楽天市場で成功するための教科書:運営代行の視点から見たその活用と顧客体験戦略
運営代行とは何だろうか?商品の登録や発送といった実務を代行するだけのサービス。そう捉える人もいるかもしれない。しかし、それは経営者が「顧客体験の向上」に集中できる環境を作る為、必要な存在だ。ボトルシップ代表取締役の佐山陽介さんは、そうやって、運営代行の本質を語り、経営者がどれだけ「考える時間」を持つべきかを強調する。
本記事では、佐山さんの運営代行での姿勢を元に、楽天市場で成果を上げるための戦略を、初心者にもわかりやすく解説してみたい。運営代行の活用の仕方に始まり、顧客体験の向上、新規参入のポイント。そしてストーリーの力まで、明日から使えるヒントを散りばめた。
第1章: 経営者が考える時間を持つことの意味
彼は元々「楽天市場」でECコンサルタントとして活躍した経験があり、特に海外企業が日本市場で売上を上げる、という逆転の発想で、ボトルシップという会社を立ち上げた。つまり、楽天市場をはじめとする運営代行の知見が背景にあり、それを基に「運営代行とは何か?」という本質を探りつつ、楽天市場での成功法則について聞くことにしたわけだ。
先に運営代行について説明しておくと、こうなる。
・運営代行とは
運営代行とは、特定の業務を外部の専門業者に委託するサービスで、特にネットショップでは、商品登録や在庫管理、顧客対応、マーケティングなどを代行する。これにより、企業はリソースを節約し、コア業務に集中できる。料金体系は「固定月額型」「成果報酬型」「複合型」があり、月額1万~10万円や売上の5~10%程度が一般的。効率化やコスト削減などの利点がある一方、運営助言の不足やランニングコストが負担になる可能性もあり、業者選びと契約内容の確認が重要である。
教科書的な理解をするなら、上記の通り。だが、もっと本質的にどういう場面に必要とされるというのだろう。
「経営者は作業に追われてはいけない。本来すべきは、顧客体験をどう向上させるかを考えることだ。」
これは、佐山さんが最も共感する村井祐之さん(お酒のビッグボス)の言葉である。
佐山さんが、運営代行の本質を語るとき、それを踏まえて、焦点を当てるのは「経営者が考える時間を確保すること」だとか。
ともすれば、受注や出荷などの対応をしてしまいがちである。でも、それで時間を埋めてしまうことは実は会社にとって死活問題となる。
例えば、お酒の話が出たので、楽天市場でビールを販売するとしよう。最初こそ、単なるケース販売かもしれない。だが、そこから広げる努力は経営者の仕事である。つまり、そこに留まらず、お客様がウィスキーを好んでいるとすれば、「ウイスキーに炭酸水をセット」したアソート販売を行う。そうやって、ハイボールの提案をして、自らの顧客に合わせた提案を実現させていく。
第2章: リピート顧客を育てる戦略の重要性
こうした仕組みを設計することこそ、事業においては大事だ。
先日、彼が知り合った「ピカイチ野菜くん」店長、國末幸太郎さんの話題もそうだった。同店は人参を販売していて、最初は、単なる人参販売から始まったのかもしれない。けれど、それを、スムージーとのセット販売などを通して、健康ジュースの提案へと発展させた。彼はいたく感銘を受けたという。
顧客体験を向上させることで、客単価を上げ、継続顧客を生み出す土台を作った。商品単体に目が行きがちなのを、顧客との向き合い方から逆算し、提案の幅を広げていく。そこには個々の“ストーリー”が存在する。それを考えられるかが店にとっての転換点と言える。
つまり、運営代行は、こうした経営者の時間を生み出すための基盤となる。
では、次に「楽天市場」で成功する鍵について尋ねてみると「リピート顧客」を意識することを挙げた。ここでも“ストーリー”というキーワードが出てきた。要するに、一度の購入で終わらせるのではなく、継続的な購入へと繋げる。そのための個々の“ストーリー”を作ることが必要なのだと説く。
第3章: 楽天市場の特徴
実は、継続へと繋がる点で欠かせないのが、楽天市場では、セールの数々だ。
セールが継続的な部分での攻略になる?そう思われる方もいるだろうが、ここが彼の理論の核心であり、ここを読み間違えると、楽天市場というフィールドで脱落することを意味する。
またまたビールを例に挙げて考えてみよう。
スーパーSALEは、大量に顧客リストを獲得するためのもの。語弊を恐れずいうなら、まるで網で取り囲み、漁獲するようである。そこから集まった顧客をどうしていくか。ここが本質的議論の核心だ。
だから、これをその後に続く投資として、採算度外視でやる店舗すらある。ゆえに、よくセールに主力商品を値下げして、売上の軸にしてしまって、退店せざるを得なくなる店舗が後を絶たない。
でも、本当の勝負は、父の日などである。各々それは違うわけだ。つまり、それを取り返せる「適切な粗利」で商品を販売する機会をうかがいつつ、大量に獲得する。そして、セール時、獲得したお客様に勝負時、購入してもらえるかが試金石となる。
