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「こころ」を包み続けて137年──マルアイがくれた、ふせん一枚の魔法

 文具女子博の賑やかなブースの中で、ふと手に取った一枚の付箋。「おつかれさま」「ほんのきもち」──白い紙に、赤い水引のモチーフが静かに描かれていた。それは、“こころふせん”という、少し照れくさくて、でもとびきり温かいコミュニケーションツール。

 どこか懐かしく、でもちゃんと今っぽいその佇まいの奥には、137年の歴史を持つ“紙の老舗”の物語があった。

1. 和紙の行商から始まった、“こころ”の物語

 1888年(明治21年)、創業者・村松富吉が、地元の手漉き和紙を仕入れて行商したところから、マルアイの物語は始まる。紙とともに、気持ちを運ぶ仕事。それはやがて、封筒や祝儀袋、包装資材へと進化し、時代の節目では、軍需工場として風船爆弾の風船を作ったこともあった 。

 けれど一貫して変わらなかったのは、「紙に想いをのせる」姿勢。だからこそ今も、マルアイの製品には、どこかぬくもりが宿っているのである。

2. のし袋という、気持ちのかたち

 のし袋やポチ袋は、単なる“紙”ではなく、感謝や祝福、労いの「気持ちそのもの」を包む、日本独自の文化だと思う。その中で、マルアイは戦後まもない1945年から、日用紙製品の製造をスタート。高度経済成長期には、印刷機や製袋機を整備し、全国に販路を広げたという。

 そして、昭和の終わり──マルアイは「こころコミュニケーション」というコーポレートステートメントを掲げる。紙が果たす役割を、“心の伝達手段”として、もう一度見つめ直したのだ。

 最初はそこまで知らずに、ただブースで接したスタッフの方々が、どこか懐かしくて親しみやすくて。「この空気感はどこから来るんだろう?」と気になって会社の歴史を調べてみたら、そこにちゃんと“言葉”として書いてあった。──あぁ、なるほど、と妙に腑に落ちた瞬間だった。

3. 伝統がちいさく、かわいく、身近になる

 137年の歴史を持つマルアイが、令和の今、Z世代の好奇心と感性に寄り添おうとしている。それが、ポチ袋の「ミニ化」や、「こころふせん」の誕生という、遊び心ある挑戦である。

 大入り袋などは、本来フォーマルな場面で使うもの。

 でも、それをミニサイズにすることで、「500円玉を包むお小遣い袋」になったり、「お菓子に添える一言ツール」になったり──

 昭和の「贈答文化」は、令和の「カジュアルギフト」へ。“紙の伝統”が、ちょっと笑えて、ちょっとグッとくるものに変わっていく。

4. 「こころふせん」が生まれた理由

 2012年、マルアイはついに「こころふせん」を発売 。そのひとことひとことには、ちゃんと相手を思いやる気持ちが込められている。

 「うまい棒に“ありがとう”を貼ると、ちょっと贈り物っぽくなるんです」

 そう語る広報宣伝課の安村和子さんや宮﨑千里さんの言葉が、忘れられなかった。ギャグのようでいて、実は“気持ちの翻訳”になっている、そんな不思議な付箋。

 紙と人の距離が変わっても、「心を伝える」という本質は変わらない。だからこそ、ふせんは、今日もそっと誰かの背中を押している。

5. そして今、ふせんを添えて「ありがとう」を贈る

 会場を離れるとき、宮崎さんが、お菓子にそっと付箋を貼って手渡してくれた。「感謝」と書かれた“こころふせん”に、手書きで「マルアイ 宮崎」と添えられている。

 見慣れたお菓子が、それだけで“あなただけの贈り物”に変わっていた。

 実際、こういうのって──いつ、どこで、誰に渡そうって考える時間が、もうワクワクするんだよね。その瞬間から、素敵さも、人間らしさも、もう始まってる。ほら、もう単なる付箋じゃないのさ。これが、大事だと思う。ここが文具の発掘すべき可能性でもある。

 帰り道、カバンの中のふせんを見ながら、心がふわりと温かくなった。

 文具は書くためなどの必需品としてだけにとどめておくのは勿体無い。こうやってこの会社の真心が進化して、文化を彩る。伝統は、ただ受け継がれるものじゃない。いま、あなたの手のひらで“遊び心”に変わる。そう思ったとき、「マルアイ」って、愛が丸く収まるってことなんだなって、ふと納得した。

 今日はこの辺で。

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