1. HOME
  2. News
  3. メーカー談
  4. 独創的に「攻める」
  5. ブレンドに想いを込めて自分たちなりのコーヒー提案をSCENE FACTORY COFFEE ROASTERS

ブレンドに想いを込めて自分たちなりのコーヒー提案をSCENE FACTORY COFFEE ROASTERS

 考え方次第で、別にその道のプロでなくても商機が生まれるんだな。実は、それを僕は自らブレンドコーヒーを手がけるお店「SCENE FACTORY COFFEE ROASTERS」で学んだのである。僕が出会ったのは、アイトーンの代表取締役 篠田拓也さんで、面白い才能の持ち主だと思った。

時間を使って新たな出会いを作る

1.時間で楽しむブレンド珈琲

 まだ起業してそれほど、時を経ていないし、何よりコーヒーに深く携わってきたわけでもないのに、それは脚光を浴びていて、その理由は目の付け所である。写真を見ていただくとわかるだろうが、なぜかコーヒーに時間が書いてあるのだ。実は、この時間こそが彼が手がけるコーヒーの最大の付加価値である。

 例えば、9:00であれば、それをルーティーンで飲むお客様が多い。だから、そのブレンドは、飽きのこないバランスの取れた内容にする。

 12:30であれば、どうだろう。ランチ後なのですっきりとした華やかな香りが漂うブレンドをチョイスする。15:00の場合は、もう想像がつくだろうが、オヤツを連想してブレンドしている。わざと、ビターにしているのは、おやつと一緒に飲んでもらうことを意図している。

 それぞれの時間でのブレンドの中身は異なっていて、その時間の性質に合わせている。

2.コーヒーを一括りで捉えると見えてこない

 この着眼点の面白さは、どこにあるのか。つまり、コーヒーひとつとっても、実は、色々な味が存在するのに、多くの人はそれを堪能できていないという現実にある。知らず知らずに、コーヒーというものを一くくりで捉えて、同じものを飲んでいないだろうか。

 だから、コーヒーには色々な味わいがあることを知ってもらうきっかけに「時間」という要素を組み合わせたのだ。しかも、それが案外、ありそうでない。それは篠田さんが、その道の専門家としてコーヒーに携わっていなかったからと笑う。

 もしも、多くの専門家であれば、数多くのコーヒーからチョイスして、それを提案してしまう。もしも、あなたにはバランスのよいブレンドですね、と言われたら、おそらく、それがベストだと思って、飲み続けてしまうだろうと。

  つまり、消費者が選ぶべきなのに、オーナーが選んでいることに違和感を感じたわけだ。

 ならば、敢えて時間になぞらえ、提案すれば手に取ってもらいやすいというわけなのだ。この視点は、プロフェッショナルであればあるほど、気が付かない視点だから、敢えて、篠田さんが提案する意味があると考えたそうなのだ。

オリジナルでブレンドコーヒーを作れるキットも

1.自分のこだわりのブレンドが届く

 しかも、彼はそこにとどまらない。自宅で誰でも簡単にオリジナルのブレンドコーヒーが作れるキットも作ってしまった。箱で届くキットにはブレンドコーヒーを作るための全てが入っている。だから、必要なのはお湯とペンとカップだけ。購入すると、キットが届くので、コーヒーを混ぜて味見をする。

 その自分のこだわりで作ったブレンドレシピをwebから送信するのだ。すると、次から、その自分のブレンドで、送られてくるというわけである。そのパッケージには、オリジナルで感謝の言葉を入れたりするので、世界で唯一のコーヒーが届くわけである。リアルの商品を送る事で、体感する中身をセレクトするものの、一方で、その返事をウェブにする事でコストを抑えている。

 つまり、リアルとデジタルの強みを両方に取り入れながら、原価計算をして、全く新しいコーヒーの提案をもたらしているわけだ。

2.専門家とは違う土俵で勝負をする

 そもそも「なぜ、こんなことを思いつくの?」そう僕はたずねたのである。

 すると、ものづくりの人でもないことがわかった。実は、財務企画や経営コンサルをしていたのだという。でも、そこが活きていて、理系の部分と文系の部分が程よく調和している。商品を作る時に、原価計算をしないといけないけれど、売らなければいけないから感性が大事だと思うから。

 そして、コーヒーに出会ったのは、カフェをやるようになったから。それが運命的でもある。篠田さんが話していたのは「負けず嫌いなんです」と。他人のフンドシで取り組むというのが嫌だから、コンサルタント時代は実は苦しかったのだと。

 しかし、自分の商品を作って売るということは、それとは真逆。他人の商品を借りてきて、売ることができないから、大変だけど、実は、コンサルタントをやるよりも性に合っていると。

 コーヒーの専門家にはそれなりの意義がある。だから、同じ土俵で勝負する必要はない。そうではない視点でコーヒーを手がけたところに、価値がある。そこにはない独自の存在感は、この道何十年の専門家ではなくともファンは生まれた。これぞ、切り口の妙。今の時代にふさわしい提案の仕方だと思うのだ。

 これもまた、考え方次第なのである。別にその道のプロでなくても、アイデア次第で、商機が生まれ、その後、別の意味でちょっと違ったコーヒーでプロフェッショナルになればいいのだから。

 今日はこの辺で。

関連記事