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“プラットフォーム”を利用して 自ら“プラットフォーマー”になれ 製造も小売もDXを推進すべき理由

 昨今、プラットフォーマーが凌ぎを削るなかで、中小企業が取り残されている。プラットフォームに飲まれ、依存するしかないのだろうか。その答えを探すべく、僕はローランド・ベルガーの小野塚征志さんに話を聞くことにしたのだ。 “プラットフォーム”ビジネス にどう向き合い、活用すればいいのかを考えたい。

プラットフォーム ビジネス を考える上で抑えておきたい事

1.プラットフォームって何だろう?

 小野塚さんはローランド・ベルガーに所属。富士総合研究所、みずほ情報総研を経て、今は同社で戦略コンサルタントをに務めている。最近では、書籍も手がけている。主にサプライチェーンマネジメントに精通していて、このプラットフォームにも詳しい。それで、この問いに答えるのには適任と考えた。

 そもそもプラットフォームって何だろう?一言で言うなら、プレイヤーが商品や情報を持ち寄って、それを欲するユーザーとの間を取り持つ仕組み。共通のルールに持ち込む事で、コストを抑えて効率よく引き合わせる。だからその関わる両者にメリットをもたらす。

 ただそれは今に始まった事ではないんです。小野塚さんは、そう言って核心を話し始めた。

2.誰でも“プラットフォーム”

 なんてことはない。百貨店や商店街だってそうなのだ。お店が集まってお客様との間を取り持っていた。

 ただ、それをハードでやっていた。ハードでやるから大変だったわけだ。お金もかかるし場所もとるから。でも、それがデジタルにできるようになったのが大きい。バーチャルにそれがハードを持たずに、できるようになって、プラットフォームの敷居が下がった。つまり、誰でもそれを作れる時代になった。これが大きいと説明しているのだ。

 そうやってビジネスチャンスが今は広がっている。それはベンチャーをやる人にもそうだし、既存の会社をやる人にとっても。「プラットフォームを作っていきましょうよ」。中小企業においてもプラットフォーマーになれる時代だから。そう言って、彼は世の企業に発破をかけるのである。まだまだプラットフォームたりうる産業はあるはずだから。

3.シタテルに見る製造業でのプラットフォーム

 例えば「シタテル」。服の発注者と、作り手である縫製工場を引き合わせるプラットフォームだ。創業は2014年と日は浅い。要は、アパレルを作りたいと思えば、たとえ、その作り手が素人であっても、それを作れる人と紐付けるマッチングのビジネスである。縫製工場からすれば、パターンの作成などが済んだ状態での案件の紹介を受けられるのである。

 平準化したことで発注者との細かい擦り合わせが必要なくなり生産性が高くなる。それが需要を発掘し発注者の登録は1万5000社超、縫製工場の登録は900社超に至る。

関連記事:ものづくり を守る DX “シタテル”の動きに学ぶ

 コンセプトを考えてブランドを立ち上げたとして、こういう仕組みを使った方がはるかに、販売まで早く辿り着ける。洋服を一から作るよりは、こういう形をとってコストを抑えれば具現化されやすい。新しい企業が新しい価値を創造して、すぐに大きな資本を入れるだけの成長ができる土台ができたというワケだ。今話した穂が、これは洋服のような製造業。しかし、それが板板・切削加工であれば、「CADDi」となる。発注者と加工会社を紐付けるプラットフォームである。

4.任せるべきは任せて自らを効率化

 プラットフォームが色々できていることで、プラットフォームに「任せられることは任せる」。それが大事だと。大企業においては特に自前主義というか、全部自分でやりたがる会社が多い。だから、そこを強調するのが小野塚さんの主張である。

 ただし、任せるためには自分も変わらなきゃいけない。「我が社はこういうやり方だから」などと言っていたら、外のプラットフォームなど使いづらい。そこで、“プラットフォームを使うためのデジタルトランスフォーメーション”というのが大事だとしている。

関連記事:“DX”が社員を変えて会社を変えた グッディが掴んだ成功への順序 その舞台裏

 思うにデジタルを取り入れれば良いということでもない。むしろ今に相応しい仕組みに自分たちを適応させることの方に意義がある。

 プラットフォームは何かをやる際に平準化させて、利用者にそのコストと工数の軽減をもたらす。だから、利用する側はそれ相応の身の丈に合わせた成長ができて、事業に活路を見出す。どの会社もキャッシュが豊富にあるわけではないから、変化は理に敵っている。

自らが“プラットフォーム”になれる理由

1.ニトリとホームロジの関係性

 プラットフォームを利用しながら、自分の個性を出すということは理解できた。そうやって効率よく成長できたら、次に見据えるのは「自らがプラットプラットフォームになる」ということ。そこで例を挙げたのが、ニトリの子会社ホームロジである。

 実は、ホームロジは物流会社であり、過去、ずっとそれはニトリの仕事で100%を占めていたのだ。しかし、今は売上の5%が外販となった。将来的には30%まで伸ばすのが目標である。ここがみそである。話が細かくなるがついてきてほしい。

 もともとニトリは海上輸送のコンテナの調達量が日本一なのである。それだけ物量が大きい会社。それを回すために倉庫もトラックも自前で備えている。だから、そのインフラで空きスペースを「外販した」わけである。

 つまり、ベースカーゴとしてニトリがあるから投資ができる。空きスペースを提供するにしてもニトリのルールに則って運ぶという前提となるものの、自分たち向けで設備投資も終わっている。

