シューズと日常の革命 ニューバランスが「GREY」という色に込めた情熱
恐らく、読者の全てが「靴」を履いて生活しているだろう。だけど、その靴自体が日々、進化しており、実はそれが僕らの生活様式すら変えている事にどれだけの人が気づいているだろう。東京・新宿駅に隣接する「NEWoMan」に、ニューバランスが「GREY」というコンセプトで新店舗を作った事を知って、僕は、そこで話を聞くうちに、そう思ったのである。
ニューバランス GREYの革命
1.見えないところで地道に進化しているシューズ
ニューバランスに限らず、靴というのはその存在が当然すぎて、お父さんの世代も、おばあさんの世代も、皆、同じものを着用していて、変化などなく、普遍的なものであるかのように思える。しかし、その考えは少し違っているのかもしれない。店を案内してくれたマーケティング部の小澤真琴さんから紹介されたシューズでまず最初にそれに気付かされた。
「このシューズの起源を辿れば、1982年当時、最新の『ランニング』シューズだったのですが、今やそれが進化して『日常で使われる』靴の一つへと変わっています。」
思わず「え?それでいうなら、今のランニングシューズはどうなるんですか?」と僕。
彼女は、スマホを片手にeコマースサイトを見せてくれて「今のランニングシューズはテクノロジーが進化しているので、見た目も全然、変わっています。より通気性が良くなっていたり、補強パーツ、ソールにおいても素材が大きく変化しています」と言って、確かに、今とは形状の異なるその姿を見せてくれた。
2.かつての最新は今の定番に
ここで、両者を紐づける要素として、色としてのグレーがある。実はシューズにおいて1970年代までは青や白というものが一般的。
その中で、ニューバランスは、当時それを街中で履くことも考え始め、それが当時としては画期的であったと思うが、それゆえ色も工夫が必要で、グレーが良いのではないかと着想してそれを反映させた。それが今、日常使いとしての土台を担うきっかけとなった。
勿論、最初の頃は、スポーツのイメージから、シューズでグレーを取り入れることに対しては異論も少なくなく、理由は簡単で「売れないだろう」と。ところが、その大方の予測を覆し、ヒットを掴むこととなったのだから、分からない。かくして「グレー」は今のニューバランスを発揮するシンボリックなカラーとなったのだ。
GREYに込められたライフスタイル提案
1.日常に変化をもたらしたグレーのシューズのように
確かに、よく日常、ニューバランスのシューズは他のシューズブランドと比べても、老若男女、履いているのをよく見かける。その日常ブランドとしても市民権を得るに至った原点がここにあって、その浸透があるから、今このタイミングで、その店に「GREY」というコンセプトで、新店舗を出したのはうなづける。
思えば、ニューバランスには直営店が日本国内に数多く点在するけど、その意味で、この店は他と明確に異なる性質を持っていると言って良い。僕は「ライフスタイル」と聞いて、世間で言われるありきたりなその言葉で、生活提案をするお店だとばかり思い込んでいたけど、そうではなく、彼らにとっては1カテゴリーだったわけだ。そう安易に考えた自分をちょっぴり反省した。
例えば、40年前のものよりも確かに、今のランニングシューズは進化しているけど、そのデザイン性などは、今にも受け入れられる要素がある。だから、そのままの形であったり復刻して、その時代ごと、履きやすさを尊重したシューズの日常提案は、ずっと続けてきた。いわば、その過去の蓄積とそこへのリスペクト、そしてライフスタイルという彼らの考える価値観とが親和性を持って、この店で形となる。
2. 日常靴の履き心地はここ数十年で進化している
ちなみに、先ほど紹介したシューズは、進化した「990」と言われている。つまり、遡ること82年当時、990という商品において渾身の力作を作り、1000%が最高の出来だとすれば、990点付けられると讃え、称したのだ。
それが、デザイン的にもファッションでも受け入れられて、何十年も続いており、直系の進化をしたのが先ほどのシューズ。今の新作もファーストカラーはやっぱりグレーで勝負して、受け入れられている。ちょっと比喩的に言うなら、今も昔も990点である。
こうして、普遍的な靴は、ただ「履ければ良いもの」では無くなったのだろう。それは、代々、アメリカやイギリス、その他、アジアで多くの職人にとってもその努力が時代を越えて報われ、それは真に履き心地という部分で、リピーターを生んでいてマーケットを拡大させて、そういう人にも良い循環を生んでいる。中には親子3代で、その工場で働くなんて声が聞こえる程で、ブランドの姿勢が真に様々な人を救っている。
3.シューズで日常を変えた
兎にも角にも、日常のアイテムとしての存在を勝ち得た。だからこそ、この新宿という都会のど真ん中で、しかも女性が多く集まるファッションの色彩が強い「NEWoMan」にこの店があっても少しも違和感がないということになって、この店の意義にもつながる。
「履いてみると、本当に気持ちがいいですよ」と小澤さんは言って、彼女自身、社員だからというわけでなく、本当に履き心地がいいから、冠婚葬祭の時以外は、全てニューバランスのシューズを着用しているとか。
店の隅には足型を計測する機械まであって、僕もそれでやってみたが、右と左のサイズが違っていて、どちらのサイズに合わせて、オーダーすればいいか、また足の幅が普通の人と比べて少し広めなのでそのタイプをチョイスするとか、という具合できめ細やか。それもいくら機械があっても商品がなければ意味はない。そこで思ったのは、一般での市民権を得たからこそ、更なる快適化を目指して、もっと商品を活かすためにこの店があるのかという事。
4.履けばわかる
これは、変な言い方になるけど、今までは足の方が靴に合わせていたのだ。だけど、ここでの体験を通して、靴の方が足に合わせていくことができれば、それは足に負担がかからない。故に、ストレスなく、また疲れを感じることも軽減できるから、彼らのやっていた事を今よりもっと最大化させて、日常の快適さに直結できるというわけである。
店のスタッフが丁寧に「お客様の足でいうと、、、」と指南してくれ、メールで送ってくれたのが下記だ。
逆に、リアルの価値も感じるし、そこに彼らの強みを更に伸ばす土壌があることに気付かされた。システムではないけど、自分の体のメンテナンスがてら、頻繁に足のサイズを測りに来ればいい。小澤さん曰く「朝か夜かでもその形状は変わるくらい繊細なもの」だから、ある一定期間をおいて来て、一番良いシューズが何かを把握できる機会を作っておくことは日常の充実へと繋がる。
それらの革命と挑戦をひっくるめて、一言で言えば、GREYということになる。シューズを日常に。そういう風にして、挑戦する姿勢と、そしてそれがもたらした人々の幸福感を今一度、このお店を通じて、伝えていくことは、大事なことだろう。
彼らのブランドに対する誇りを示すとともに、未来へ繋げていく上で、モチベーション高く、もっと優れた商品を作り出すために、この場所はお客様にとってもスタッフにとっても、大事な拠点となりそうだ。
今日はこの辺で