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さとふるの魂“冷凍倉庫“に ふるさと納税の未来

 これまで、ふるさと納税を物流に結びつけて考えることは無かった。けれど、最近はそれも違ってきた。さとふるが昨年から用意した物流倉庫に潜入した。それらは、生産者の想いとユーザーの利便性の両面を考えると大事な要素である。変わりゆく「ふるさと納税」の現状。それを物流の観点から追うことで、未来に必要なことも見えてきた。

ふるさと納税 で 倉庫 の必要性に未来を感じる

1.返礼品の質の高さを最大化する倉庫とは

 「へぇ結構、大きな倉庫なんですね」。

 都内某所にやってきた僕はその倉庫を見て、彼らの気合いの程を見たわけである。だが「ただ、ふるさと納税に特化した物流倉庫というのは前例にないので、試行錯誤の連続です」。さとふる COOの青木大介さんと物流事業推進室 梅田哲弥さんは、そう口を揃える。

 「これ、着た方がいいですよ」。オレンジ色のジャンパーを渡され、確かに倉庫に入ると、ヒヤっとした。「でも、これは序の口です」と梅田さんはニヤリ。倉庫の一階はこの様な感じ。十分なスペースを用意して、その真ん中で提携倉庫のスタッフが「返礼品」の出荷の準備をしている。

2.配送伝票の作業も彼らが請け負う

 「何をしているんですか?」。そう聞くと「一つ一つ、配送伝票を貼り付けているのです。基本的には、事業者の方には梱包して出荷する状態で、ここの倉庫に送ってもらう。それで一定期間保管されたものは、出荷のタイミングで、貼り付けます」と。

 「我々にとってはこれを目にすることも大事だなと思いました。ここから多くの事業者の想いを乗せて、寄付者の元へと届けている。当たり前のことですがこれだけの人の喜びに触れているんだなと。そう思うと身が引き締まる思いです。」青木さんは感慨深げにその様子を見ながら語る。「寒いけど、心はあたたまる場所ですね」そう言うと、「上手いこと言いますね」と笑った。

3.事業者からまとめて仕入れて保管する

 さて、スタッフの人達が伝票を貼り付けられた「返礼品」はカゴ車で積まれた。そして、壁側にある大きな扉のもとへと運ぶ。

 この大きな扉は、配送会社がトラックを横付けするためのもの。この写真の通りである。

 出荷の様子をみると「返礼品」を詰め込む手際の良さに驚いた。同時に、ここは事業者から集めた「返礼品」を入庫する拠点でもある。入庫の場合は、ここで倉庫の中に入れた後、三階の冷凍倉庫へと運ばれていく。

4.今は事業者を絞ることで入庫のコストを抑える

 ちなみに入庫にあたっては当然ながら、ここまでの輸送に関してのコストをどう抑えるかを考慮している。だから、比較的大きな事業者から声をかけている

 つまり、今や事業者によってはもうその出荷数が相当数あるのだ。

 考え方によれば、どこか別の場所でいくつかの事業者の商品を帳合することもできるだろう。だが、今はしていない。1事業者単位で見ても大型車などにまとめられるだけの分量となっているからだ。

 それをそのまま、ここに運んでこれて、それは倉庫を埋めるだけのそれなりの数である。同時に、そのまま、その数の出荷も見込めるというわけで、理にかなっている。あとは寄付者の要望に応える日時で出荷作業をここからしていくだけのことである。

 だから、未来のことで言えば、彼らの手配する配送車に複数の事業者が相乗りしてもらっていきたい。それで、集荷したものをこの倉庫に入れて、まとめて保管する。そのような流れに(今も少しずつやり始めてはいる)できれば、この倉庫を使う事業者の数は増える。そして、その規模感を大きくすれば、サービスの向上を果たすことができるわけである。

