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@cosme TOKYO DX 革命 デジタルを補完する旗艦店

 クチコミのメディアから派生してお客様に商品を提案する小売企業へ。「@cosme」の発展は注目に値するが、最近はデジタルをフックにリアルへの影響力を増している。リアルとネットを束ねて、アットコスメリテールとして会社を統合して、何を見据えるのか。ファッションEXPOで代表取締役 遠藤宗さんが東京・原宿 にある「@cosme TOKYO」に絡めて説明した。それをここで考察してみる。

アットコスメはリアルを活かしてサイトをフォロー

1.アットコスメには3つの軸がある

 アットコスメは「クチコミサイト」の他に「ネット通販サイト」、「リアルの化粧品専門店」を持っている。化粧品専門店というのは、百貨店やドラッグストアのリアル店舗とは異なる。街の商店街でカウンセラーが常駐して化粧品を案内してくれる専門店のことで、今や国内ナンバーワンである。

 今、彼らはそれら3つを一つにする流れを汲んでいる。その拠点として位置付けるのが「@cosme TOKYO」であり、東京・明治神宮前にある旗艦店だ。

2.@cosmeの価値を補完する意味合いで強みを発揮

 そもそも前提として、「アットコスメストア」というリアル店が、全国各地に存在する。

 その特徴として「@cosme」を活かす形で存在。口コミサイトで化粧品の魅力に触れたお客様を念頭に置いている。だから、実際にこのお店にくれば、そこで見た化粧品に巡り会える。それだけではなく、実際に試して、実感できるようにしている。だからその品揃えは「@cosme」の人気に沿った形になる。

 実は、このお店が二つの既成概念を打破している。一つ目は化粧品仕入れに関してで、仕入れ条件(掛け率)で入荷の有無を判断せず、お客様の人気で考慮する。一切の店都合を撤廃する。

 二つ目に、スタッフとのコミュニケーションが図れる。従来型の化粧品店は概して、お客様の客単価を重視する傾向にある。だが、ここでは単価ではなく、来てもらえる頻度を増やす工夫を心がけている。

 つまり、求めるのは一回で5万円を買ってくれるお客様ではない。3000円でもいいから何度も足を運んでもらえるようにする。これが彼らの差別化要因となっているわけである。

@cosme TOKYOの意義とは?

1.「アットコスメストア」の価値の集大成

 これら「アットコスメストア」の価値を最大限発揮するために「@cosme TOKYO」は存在する。

 ただ、ここで問題が発生した。新型コロナウイルス感染症の拡大である。感染が流行する直前、昨年一月にオープンした。だから、彼らもその後、当初の考え方とは、方向転換を余儀なくされた。だが、今にして思えば、かえってそれはよかった。デジタルとリアルの融合を後押しすることになって、遠藤さんはそれを実感するのである。

2.当初の構想は・・

 当初の構想はこうだった。例えば、仕事の合間にデジタルで化粧品の情報に触れる。ユーザーはその後、このお店に立ち寄ってそのサンプルを受け取るわけだ。家に帰ってからは改めて魅力をECサイトで確認。興味を持てば、自分に合っているのかを確認がてら、オンラインでカウンセリングを受ける。

 こういう考えに至る背景には、海外での小売があった。アリババが提供する生鮮スーパー「盒馬鮮生」はリアル店で商品を見るのだけど、結果、30分後にそこで見た商品を「家に届けて」くれる。

 リアルの行動がまずあって、そこをネットと物理的な要因によって補完しあう。ただ、それを自分たちのリソースで考えたときに、どう使いこなせばいいのか。そういう時代になるのに、そこに対しての答えはなかった。

 だからこそ、リアルとネットを融合させた先に、どんな付加価値をお客様にもたらせるか。その仮説と検証を繰り返すための場として、この拠点を用意したのである。

コロナ禍でリアルが窮地に。そして転機に

1.一気に伸び悩む 原宿 の@cosme TOKYO

 さあ始めよう。そんな中で訪れたのがコロナ禍である。当初の考えと明らかに変わった。一番大きかったのは何か。それは、「リアル店を起点」に何かをしようというより「デジタルを起点」にリアルをどう活かすかという視点になったこと。

 幸いにして小売りの流通額では、ネット通販の売上が大幅に伸びて、大勢には影響がなかった。しかし、それは「今だけの話」だ。逆に多くの企業がネットに参入する。そうすれば、これから厳しい戦いにさらされることになる。かえって危機感を抱いたという。

 デメリットは何か。それは「@cosme」のランキングをベースにして、商品を揃えている以上、正直、MDでの店としての差別化ができていない。だから、今一度、「アットコスメストア」ならではの付加価値を考えなければ、ならなかった。

