ジャパンネット銀行がPayPay銀行へ変わる理由 『ネット屋がやる金融業』本格化
プラットフォーマーは様々なサービスを金融に紐付けして企業価値を高めていく。先ほど、Zフィナンシャルにより開催された「 PayPay ブランド統一による金融戦略説明会」。金融事業をメディア、コマースに続く第三の収益の柱にする。今後、Zホールディングス( ZHD )グループによるそんな意気込みを感じる内容であった。
シナリオ金融という名の戦略
彼らは「シナリオ金融」という言葉を用いて、その全貌を説明。それぞれのシナリオに沿った形で金融と接点を持ち、サービスを利用してもらう。それを意図しての言葉だ。
具体的には金融系企業の名前の冠に、全て「PayPay」をつける。ワントップでシームレスに活用できるようにしていく為である。下の写真の通り、例えば「PayPay残高」に借入をするとしよう。その際に、名称が「PayPay銀行」であれば、その利点は明白。どこの銀行を選ぶ事が自分にプラスになるのかがわかるからだ。それがその銀行自体の差別化要因となり、ひいてはPayPay自体の強みにもなる。
金融を束ね、ヤフー関連サービスを結びつける
この考えをもとに既存のヤフー関連サービスと金融を結び付ける。すると、そのサービス自体の付加価値を高まって、またグループシナジーを活かせる。
具体例を挙げるなら「ヤフオク!修理保険」がそうだ。「ヤフオク!」での購入品が破損した際、その修理代金を保険として、300円から加入できるようにする。ここの裏側で金融サービスが機能するわけで「ヤフオク!」自体の信用が高まり、サービスを強力に補完する。
旅行などにおける宿泊キャンセルに伴う保険もそう。それも宿泊キャンセル保険と「Yahoo!トラベル」でシームレスに結び付ける。そうする事で、それ自体が他との差別化要因となる。更に、金融系における新たな顧客獲得を、グループの価値をてこに行えるというわけだ。
金融があらゆるサービスと根っこで繋がる
こういう背景のもと、ジャパンネット銀行はPayPay銀行となる。同銀行内で開催された取締役会で、PayPay銀行株式会社への商号変更日を2021年4月5日とすることが決議された。
元々、日本初のネット専業銀行として産声をあげたジャパンネット銀行。それは、主にPCを軸にしたネット事業であった。しかし、そでも最初の8年間のみ。iPhoneの登場以来、スマホでの利用が拡大。スマホを軸に事業が成り立っている。だからこそ、スマホでの決済アプリである「PayPay」が存在感が増す。それどころか、今やスマホ決済の中でも、多くの人にとってのシェアを握り、生活インフラとなった。
両者は歩み寄る事で、最大化する。それは、あらゆる生活領域に接点を持つ「スーパーアプリ」へと進化することで実現することになる。
その連携は先ほどから触れている通りであり、シナリオ金融という言葉を通して、3000万人の利用者がいる「PayPay」を礎に拡大していく狙いだ。
PayPayという名の影響力
既に、下記の図の通り、PayPay経由での新規口座開設が増加中。それにともない決済件数も増えていると説明している。
今後、消費行動の要となる「キャッシュレス」が浸透するほど、「PayPay」を起点に金融系の強さであらゆるサービスに根を張り、経済圏の強みを最大化させる。
思いがけず、ZHDの川邊健太郎社長が言っていたこんな言葉を思い出した。BIT VALLEY 2019というイベントでのことだ。
『○○(既存の業態)屋がやるネット事業』は『ネット屋がやる○○業』に負けるようになる。
確かに、代々銀行をやっている側にとってみれば、デジタルの最大化が熟知できているとは言えない。だからこそ、その強みを通して、金融の価値を引き上げるとすれば、彼が指摘する通りかもしれない。要は、デジタルか否かというよりは、金融のポテンシャルをどうやって引き上げるかに尽きる。さあ、どうなる。
今日はこの辺で。