売る事は目的でない“体験型”小売店 b8ta ( ベータ )革命
日本に新たな視点の小売店が登場した。それは売らないお店。お店なのに売らないの?それが、日本初上陸の小売店 「 b8ta ( ベータ )」である。8月1日、新宿マルイ本館と有楽町電気ビルにオープンした。未知なる商品と触れ合い、好奇心そそる“体験型”。この店は、データを、出品者、メーカーに届けて、そこで収益をあげようという全く新しいビジネスモデルなのだ。
販売が主でなく 体験型 で
1. これはなに?から始まるワクワク
このお店を支える重要な存在、商品に着目したい。例えば、有楽町電気ビルの店では、けむくじゃらな生物のような物が置かれている。
なんだろう?これは、AIペット型ロボットだ。触ると猫でも撫でているかのようなリアルな動きをして見せる。不思議な見た目に、顧客側も好奇心を持ってしまう。当然、これらの商品は触ってその反応を見るなどして楽しむ。
こちらはフィンランド発の室内水耕栽培ステーション。
「これはどうやって使うのだろう」と思わず、覗き込んでしまう商品が多い。つまり、思わずリアクションしてしまうところがミソである。
「 b8ta ( ベータ )」の ビジネスモデル
1.人の反応のデータを販売する
思わずリアクションしてしまうことが実は価値となる。「 b8ta ( ベータ )」という店の仕組みはそこに紐づく。
実は、その“リアクション”を細かにデータ化するテクノロジーが張り巡らされているのである。店には、常にそれら商品と一緒にタブレットが置かれていて、このタブレットはカメラがついている。しっかり、その表情を抑えているのである。
また、天井にもカメラは設置されていて、それによって商品に対しての反応がデータとして蓄積される。これらのカメラはしっかりお客さんの行動を追っている。
その商品が陳列されている区画で、どんな世代のどんな属性の人(顔などは記録されないが)が足を止め、どれだけ興味を持ったか。このことが今度は、店の魅力の一つである“体験型”であることに意味を持つわけだ。
人はそこにリアクションをしたくて集まり、そのリアクションは価値となって出品しているメーカーにフィードバック。特に、未知なる商品はどんなリアクションをするのかは非常に大事な要素である。
2.体験型から始まる新しいサイクル
リアクションからマネタイズされるから、そこには面白い商品が集まり続けて、、、、。という具合に、サイクルを辿る。“リアクション”がここの根幹部分であり、データがAIによって分析されているから出品者にフィードバックされる情報は個人を特定しない。
それで「b8ta( ベータ )」はその場所に陳列することでの月額費用を支払ってもらっている。
繰り返しになるが、冒頭で話した奇想天外な商品との体験。それを顧客が興味を持って反応すればするほど、商品の価値が可視化される。そして、そのそれらに関する情報は日々更新されていく。それを以って出品者は、商品の実力を確認できる。
だから、対価を支払うわけで、売らなくても成立する。だから「b8ta( ベータ )は小売店とは訳が違うのだ。
3.デモンストレーションの場として徹底
つまり、商品の「デモンストレーション」の場を提供することに徹する。出品は、6ヶ月契約で月額で30万円。比較的単価の高いニッチな商品が多いのは、その費用感の部分もあるからだろう。
だから、店内の商品欄に自社オンラインストアへのアクセスが書かれている。自社ECでなくても、Amazonや楽天市場でも良い。なぜならB8taは売ることを商売にしていないのだから。
意識は出品者への利便性にも向けられている。出品も手軽であり、商品登録そのものはWEB上にある「b8ta(ベータ)」のプラットフォームと呼ばれる管理画面で行う。そこで商品情報を更新すれば、直ぐに商品横のタブレットにアップデートされていく。だからそれは、ネットショップに出品している感覚に近い。
このような仕組みだから、スタッフは「販売員」ではなくむしろ「プレゼンテーター」である。彼らはその商品の情報だけでなく、企業の理念にまで教育されている。つまり、販売数がノルマではなく、どれだけ商品を深く、その世界観を伝えるかに、重きが置かれているというわけだ。
小売と縁が深い企業も興味を示す
1.大手企業もその型破りに注目している
「b8ta(ベータ)」の記者会見に参加してみると、マルイや三菱地所などの顔ぶれ。いわゆる既存の小売と縁が深い人たちの関心を集めていうのが面白い。
彼らは、b8ta Japanに出資をしていたり、すでに連携を決めており、いずれもデジタルシフトが進む中で、小売店の役割が変わってきていることを、記者会見の中でも強調した。
そして、これからのリアルの小売は「体験」をいかに充実させるかの重要性を揃って口にしたのが印象的だ。「b8ta(ベータ)」が提案する切り口への期待感は、小売店の未来を占う上でも大きなものとなる。
ものを売っていた場所で、売ろうとしない時代である。
2.商品は人に関心を持ってもらうところから始まる
商品を作る魂は商品に宿る。その魂はデータでは推し量れないように思えるけど、実はそれを受け止める側の人々のリアクションをデータ化すれば、見えてくる。リアルで見せる多くの人の動きは、未来のヒットの商品のヒントとなるかも知れない。
「b8ta( ベータ )」は 小売店という売り場を出品者目線で再構築した“体験型”という視点をもちこんだ。まさか売らないお店が出てくるとは思わなかったが、その仕組みを聞いて納得である。これからは、大量生産大量消費ではないから、少なくともその価値を認識して購入してくれる人を探し当てることが大事なのだ。その意味で、世の中には出ていない価値観が、これにより可視化され、ビジネスチャンスを掴むのだとすれば、面白いではないか。新しい可能性が飛び出すことに大いに期待したい。
今日はこの辺で。