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AI を活かす ロビット の知恵 “外観検査”に悩む工場を救う

ロビット

 任天堂みたいですね。僕は出逢ったばかりの ロビット という会社の中身を聞いて、敬意を込め、そう伝えた。例えば、Nintendo Switchなどのハードはゲームの再生機ではない。2画面だったり、リモコンをコントローラーにしたり、形状にこだわるのは、ソフトの力をハードが最大限に引き出す為にある。この「 ロビット 」という会社も、ソフトウェア上はAIが機能して 工場 の 外観検査 の課題解決をしているのだけど AI を運用するその機械もまた、この会社が手作りで作成している。ソフトであるAIの可能性を自ら作るハードによって、さらに飛躍させているのだ。

 このロビットに訪れた理由は、僕自身の「ものづくり」への想いがきっかけである。日本において衰退している製造業が少しでも復活の狼煙を上げられないか。そう思っていたら、このロビットの菊楽善子さんが「ロビットこそ、ものづくりの現場を救っている」と胸を張って見せた。だから、やってきた。

素人目では難しく過酷さを伴う 工場の 外観検査

 ロビットもまた同じ気持ちで、ものづくりを救うべく、テクノロジーの活用を ロビットもまた同じ気持ちで、ものづくりを救うべく、テクノロジーの活用を実践している。では彼らは、工場における課題として何に注目したのか。それが外観検査である。一言で言うと、不良品を防ぐチェック。この日、ロビットの代表取締役 新井雅海さんが取り出し見せてくれたのは、車の部品である。

 傷があると言われ、端から端までそれを見た僕だが、到底見つからない。それもそのはず。その傷を探すのには、本来、製造工場にいる専門の外観検査の人たちが一品一品、目視をして、確認する。ところが、これが過酷で、強い光のもとだったり長時間、睨めっこなので、重労働なのである。

  車のような大きなものだけかと、思いきや、全くそんなことはない。どんな製造物にも等しく必要な工程である。「それもそうですよ」と言われたのが、テーブルに置かれた、プッシュ式の消毒用霧吹き。これも変形していないか、実は外観検査をしているのだそうだ。僕らが何気なく手にするものの殆どは「外観検査」を乗り越えてきて成立していることを、残念ながら僕らは知らないのだ。

AI(ソフト)の最大化はその機械と共にある

 ロビットは外観検査をAIにより瞬時に、正確に傷などを見分けするソリューション「TESRAY」を作っていて、それも見せてくれた。どう問題解決するのだろうか。まず車の部品を設置すると、専用の機械が、静かに光を当て、内臓カメラがそれを捉える。カメラの映像はモニターに映し出され、傷を検知するやいなや、その部分を四角で囲み、傷である可能性をパーセンテージで示してくれる。人力で何時間もかけていた作業がわずか数分*、かつ正確だ(*注釈:現在は数秒で可能)。

 そして驚きなのは、この外観検査のテクノロジー化は、ロビットをおいてできる会社が殆どない。それは、AIを持ってして、外観検査を為し得ることができるのは、彼らが手掛けた、土台となる機械があってこそ、だからなのだ。それは、車の部品では先ほどの機械で良いが、消毒液の容器、布物など、その素材が変われば、機械も臨機応変に変えていかなければならない。

 世の中にある殆どの企業は、恐らくAIを駆使するアイデアは思いついても、それを外観検査に適用できる元の機械までは作れない。そこを、ロビットは、自ら設計して一個一個の部品を買ってきて組み立てて、機械そのものを作る。勿論、部品は世の中にないものもあって、それは自ら設計して3Dプリンタで作ってもらい、完成へと導き、そこで初めてAIでのチェックができる。

ソフトを活かすハード。敬意をこめての「任天堂みたいですね」

ロビットの中身も工場だ
ロビットの中身も工場だ

 AIの可能性がものづくり工場の現場を救い、そして、それが実現すればAIの価値は高くなるわけである。その実現の為に、機械まで作ってやってのける彼らだからこそ、本当の意味での「ものづくり」は彼らなんじゃないかと思った。だから上と下の写真を見て分かる通り、一階フロアはまさに工場である。

 でも、まさに彼ら自身もまた生粋のメーカーなのである。これまで「mornin’plus」というデビュー作があり、それは日差しに反応して、家のカーテンを開けるという新しい切り口の目覚ましである(ヒットを掴み、それは現在も売れている)。その商品製作の過程で、多数重ねた工場との折衝が、彼らの気持ちを真に理解できる土台になっている。何より、その経験が今へと至る。自分たちが立ち上がり、AIを駆使して、工場のこの課題の解決に尽力することにこそ、社会的意義があると思ったのだ。

 そして、このことを通して、工場は、人間の発想を礎とする伝統は受け継ぎつつ、その外側にある環境を、今にふさわしい工場のあり方に転換するべきではないかと思った。現に、先ほどの外観検査において、もし人力でやってミスをした場合、数百万円に及ぶ返品が生まれることもある事から、人件費の置き換え、それらのリスクヘッジと位置付け、事業の根本的見直しを図って、多少なりとも金額が高くとも、彼らの機械を導入している工場は増えているという。ものづくりを復活させるには、今に相応しい転換が必要なのだ。

 さて、ここまで来れば、冒頭、僕が「任天堂みたいですね」と敬意を込めて言ったことが、これで実感いただけただろうか。どんなにAIが優れていようとも、そのAIを活かすデバイスがなければ、宝の持ち腐れなのである。

 つまり、この会社のTESRAYはソリューションであると書いたが、AIを含めたソフトとハードの両面が伴って、初めてそのソリューションとしての役目を最大化させるのである。

ここで聞いた話は、全て彼らのテクノロジーへの信頼と、ものづくりの愛が為せる技である。日本の未来は、明るい。志高きエンジニアとものづくりの工場がある限り。日本に誇りを持とう。

 今日はこの辺で。

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