PLAZA、トモズ、軒並み意欲的に取り組むフェムテックの実態
どちらかと言えば、タブー視されがちな女性の健康。だからこそ、小売店もなるべく目立たないところに置いていたそれらの商品。でもしかし、時代は変わりつつあり、多様化も後押しして徐々に受け入れられている。フェムテック東京でのセミナーでは、トモズやPLAZAという小売店が軒並み、目立つ場所でそれらを設置し始めていることが明らかにされた。女性の多い売り場で、理にかなっているのは確かだが、その舞台裏は工夫と努力に溢れている。
・実は売り場が拡大しているフェムテック
トモズやPLAZAの話で共通して話しているのは、生理用品などは扱いが小さかったということ。当たり前に多くの女性が皆、一様に抱えている問題で、なのに我慢したり、覆い隠そうとする現実がある。
そんな現実を前にどこに課題を見出し、どう解決を見出したのだろう。
トモズが強調したのは、認知が広がっていないという現実。営業推進部長 小室 伊都子さんは、「そもそも売り場がそこに対して積極的であることを多くはまだ知らない。なので、幾ら小売店が意気込んでもそれが形にならない時期は数年、続いた」と言う。
その裾野を広げていくために、心がけたのはメディアとの連携。つまり、売ることはさることながら、メッセージ性を重んじたというわけである。振り返れば、小室さん自身、それを仕入れようと考えたきっかけは海外とのギャップである。
・タブーの意識をどう乗り越えるか
数年前から既に海外では当然にしてそれらが堂々と販売されていた。逆にタブー視されて、日の光の当たらないところで、売られている日本に、彼女は違和感すら感じた。まずは率先してトモズでそれらの品揃えを豊富にしていくことを意図したわけである。
つまり、売れるから売るのではなく、そこに確固たる彼らなりの主張があって、売ろうとしたわけである。そう考えると、売上が伸び悩んだ2年ほどは、その“所信表明”が鮮明ではなかったと振り返る。売ることに終始していた。
「店として」そういう課題解決を果たしたい。そんなメッセージなくして、この企画の前進はなく、認知の重要性を思うこととなり、YouTubeなどで発信していく。
・課題と共に認知を広げて売り場で受け止める
思いがけず、YouTubeでの発信は反響を得ることとなった。発信と認知の広がりとセットで商品を売っていくことで、新たなマーケットを切り拓こうという決意に至るわけだ。以降、トモズはこのフェムテック系商材については本格的にメディアとの連携を模索。
OZmallとの連携でそれが開花する。
編集の力を借りて自らの考えを言語化しつつ、読者に共感を促すことで、道が拓けた。それがあって初めて受け皿である店が必要となる。今度は、彼女たちなりに、その発信した内容を受けての棚の設計を行い、形にしていったのだという。
最近では、産経新聞社の手がける「metropolitana」というフリーペーパーとの連携も行う。面白いのは「国際男性デー」で敢えて仕掛けをする計画ということ。そこにもトモズがその課題について考えるシーンを考慮して、テーマ性を重要視して、まずはその裾野を地道に広げていこうという姿勢が見られる。だから、男性の抱える課題として、女性のそうした健康問題に目を向けてもらうことを着想する。お互いの性の理解を促す中で、フェムテックの価値を説くわけだ。
・売る側のコンテンツ意識
ここで分かるのは、売る側にもコンテンツの意識が大事であるということ。今は発信面での話だが、売り場もまた、メディアである。テーマを添えて、売り場を彩るコンテンツとして、フェムテック系の商材を手掛けて、市場に風穴を開けたのがPLAZAである。
商品の付加価値を高めて、いわゆる雑貨的な要素の強いお店。だからこそ、それらに対してのアプローチはできていなかたt。ただ、しかし元々商品企画の知見があった。それを強みと考え、やるならそこから徹底しよう。開発現場の根本から関わりはじめ、売り場も含め、その意識を醸成させた。
この大きな変化の立役者は、Nice to meet me!プロジェクトリーダー 中村 優希さん。遡ること、コロナ禍に入った頃・。多くのことが自粛された時、中村さんは気持ちが滅入って、あらゆることが手につかなった。いつもはInstagramを見て、色々な商品に胸を躍らせていた彼女も、この時ばかりは違っていた。だからこそ、彼女は、それで気付けた。それは何か。
心身ともに健康であることの大事さである。
・商品開発からのチャレンジ
いわば、PLAZAの商品は元気な人を胸を高鳴らせ続けてきた。でも、必ずしも人はそうじゃないPLAZAはその礎となる健康を支える商材にも焦点を当てよう。そこで、女性の健康にとって欠かせないのは、、、。そこで辿り着いたのが、フェムテックだった。多くの人が、抱えている悩みでありながら、それと向き合えていないことに気がついた。
参考記事:“生理”というタブーに 商品 で物申す ハヤカワ五味 の挑戦
そこで、雑貨と同じ感覚で、もっとポジティブな気持ちで手にしてもらおうと動き出す。
健康に直結するアイテムも提供して、その女性の悩みに応える根本的要因を解決すること。それもあた、PLAZAをもっと楽しんでもらえる要因になる。そう考えた末の決断。かくして彼女は、自らフェムテックに絡む商材を開発することを社内で提案する。
論より証拠。インパクトのある商材で、「The Week Sanitary Pad」と名付けられたのは、生理用ナプキン。驚かされるのは、そのデザイン。もはや表舞台の商品である。
・既成概念を打破してこそ、女性の幸せがある
こそこそ買うのではなく、ファッションのような感覚でカジュアルに購入していく。まるで雑貨のようなテイスト。そこがPLAZAのポリシーにも合致しており、一見暗い話題も、そんな風に開発サイドの工夫から吹き飛ばします。
彼らの強みである商品開発を軸にして、売り場構成を行うことに。従来の視点とは違ったその文化を創造していくわけである。PLAZAというお店にカラーがあり、それに沿った形でできた彼ららしい提案。結果、意外性のある商材の誕生となり、脚光を浴びることになった。
しかも先ほどの中村さんのように、ちゃんとポリシーが宿っている。それゆえにその考えは尊重されて、彼女は「SaniBuddy サニバディ サニタリーショーツ」の提案にも繋がる。
・店が意見を商品で表現して未来の扉は開く
カジュアルテイストでオシャレな生理用のインナー商品。大胆にも売り場のPOPに下着姿の女性を掲げた。それ自体、店のイメージにも繋がる。実際、中村さん自身、悩んだものの、決断に至ったのは、それで過去のイメージを一新させて、PLAZAから新しい風を起こすという強い意気込みの表れから。
PLAZAの楽しい商品群という括りは、時代の多様性を飲み込みながら、上手に消化した。今、まさにそうやって時代は変わっている。
トモズとPLAZAの話を通して、思うのはそのメッセージ。今、求められるのは店側の考えなのかもしれない。多様化が謳われる時代だからこそ、まだ掘り起こされていないテーマはありそうで、それが伸び代になりそう。商品へのリスペクトがあればこそ、テーマを添えて、小売店がコンテンツ化して、提案型へと変わっていくべきだろう。
今日はこの辺で。