 無論、それを他社に安く提供できる。この点を活かして、「自らがプラットフォームとなった」のである。ニトリから見るとそれがプロフィットセンターになったわけだ。

2.だからそうやって企業の幅を広げればいい

 ここで僕が例を挙げていいのかわからないが、小野塚さんに流通サービスの話をした。(すみません。流通サービスさん。)

 オルビスにおいては、物流会社として流通サービスを30年連携している。だからその物流会社も長期的視点を描ける。だから、その通販企業の為の物流設備に年商の約5%を投資しているわけだ。特定企業と長く関係性を築く利点ではないかと思う。

関連記事:オルビス 流通サービス AGV 導入で変貌 物流 環境と生産性

 この場合、それで現状、素晴らしいことなのだけど、企業としてさらに伸び代を考えるとすれば、今のニトリのように、オルビスをフックにして、自分たちがそのリソースでプラットフォームになれますよね?と。

 まさに、小野塚さんは大いにうなづく。確かに、今のような通販企業と物流会社の関係の場合、プラットフォームを必要としない強力なタッグが存在している。でも、そこで小野塚さんは「流通サービス自体にプラットフォーマーになってもらえばもっと広がりが生まれるかもしれない」とその選択肢を語るのである。

プラットフォームを利用し、プラットフォームになる

1.強みを標準サービスにして他に提供する

 つまり、企業によって何かしら特定の企業の痒い所に手が届く強みがある筈だということなのだ。それがそのまま、プラットフォームになれるということの裏返しである。

 そこで最初の話に戻ってくる。日本は割と自前主義であると。複数の会社からオファーが来たときにもその会社ごとにアジャストしようとなりがち。だけど、それをやめて「うちの標準サービスです」と言い切ってしまえばいい。そうやってプラットフォーマーになれるかどうかが企業の成長にとって重要な事だという。

 プラットフォームというのは、皆に向けてのサービスだ。ゆえに、そこで平準化を実現できるか。それが小野塚さんのいう「誰でもプラットフォーム時代」。日本はこの部分が苦手だけど、乗り越えなきゃいけない要素だと強調する所以である。企業側に自らがプラットフォーマーとなることで事業の拡大を見込む。そういう事業計画を組み立てられるか。そこにかかっている。

2.思えばShopifyとウォルマートだってそうだ

 思えば、Shopifyとウォルマートの関係性もそれに近い。ウォルマートはネットに知見がなかった。だが世界最大の小売であり、その上でShopifyを活用して物流環境も整備した。それはネット通販の拡大を意図してのことだ。

 ただ、今ではネットでの勢力を拡大してしまった。すると、今度は、その土壌に新たな「出品者」を求めているのだ。出品者というのがみそである。自分のインフラで物を売りませんか?と呼びかけている。あれ?これは、ライバルであるAmazonと同じ土壌に立っているではないかと。つまり「プラットフォーマーになっている」。

関連記事:Shopify ウォルマート 連携 Amazon への対抗策になる理由

 もっともAmazonはAmazonでもっと大きなプラットフォーマーになろうとしている。Amazonは、アメリカではAmazonのヘビーユーザーが多く存在する。だから、そのデータの蓄積により個々の所得すら把握している風である。だから「あなたのライフスタイルにあった保険はこれですよ?」ということも起こり始めている。

 この蓄積されたレコメンドこそが彼らの強みとなる。違うプラットフォーマーになるための足掛かりになって、他業種の脅威になりうる。

3.プラットフォーマーは脅威ではない

 その考え方は彼らの行動を見ればわかる。例えば、地元のスーパー。本来、彼らは「地元の人」の好むものを提供しているわけだ。それに対して進出するのが「Amazon fresh」である。

 今のAmazonではユーザーの個々のその「地場に密着している」とは言えないレベル感だろう。でも、Amazon fleshで徐々に浸透していけば、少なからず会員IDのデータが蓄積される。

 ここで生かされるのはレコメンドの精度であり、10年を想像してみよう。今はざっくりで提案がお客様にフィットしていなくても、その精度が上がっていくだろう。その時に、Amazon fleshは地元密着のスーパーと変わらぬ提供レベルでお客様に迫る。そんな事があるかもしれない。その時、スーパーの存在意義すら問われるようになるだろう。

4.自分たちも変わらなければいけない理由

 これがまた「Amazonの脅威」と話が一人歩きしそうである。だが、思い出してほしい。彼らも変わるが、自分たちの置かれている環境も変わっているという事を。だから、自分たちが変わらなければいけない。

 自らの存在意義を改めて定義し直す。プラットフォームを活用して、身の丈に合わせて投資をする。そうすることで、自らがプラットフォームとなるチャンスを模索するのだ。

 その第一歩として、今は自分に必要なプラットフォームの仕様に合わせるべく「社内の変革をするべき」という事なのである。ここに今のデジタルトランスフォーメーションの本質がある。

 僕は思った。これからは「プラットフォーム in プラットフォーム」の発想だと。僕らはプラットフォームを利用して成長し、プラットフォームとなることで、成長を担う。

 その為にはビジネスを変える勇気も覚悟も必要になるだろう。しかしながら、その一歩が、それに見合っただけの成長を、引き寄せてくれるに違いない。今まででは到底、その会社だけでは成し得なかったような。

 繰り返すが、これからは「プラットフォーム in プラットフォーム」の時代だ。さあ、あなたは変われるか。

 今日はこの辺で。

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