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渋谷は“空でつながる都市”になる──常識を超える立体再開発、そのロマンを歩く

 渋谷駅の上──地上ではなく、空中に伸びていく通路。それが、渋谷スカイウェイ。都市の喧騒を抜け、未来に足を踏み入れたような感覚。「これが都市の進化なのかもしれない」と、思わず息を呑んだ。先日、東急が開催した渋谷再開発の記者説明会に足を運んだ僕は、その光景を自分の目で確かめたくなり、現地を歩いた。

 この文章は、その記者会見での情報と、実際に街を歩いた実感を交えて、“未来の渋谷”を歩く僕なりの視点で語る記録である。

【1】常識を超える都市再開発、その最前線を歩く

 成功するかどうかは、まだわからない。でも一つ確かなのは──これは、僕らの常識をはるかに超えるスケールで進む「渋谷の再開発」だということ。まず下は現在の渋谷駅である。

提供:東急株式会社・東急不動産株式会社

 これが変貌する。どれほどの経済効果を生むのか。それを検証していく上で、このプロジェクトは間違いなく“楽しみ”な存在だ。

 印象的だったのは、駅を中心に、その周囲の施設までが一体となり、まるで巨大な屋根のように街を包み込んでいること。そしてその構造が、端から端までを結ぶ“動線”としても機能していることだ。

 今回の記事では、渋谷という街がどう変わっていこうとしているのかを、できる限りわかりやすく紐解いていきたい。

【2】渋谷スクランブルスクエアはまだ完成していない

 まず、「渋谷スクランブルスクエア」は、まだ完成形ではない。

 現在あるのは「東棟」のみで、今後はJR山手線・埼京線などの線路の上をまたぐ形で、「中央棟」が建設される予定。この中央棟は、図の緑の縦長エリアに相当し、ちょうどJRの駅と線路を“すっぽり包み込む”ような構造になる。

 こちらは、スクランブル交差点からハチ公広場方面を見た現在の完成予想図だ。

提供:渋谷駅街区共同ビル事業者

 画面左側にある高層ビルが、すでに完成している「東棟」。そして、その右隣、JRの線路と駅をまたぐように建つのが「中央棟」、さらにその右側に計画されているのが「西棟」である。

 もう少し寄ってみると、3棟が横一列に並んだ高層ビル群のように見える。

提供・東急

 こちらの画像は、その“中央棟”部分を上から見下ろした完成イメージである。

 画面右側にある建物が「中央棟」、そのさらに右に見えるのが「西棟」にあたる。この中央棟の前面──つまり原宿寄りの先頭車両の真上は、3〜4階層の吹き抜け構造になっており、高層ビルではなく広場として整備される。

 この空間は、駅を利用する人々が自然と回遊しやすいように、開放感のある低層設計が採用されている。

 このように、東棟・中央棟・西棟は一列に並んでいるが、中央棟だけが“線路の上に建つ”という特殊な構造であるため、他の棟と異なり、高層化せず“抜け”をつくることで街の流れを生み出す工夫がなされている。

 だから、東棟と西棟とのタッチポイントとなり、奥にあるSHIBUYA SAKURA STAGEへもアクセスできるようになっている。

【3】ハチ公前も再設計され、“立体動線”の要に

 そして、この低層設計の“広場”と接続されるのが、言わずと知れた「ハチ公広場」である。

 実はそのハチ公像のあるエリアには、新たに大きな階段とエスカレーターが整備される予定で、そこから上がることで、広場(中央棟3〜4階)へとスムーズにアクセスできる構造になる。

 この階段は、「渋谷マークシティ」の横手に接続される設計となっており、従来の平面的な駅前空間から一転、立体的な回遊動線が生まれることになる。

【4】西口アーバン・コア」から広がる、もうひとつの渋谷

そして、階段を上がった先に広がるのが、この「西口アーバン・コア」の空間である。

 画像の奥には、これまで紹介してきた3つのスクランブルスクエアの建物(東棟・中央棟・西棟)が並ぶ姿が確認できる。自ずと手前の広場は、各方向へとつながる「都市の中継地点」のような場所になるわけだ。

