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LTVとは?その計算式と陥りがちな罠 定期購入 ならではの本質的理解

 通販に関わると必ず耳にする「LTV」という言葉をご存じだろうか。その言葉の意味は、Life Time Value(顧客生涯価値)である。つまり、特定の顧客から生涯にわたって得られる利益のことをいう。多くの通販企業がそれを意識しているが、間違った使い方をしていると警鐘を鳴らすのが、やずやの大番頭 西野博道さんである。

LTV崇拝はなぜ危険?

1.売上の構造を分解して方程式にしてみる

 そもそも、やずやといえば、健康食品の先駆けであり、その特徴として“定期購入”と呼ばれる手法を取り入れた点にある。さて、その通販企業で一番肝心なのは年商の内訳であると、西野さんは指摘する。

年商=年間稼働顧客×年間LTV

 しれっと、稼働顧客などという難しい言葉が出てきているけど、こちらの記事にもある通り、「一年以内」という単位で見て、ずっと購入してくれているすべてのお客様を指す。そして先ほどにも上がった「LTV」。ここでは年商の内訳なので、1年間でのLTV、つまりお客様が年間通して払ってくれた金額となる。

2.売上が減少した時、2つの指標のどちらを強化する?

 考え方は至ってシンプルで、年商は結局、この2つの構成要素以外、存在しないわけである。だから、どちらかを伸ばせば、通販企業の業績は良くなる。さて、売上がもし減少した時、どっちに気持ちが持っていかれるだろうか。そういう話なのである。

 多くの企業は、売り上げが減少傾向に差し掛かった時に、真っ先に「LTV」を上げようと思い浮かべる。なぜか。それは、新規顧客の獲得なら「一人のお客様を獲得する為の宣伝費(=CPO)を自分達で捻出しなければいけない」と考えてしまうからである。でも、それが大きな間違いだと西野さんは言うのである。

 それを西野さんは下記の図を書いて教えてくれた。多くの通販企業は、稼働顧客にキャンペーンを打ったり、DMを送信したりしてしまう。ところが、それは気がつくとその売上の土台を形成している「稼働顧客」そのものを失うことになるのだと。

 稼働顧客に過剰に売り込むから、逆に離れてしまう。でも、それがその企業の土台であるから、致命傷となる。遅れて、徐々に売り上げが下がって焦り出すのである。「木を見て森を見ず」の最たる事例であることに、誰も気づかないのだ。だから、改めて、売上が何によって構成されているのか。それを今一度、考え直す材料が先ほどの方程式なのだ。

3.加えてLTVは簡単に上がらぬ現実

 考えてみれば、わかることなのだがこの「年間LTV」(=年間にそのお客様が買ってくれるLTV」)を例えば、2万円から4万円にすることは至難の技。現実的に考えれば2万円を2万1,000円にする程度が限界である。

 これで分かる通り「LTVを上げよう」といった声はよく耳にする。しかし実際、それらがあまり成果を伴わないのは当然である。

稼働顧客を減らさなければいい

1.減らさぬための工夫は接客にあり

 西野さんが強調するのは「稼働顧客」を増やすこと。その方が難しくない理由を聞けば、「だって獲得した顧客を「減らさなければいい」という事なんですもの」とニッコリ。

 減らさないために何をすればいいか。今、目の前にいるお客様との向き合い方について現場のオペレーターと話し合えば、いいだけのことである。そうやって減らさないように、コールセンターと一体となって、改善できれば、自ずと売り上げは上がる。ここに新規顧客の獲得の動きも加味すれば、稼働顧客数を2倍、3倍と増やすことができる。その方が現実的である理由は下記の通り。

 もし「顧客維持率」が「70%」であれば、3年目には「約5割」です。実を言えば、70%でもまだ足らなくて、目標は「90%」に置くべきだとしています。「90%」であれば5年目でも「5割」以上存在することになり、企業にとってこの差は大きいのです。

やずや “定期購入”で急成長 高い リピート率 のその理由 顧客維持率に着目せよ やずや理論vol.1より引用

 「稼働顧客」と5年後も5割以上の人が付き合えるようにする。そのことに意味があると説明する所以である。だから、やずやは接客を重んじたメカニズムがある。しかも効率化を図れたから、急成長を果たせたのである。

2.定期購入は手段であって LTVを上げるマジックではない

 「初回は商品を半額。定期購入に持ち込んでから単価を引き上げよう」。そんな作戦が本来の定期購入の考え方からはズレていることに気づくだろうか。これが蔓延することで「LTV至上主義」が出来たのだと思われる。

逆説的だが、「LTVを重んじた施策をやるほど、定期購入が定着しない」。

 やずやの場合、定期通販は「お客様を20年後もきっちり元気にして差し上げ、そのために商品を届ける。その理念が根底にある。定期通販という「売り方」はその理念を補完する手段でしかない。「定期購入」という継続的に商品を買ってもらう手法、それは今から25年前、そういう意味で始まった。

 つまり、お客さんの利便性を考えたサービスでしかない。結果的に、売る側も経費がかからないから、お安くします。そんな意味合いでしかないので、安くして金額を上げるなど、本末転倒なのだ。

 だとすると、昨今見られがちな、定期通販が、自分の会社のLTVをあげるマジックみたいなものになっていることに西野さんが違和感を感じるという話には、僕は、素直にうなづけた次第である。

今日はこの辺で。

関連記事:20年売れ続ける商品の舞台裏 “やずや”が商品開発で絶対抑える大前提

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