物流現場でも日々改善が進んでいる

1.さとふるも物流現場を知ることの大事さ

 さて話を戻して「お気づきになりますか?箱には赤や黒のテープがついているでしょう。」と梅田さん。

「事業者の現場ではわかっている様なことでも、我々倉庫のスタッフ側には見分けがつかないこともあります。だから、これも事業者の方に『カニ』のサイズをテープで判別できる様に、とお願いしたのです。そうすることで、作業効率が良くなりました。日夜、その事業者の方のやり方に合わせて、いかに迅速に取り組める様にするか。現場では我々も一緒になりそれを話し合っているのです」と続けた。なるほど。

 物流に詳しいとは言えない彼らだけに、それをプロの見地でサポートするのが委託先の倉庫。人員は彼らで確保できるよう調整。現場でどうあるべきかをプロの視点から話してもらいつつ、さとふるは事業者と話して、物流の状況に合わせて、効率化を図るわけだ。

2.繁忙期で知った生産性を高めることの重要性

 実際、今でこそスムーズに流れているが、昨年立ち上げ半年で12月の繁忙期を迎え、大変だったと振り返る。それこそ、荷捌きはどこでするか、伝票はどこに置くかなど、細部に渡る。その度に、社内と提携倉庫との調整は続いた。そういうトライアンドエラー一つ一つが地道に出荷数を増やす事、生産性を高くすることに寄与している。

 「最近、ネット通販では物流の重要性は高まっています。しかし『ふるさと納税』に特化して必要な物流環境を揃える企業は現時点では皆無です。まだ答えはない。だからこそ、我々がその先駆けとして自分たちの持っているリソースを活用してプロの意見を交えて、適切な環境を作ること。それは未来の『ふるさと納税』のマーケット自体にも意味をもたらす」。青木さんは自分たちの使命を強調した。

思えば今に始まった事ではない

1.物流とさとふるとの深い関係性

 そんなはなしをきくうち、僕は「さとふる」という会社に興味を抱いたきっかけを思い出した。ふるさと納税に関わる企業は数あれど、早くから配送の部分で負担を軽減しようとしていた。今に限らず、彼らは物流面では「先駆け」であったのだ。

 彼らは何をしたか。事業者が「返礼品」を梱包しておいておけば、それだけで完了するというスタイルである。要は、荷物を作り置きしておけば、受け取った伝票を貼り付けるだけで配送業者が勝手に持っていく。そうすれば、事業者は楽なのである。

 比較的、そうやって物流に対しての意識が高かった。だから今回の流れも、会社にとっては大きな挑戦で投資と言いながらも、社内の理解も早く自然なものであったと言える。

2.今はその物流で生産者の理想を叶える第二フェーズ

 いうまでもなく冷凍倉庫にチャレンジしたのは「返礼品」で冷凍配送の割合が比較的、多く占めるから。そこに大きな課題があった。

 元々冷凍系は配送コストも高く、全国各地でバラバラにやっていたのではその費用負担がかさむ。加えて、事業者側で出荷に関してのコントロールしづらい。それ故に、日付指定ができないこととなり、消費期限がある食品においてはそれ自体が寄付者の利便性を損ねることになると考えたのだ。

 そこで青木さんが辿り着いたのはこの倉庫で一旦、一括して預かり、そこから配送すれば、よいという結論だった。スケールメリットで一出荷に対してのコストが下がるのと、場所が固定されている分、配送日に関するコントロールをしやすくなるという狙いである。

 それ故、彼らの倉庫はまず冷凍が必要な「返礼品」から始めたということになる。それでは、三階の冷凍倉庫に向かうわけである。「こちらです!」

「うわー、寒い!耳が痛い!」。先ほどの梅田さんの「序の口」の意味がわかった。この三階にある倉庫の温度はマイナス21℃。夏においては外の気温が高いのでマイナス25℃にすることもあるとか。

3.さとふるの冷凍倉庫の中身

 梅田さん曰く「天井についているのが冷媒機(写真では上のクーラーのようなもの)。あそこから冷風が流れます。新しいだけあってその効きも良い。」とのこと。その施設の出来栄えに胸を張る。

 この冷媒機はこの三階の倉庫スペースの至る所に設置され、棚に置かれた「返礼品」の元を通って、冷やしてくれる。やや間隔を持たせて置かれているのは通気性を考慮してのことのようだ。