2.スタッフのカウンセリングこそ最大の財産であった

 灯台下暗し。遠藤さんが着目したのが、化粧品専門店としての化粧品知識に詳しいスタッフだ。これまで、「アットコスメストア」は専門家としてのスタッフを、数多く揃えていた。実はそれこそが大きな財産であると気付いた。

 ではそれをどう「@cosme TOKYO」で活かすのだろう。そこからが秀逸である。

 チャットを通してのオンライン接客である。化粧品の場合、ネットでは直に人と向かっていないので、色味も肌の状態も確認できない。だから、そのアドバイスをするのは難しい。ネットにおいてはそれらは不利なのではないかと「思い込んでいた」。

3.リアルの価値を活かせるほど、ネットは進化していた

 でも、実はそれが違かった。スタッフは日頃、お客様とのカウンセリングで、聞くべき対象を絞り込んで上手に答えを引き出していたのである。つまり、質問の内容を工夫して、相手の必要な要素だけを引き出して、相手の悩みに対して的確に答えることができていた。

 その知見は、たとえ顔の見えないチャットでも彼らの強みが発揮されることがわかったのである。

 以前、トランスコスモスが、コールセンターでLINEでのオペレーションをすると聞いたときに、「最近、中心に雇っているのはアパレルの店長だ」と聞いて驚いた。

 つまり、オペレーションができればいいのではない。何を聞くべきかのポイントを押さえている人を雇った方が、これからの時代、オペレーターとして重宝されることを知っていたのである。

 例えば、ちゃんと日頃、お客様と向き合い、上手にコーディネイトを指南できるスタッフこそが、その売上をあげる。それと全く同じ。デジタルの進化により、無機質だと思われていた応対に、彩りを与え、顧客体験の向上に繋げられるようになったのである。

ネットを起点にリアルを活かす新時代の視点

1.スタッフを強みに変えた仕組みづくり

 すると、一気にデジタルでリアルの価値の活かし方も見えてくる。

 例えば、先程のチャットの話ではスタッフ対一人のお客様であった。それをスタッフ対複数人に置き換えて、@cosme TOKYOにおいてこだわり抜かれた店内をライブ配信で伝えてみたら、どうだろう。まず「人」として「店」としての魅力を打ち出し、コミュニケーションをとってより深い顧客体験へと結びつける。

 だから、スタッフ一人一人の個性を可視化して個々にファンを作っていく。それゆえ、ネット通販などに繋げた成果は可視化して実績に反映しようと、「スタッフスタート」の利用にもつながった。

 スタッフスタートはスタッフのセンスを顧客満足度に活かし、そこからECサイトの売り上げに繋げていく。

参考記事:受賞 BEAMSの Heg.さんが魅せたバランス感覚 STAFF OF THE YEAR 2022

 従来、それはアパレルで活用されていたもの。ただ、遠藤さんはここまでの話を振り返るに、それはコスメにも置き換えられると考えた。一人一人の接客の成果が可視化される分、スタッフのモチベーション向上も期待できると考えたわけである。

2.データの活用でスタッフの強みを最大化

 さらに、通常の化粧品専門店との差別化もできる。普通は、化粧品専門店は一つのブランドで構成されている。だから、その顧客台帳は一ブランドでしか存在していない。それが常識である。

 だが、彼らは複数ブランドを扱っていることから一つ一つブランドごとに分かれていた台帳を一つにしたのである。共通台帳システムを作り、それを顧客IDと紐づけることで、それらの接客の質の向上につなげて、データの最大化を狙おうとしたわけである。

 幸いにして、メディアの情報とネット通販での情報が一つのIDで管理されていた。だからトータルでその接客としての度合いを高めて、このお店としての価値へとつなげていけたわけである。そうして先ほどの@cosme TOKYOのようなスタッフの価値で底上げできれば、今の時代にふさわしい顧客との関係性が築ける。

3.顧客起点の満足度の高いインフラとなる

 メディアを起点に品揃えをして、でもその品揃えには極論、オリジナルはない。だからそこで差別化できない弱みがある中で、よくぞそこで、自分たちの付加価値を見つけた。

 徹底してマーケティングの要素を追求し、そこで集まったデータを顧客満足度に繋げて、ファンを生み出し、インフラにしたのである。

 そして、今まで築いた店舗のスタッフの質の高さは、更なる顧客体験の向上につながる。

 さらに、その引き合わせに基づき、データの精度が高まれば、プラスに作用する。それは、結果、そのお客様にとってアットコスメでかわなければならない理由を作り出すことになったわけである。リアルを補完するネットではなく、ネットを補完するリアル。それも旗艦店だったわけだ。

 今日はこの辺で。

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