 従来のような一方向の導線ではなく、立体的に交差しながら複数の目的地へアクセスできる“渋谷の交差点のもうひとつの顔”──それがこの空間の持つ意味なのである。

 ちなみに、上の写真で少し高い位置にある通路がある。実はこの通路のすぐ横を、銀座線の車庫へ向かう線路が走っている。その線路の高さを確保するため、通路も少し高い位置に設けられているというわけだ。つまり、銀座線の運行ルートを確保しつつ、その下を人が通れるようにした結果、この立体的な高さになっているというわけである。

 その通路の下をくぐり、さらにもう一段階上に階段をのぼると──

 ちょうど写真の中央、奥の方に見える緑色の横断幕。そう、そこがJR渋谷駅の改札口。ちなみに、左側の黄色の横断幕は銀座線の改札口である。

【5】ヒカリエと宮益坂、東側の空中都市

 先ほど紹介したJR改札のある中央棟3階から、さらに右側の階段を上ると──

 もうひとつ上のフロアへ導かれ、広場に遭遇する。

 そこには、銀座線の屋根を跨ぐように設けられた歩行者デッキが整備され、その先に見えてくるのが「渋谷ヒカリエ」へと続く「東口4階 スカイウェイ」である。

提供:渋谷駅街区共同ビル事業者

 このスカイウェイを渡ることで、「スクランブルスクエア」から「ヒカリエ」、さらに新施設「渋谷アクシュ」を経て、「宮益坂交差点」エリアまで──すべてがワンフロアで地続きにつながる都市導線となる。

提供:渋谷駅街区共同ビル事業者

 とりわけ注目すべきは、その宮益坂エリアにおいても“空中の交差点”が構想されている点だ。

 現在「りそな銀行」が建つ場所には地上7階建ての開放的な商業施設が、向かいの「b8ta(ベータ)」付近には33階建ての高層複合ビルが建設予定であり、両者は上空通路で一体化される設計となっている。

提供:宮益坂地区市街地再開発組合

 つまり、渋谷の西側(スクランブル交差点)と東側(宮益坂交差点)という“ふたつの交差点”が、空中で結ばれようとしているのだ。

【6】増殖する都市──渋谷は“ひとつの駅”ではない

 ここまでくるともはや、渋谷という街は“ひとつの駅”ではない。「ハチ公前」から始まった動線は、「中央棟」を経て「東口スカイウェイ」、そして「宮益坂」や「新南エリア」まで広がっていく。

 南側では、渋谷アクシュから「ヒカリエ」、そして宮益坂の新施設群へとつながり、北側・西側では「マークシティ」や「道玄坂」方面へと回遊できる。空中回廊が街のあらゆる場所を“等距離化”しつつある

 特筆すべきは、渋谷特有の高低差を意識せず、まるで平地のように移動できるという点だ。

 これは単なるバリアフリー化ではない。坂・段差・雑踏──渋谷の“歩きづらさ”が魅力でもあった街を、今、都市構造の力で滑らかに再設計しているのである。

【7】都市を編み直す──この構造がもたらす価値

 そして、ここまでの再開発がもたらす最大の価値は、都市のブランド力を一段上げる“器”の変化だと僕は考えている。

 駅と直結した商業施設やオフィスが増えることで、企業にとっては渋谷駅前にオフィスがある=ブランドになる。グローバルビジネスとトレンド発信が交差する街・渋谷のポテンシャルは、さらに高まっていくだろう。

 ただ、冒頭でも触れたように、このプロジェクトが最終的に成功するかどうかは、まだ誰にもわからない。だが、他の都市が“部分最適”にとどまるなか、渋谷は「都市全体をひとつの構造体として再構築しようとしている」

 僕はそこに、“都市を編み直すロマン”を感じている。

 今日はこの辺で。

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