 この倉庫で保管する期間は受注予測に基づき、声がけしている関係もあって、比較的回転率は良い。特に、写真のような「おせち」など、年末は最も寄付が集まるタイミング。勿論、返礼品の種類にはよるが、早いもので2〜3日も経てば出荷するとか。ただ、この制度の特性上、時期によって受注の差が生まれやすく、そこでの効率化を図ることが目下の課題だとしている。

 また、現時点ではこの倉庫で扱う「返礼品」の数は70種類程度。多いというほどではないが、逆に言えば、70種類だけでも一種類単位それぞれに相当な出荷があるということの裏返し。それは先ほどの集荷に関しての話の通りである。

 「そういえば一階の伝票貼り付けももっと色々な商品があってもいいはず。なのに、一つの「返礼品」で相当な数をこなして、延々それを続けていた。一つのお礼品でもそれだけあるということは、、、」。そう話すと、二人はうなづく。それだけこのマーケット伸びているのである。

挑戦に堅実さものぞかせる

1.まとめる意味があるのは遠くの地域ほど

 そこには堅実さも兼ね備えている。実はここで扱う「返礼品」は現時点においては「北海道」と「九州」の二つの地域の事業者を中心にしているのだ。

 つまり、「ふるさと納税」のボリュームゾーンは、都市部の人が故郷の生産物を選ぶ関係上、首都圏に集中している。だから、首都圏から移動距離があるこの2エリアの事業者の「返礼品」から始めて、まずはそこでの配送コストに対して、テコ入れしようというわけである。

 彼らはその受注データで出荷数の多い事業者から優先して声がけをしているのは、先ほどの集荷の面もある。だが、事業者側の負担もそれだけ大きいからでもある。

 彼らは今はそういう事業者の返礼品で、倉庫内の生産性を高める土台を作る。その上でその相手先の事業者の幅を広げていく。それで、集荷の環境が揃ってくれば、彼らの意図するプラットフォームへといよいよ進化していくことになる。

2.倉庫を持たない事業者にとっての救い

 また、これは事業者にとっても、渡に船であった。例えばネット通販などをやっていない生産者も少なくなく物流に関しての知見がない。だから、倉庫に依頼する術がない。地方に物流拠点がないことによって、それらのマーケットの拡大に対処できない。そんな事態を招き始めているからである。

 だから結果的に、この倉庫はそういう悩みにも応えることになった。もはや冷凍に限ることなく、「ふるさと納税」そのものにそれ用の物流の必要性が高まっていることを実感したという。だからこそ、物流現場を理解し、それを反映したシステム構築にも積極的に投資をしていく。

 アナログとデジタルの両面からより生産性の高い物流が構築できれば、それこそ受注の幅に畏れる事なく、倉庫が巻き取って、事業者の価値を最大化できる。

ふるさと納税は次のフェーズへ

 マーケットのサイズを考えると、今の事業者側の環境もまた、進化することが余儀なくされている。その一丁目一番地がこの物流なのだ。ネット通販とはまた別のマーケットであり、事業者と言っても中には小さな生産者も少なくない。だから、ネット通販のように物流と表裏一体でビジネスにできているところが多いとは言えない。

 加えて、生産者自体も高齢化も進んでいるなどの問題もある。配送と保管に絡んで、どうやって寄付者の要望に対しての数と利便性をこなせるか。そこが、大きな問題となってくるに違いない。

 ふるさと納税のマーケットは、寄付額で見れば、2019年で約4800億円だったのが、2020年では約6700億円にも至っている。だから、当然と言えば当然であり、この物流現場の改善は急務である。

 さとふるはそこに着手する「先駆け」として、ここの環境整備の意義を強く語るのである。思えば、彼らの成長は物流の挑戦と並走していて、これからもそうである。この物流倉庫へのチャレンジでさらにエンジンをかけるのである。

 凍える「寒さ」のこの冷凍倉庫において、垣間見られる、生産者と寄付者への「温かさ」。あったかな想いに裏付けられた「ふるさと納税」の未来と本領発揮は実は今、始まったばかりなのかもしれない。

 今日はこの辺で。

参考:さとふるの記事

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