにいてしまうこともなくはなくて、だから、僕が冒頭話したように、それが自動販売機のように向き合ってはいけないということに繋がる。

 もしも、ロシアに依存している割合が多かったとしたら、果たしてそこまでロシア人のメンタリティまで理解して、リスクを考えた上でのことだったのだろうかと。

 2020年代に入って、新型コロナウイルス感染症の拡大であるとか、ウクライナ情勢など、僕らには到底、予測しえない事態が起こり続けている。

 けれど、改めて、それらは、自分達が向き合っているものが必ずしも同じ条件で、同じようにずっと続くものではないということを示してくれているように思う。

  やはり、シンプルであるが、今回は国の話だけど、企業だって同じだ。現地に行き、相手の人となり、考え方、文化にまで触れることで、ある一定の予測ができればそのリスクを受け止めて、対処もできるはずなのではないかと思うのである。

 僕らの目の前にある日常は必ずしも永遠ではなくて、だから、常にそうではない可能性を模索しなければならないのだ。

 今日はこの辺で。

デジタルコマース総合研究所 https://dcri.jp/

 

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