要するに、年間通して俯瞰して戦略を立て、利益を上げる構造が大事。それこそが店の個性を重んじる、楽天市場ならではの成功モデルを生み出すわけである。
佐山さんは、ここで大事なのは経営者の意思決定だと説き、「リピート顧客の獲得こそ、経営者の戦略性が問われる場面」という。顧客を理解し、全体を俯瞰した経営者の判断が、その後の店の成長を左右するのである。
第4章: 初心者が楽天市場に参入するための基本戦略
では、楽天市場への新規参入を考える初心者にとって、まず意識すべきは何か。
「ニッチ市場を見つけること」と佐山さん。楽天市場は、店舗の個性を重んじている。それは、楽天市場に集まる多くの店舗との比較の中で際立たせることを意味する。その本質に立ち返れば、いかに競合が少なく、自社の強みを活かせる市場を狙えるか。それが大事である。
とはいえ、全く未知なものを出すわけではない。知恵次第である。自分自身の持っている商材で、ニッチを生み出せるか。だから、戦略として「訳あり商品」や「大容量パッケージ」というアイデアが有効となる。
味は遜色ないのに形崩れなど、店頭に出せない良質なもの。でも、敢えて特別感を出す切り口を提案することで、ニッチな領域をとりに行く。同時に価格での差別化要因を提示して、長期を見据えた展開と掛け合わせて、展開するわけだ。それは店としての盤石な地位を取りに行く一歩となる。
今ではワケあり商品などは、当然の戦略となった。けど、この着想に至る、何気ない視点の切り替えに着目すべき。通り一辺倒では、通用しない。だから考える時間が大事だという先ほどの話になる。
佐山さんが関わったお店では「シナモンをお風呂に入れる」という視点で販売する発想もあった。
想定外のニッチな使い方はレビューをヒントにしたものだった。当然、お風呂に入れるのだから、大容量での提案に繋げられ、客単価の向上に寄与。それでいて、自らの個性を発揮しているわけだ。
第5章: 運営代行が気づかせてくれたPCとアプリの連携戦略
運営代行が代わってやることで、経営者が、戦略設計に時間を割き、発想に集中する。その意味は経営者なら全体が見えていることで、最大化されるからだ。特に仕入れ商材などでは仕入れ値も頭に入っている。
だから、大容量の話で言えば、仕入れ先などの検討や交渉にも頭が働く。ニッチだったりするのは、その結果論であり、そういう組織体制を作ることに意義がある。
一方で、ボトルシップもまた、運営代行をルーチンワークにさせない工夫をしている。
経営者がひらめくヒントは、現場にあるから。日常の業務の中での気づきを、対話の機会を増やし、徹底的に話し合うことで実績に繋げるわけだ。
それは商品の切り口に限らない。PCとアプリの購買データを分析し、顧客の行動を見極めることで、戦略の最適化を行なった事例がある。これは、アパレル企業の話だが、アプリ経由の購入が多く、その為、アプリに注力すべきではという議論が出た。確かに、それが正解のように思えた。
だが、佐山さんのチームは違う結論を導き出した。
分析の結果、実は、PC経由のアクセスが多く、商品がお気に入りに登録されるのはPCが中心。一方、楽天市場のアプリではポイント還元率が高いという背景がある。そのため、顧客は移動時間に、アプリで購入を完了させるケースが多いことが判明したのだ。
つまり、このデータを元に、PCサイトを改善したところ、アプリでの購入数も増加するという成果を得ることとなった。こうした分析と施策の連携が、運営代行の真価を発揮する場面であろう。
第6章: ストーリーが宿る細部:顧客体験をさらに高めるために
。。とまあ、色々話したが、結果、重要なのは「人間味のある施策」を取り入れること。
なぜなら、それこそが楽天市場で成功の鍵を握る「継続顧客」を生むからである。継続顧客が増えれば、店舗は仮説と検証の材料を手に入れ、それをもとにさらなる成長を実現していける。
たとえば、「訳あり商品」や「大容量パッケージ」の成功事例も、きっかけに過ぎない。
顧客がその商品に愛着を持たなければ、リピート購入には繋がらないからだ。そこも、経営者の考えるストーリーが大事。一方で、丁寧な顧客対応やフォローアップといった、運営代行によるサポートも意義を持つのだろう。
だからといって、僕が「運営代行を使え」と推奨するつもりはない(佐山さん、気を悪くしないでね)。ただ、店舗が持つポテンシャルを最大限に引き出すには、そのマーケットを深く理解し、経営者が熟慮する環境を整える必要がある。それをわからず“運営代行”しても意味はない。その本質を伝えたいのである。
楽天市場は、単なる商品を販売する場ではない。
顧客体験を中心に据えた戦略こそが肝心である。経営者は商品と顧客を繋ぐ「ストーリー」を構築できるはずだ。こうした本質的な理解を踏まえて、店舗はより輝ける運営を目指してほしい。その挑戦が成功に繋がることを、心から願っている。
今日はこの辺で。
追伸:運営代行を通して、対話を重視することがボトルシップのポリシー。だから僕らのオフ会でも、対話の機会を率先して作り、分け隔てなく談笑する姿が印象的だった。感謝。