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まくら診断 に学ぶ 河元社長流の 買い物 改革

 売るのはお客様を知る為であり、不思議と知れば知る程、売れていく。まくら株式会社 代表取締役 河元智行さんの話を聞いていると、売ろうとしていないところに売れるヒントがある。彼らが先月始めた「 診断 」で まくら の購入を促すという発想もそこに近い。睡眠の状態など、質問に答えるだけで数多くの枕の中から自分に合うものを選び出し、あるいはオーダーメイドの枕を作ってくれて自然に満足度の高い購入へと至る。買い物の概念を心地よく覆す彼に「その発想の原点は如何に」と取材を試みた。

まくら 診断 の本気

 彼が始めたその店は「pillow.jp」という。枕の診断型のオンラインストアであり最大で41項目の質問に答えれば既製品256商品の中から3つと、パーソナライズの枕が1つ紹介される。色や型違いでずらっと並べて、商品をその中からお客様側が探すのは、もう過去のことになろうとしているのだ。

 これを聞いて僕はもうお客様が商品に合わせるのではなく、商品がお客様に合わせる時代なのだと思った。

 裏側で機能しているのは、枕選びのAIシステム「PilloBO(ピロボ)」でおまけのゲームではなく、正真正銘の診断システムであって、お客様はその目的を叶えられて、裏側ではそのデータによりカルテが形成され、蓄積されていく。

 なぜ、このような売り方を考え、また具現化できたのだろうか。それについては、彼の過去の行動を辿るとわかりやすいので、そこから触れていくことにしよう。

売ろうとしない「姿勢」の原点

 河元さんが一人で会社を立ち上げたのは今から17年前。自分が当時、買い替えた枕が合わなくて、枕の選び方の情報ポータルサイトを作ったことに端を発する。それが人気となり、メーカーとの繋がりも生まれた事で枕を売り始めたわけである。

 ただ、河元さんと話していると不思議と「売ろう」という感覚は伝わってこない。ここが彼の発想を理解するミソであり、当時、枕よりもアフィリエイト収入があったといわれる雑学のメディアでのやり方にその片鱗が窺える。

 話が逸れるが、彼はその雑学の中身をCD-ROMで販売する事を考えたそうだが、一番意識したのが信用であった。自分の身分を明かして、住所、電話番号まで晒して納得できなければ一定期間返品を認めていた。ただ僕はここに着目したい。

 一見すると「売っている」ようではあるけれど、

何気なくその商品の魅力が何なのかを見極めようと「お客様のリアクションを確かめていた」ようにも思えるのである。信用の上に、返品まで認めれば、本当に満足しなければ、商売は成立しない。これこそがまくらの売り方の核心に通じるところであり、商品は変われど、まくらでも返品を受け付けている。

 まくらを売るようになった原点は「自分に合ったまくらに巡り会えなかった事」にあったわけだから彼は「枕を売る」というよりは「お客様の頭に自分の枕がフィットして差し上げる事」を目的に据えたわけだ。言うなれば、その商品単価は、その満足に応えたことへの対価に近い。雑学商材の時と本質的には変わっていなくて、自分の不満も含めて、よりお客様目線でそうしたのだろう。「売ろう」としていないと書いた理由はそこにある。

返品をしないためのサイト作りがデータとなる

 考えればわかることだが、返品はひとつ発生すると5〜6個は売らないと元は取れない。その代わり、返品を増やすわけにはいかないから、メディアサイト然り商品のランディングページなど、見せ方や説明で「いかにすればそのフィットに対しての誤差はなくなるのか」という視点は徹底されることになる。

 だからメリットもデメリットも全て曝け出して極力、お客様一人一人にあったものに辿り着くためのページ作りが何か。その精度を高めるサイト作りに特化していく。それらの結果はデータとして集まり、生産性を高めて、会社への貢献の度合いを大きくする。そう考えると、返品すらもプラスなのかも知れない。

 「売る」ことより「知る」ことに重きを置いているから、彼らの投資も自ずと、お客様の理解を深める方向へと向かっていき、だから専用に受注予測システムを開発することとなった。

 ここまでくると、もはや大手の寝具販売の会社でも及ばない独自性。ゆえに、昨年のコロナ禍においては当初一年で予想を立てていた売上は、わずか半年で達成してしまったのだ。残り半年は2〜3年先を見越しての投資をしようと、本腰入れたのが「まくら診断」となる。

まくら 診断 は本質は変わらず、でも進化する

 ようやく「まくら診断」の話に至るが、でもここまでの話を聞いてくれば、本質的には変わっていないことにお気づきいただけるだろう。

 河元さんが教えてくれたのが「結局、自分に合う合わないかについて色々、見てきて9割は好みであり、1割が人間工学なのではないかと思っています。同じ身長、体重でも人それぞれ合致するまくらは異なる。異性の好みみたいなものですよね」と笑う。他の人の良いといってるものは、必ずしも自分が良いと思えるわけではない。

 一人一人、自分の布団で試さないとわからないので、返品してもらっていたわけであり、実は創業以来、そうやってお客様と彼らとで蓄積してきたデータが今、診断として、成果を出しているわけである。全ては、販売を通して、お客様を知ろうとした行動の延長線上にある。勿論、この診断結果も蓄積されれば、その精度が向上するというプラスのサイクルが続いて、発展性が生まれるわけである。

オーダーメイドで輝くスタッフの価値

 このAIシステムによって特にパーソナライズオーダーに関しては大きな前進をもたらした。一言で言うなら、バラバラで機能していた社内のノウハウが一つに結集され、全く違った価値を創造していたから、なのだ。

 その最たるは一人一人の社員の価値を生かすという点である。枕の中身を詰めるという内職は今までも存在していたが、ルーチン作業であって、彼らのその職人技はその過程で磨かれつつも鳴りを潜めていたのだ。けれど、今、パーソナライズオーダーを具現化する中において、AIによって導き出された判断結果をもとに、繊細に一人一人のお客様の性質に合わせたまくらを生産する為には、その職人技が欠かせないものとなって、企業価値に貢献することにつながっていったのである。

 しかも出荷もアウトソーシングしていないので彼らの職人技と連携させれば、質の高いものをすぐに作って出荷に繋げるフローが出来上がり、いずれ近い将来、翌日には届けられる様な環境が整う。ここまで来ると他が追随できないレベルである。

 改めて河元さんの話を聞いて思ったのは「自分たちが目指すものは何か」というのは究極、他とは違う。答えは自分たちの会社の中にしかなくて、流行り廃りとは違うところのぶれない信念の中にあるから、目先で商売をすることなく、本質を見据えることなのである。まくらをマッチングさせることに企業価値があると考えていたから、それを起点に派生させて、今の数々の実践があるのだろうと思う。売るのではなく知り、でも知ることで売れるのである。

 今日はこの辺で。

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