コツコツ精進、この出会いが花咲く時を迎えるまで 楽天アフィリエイト「マッチングイベント」潜入
消費者向けのリアルイベントとは違う気づきと熱狂があった。楽天グループが開催した「アフィリエイトマッチングイベント」での事である。ここは、楽天市場に出店する店舗とアフィリエイトパートナーが直接出会い、その商品を紹介してもらう機会を創出する場である。店側の本気度が高く、知恵の使い所がリアルイベントとは少々異なる。そこに戦略としての面白さが垣間見られたのである。
アフィリエイトとは
釈迦に説法になるかもしれないが、アフィリエイトとは、何か。ウェブサイトやSNSなどを運営する個人など(アフィリエイター)が、他の企業の商品やサービスを紹介し、その成果に応じて報酬を得る仕組みのことである。
具体的には、アフィリエイターがブログやSNSなどで企業の商品やサービスを紹介。その紹介リンクを通じて商品が購入されたり、サービスに申し込みがあれば、アフィリエイターに報酬が支払われる。
報酬の料率は、楽天市場ではジャンルごと上限を差し示し、それに基づき、店が決めるのだ。
楽天市場「店舗」の未来を拓くリアルな出会い
さて、このイベントについて、である。最大の特徴は、店舗がアフィリエイトパートナーと直接出会えることにある。
普段はオンライン上でしか関わることのないパートナーと店舗。それらが実際に顔を合わせて話す。そうすることで、商品に対する理解が一層深まり、プロモーションに活かしやすくなるわけだ。それがこのイベントの趣旨である。
その為に、各店舗は同イベントで、自身のブースを設ける。そして、商品を実際に試せる場やクーポンを提供する。それをきっかけに、それらのパートナーとより深く、体験を通じてその魅力を伝えられる。
今回で4回目の開催。過去最大の規模で行われ、72店舗が参加。500名を超えるアフィリエイターが東京の二子玉川にある楽天社屋に集まったのである。
初回を思えば40店舗、75名だった。その規模が拡大していることが、このイベントの成功を物語っているといえよう。最初はファッションが中心。それが、いまや家電やフードなど多ジャンルからの参加もあり、アフィリエイターにとっては多様な選択肢が提供された。
リアル体験でわかる商品の魅力!
単なる商品説明に留まらない。実際に手に取って体験できる場が用意されている。何気ない事だが、それがイベントでの特筆すべきポイント。特に、フードジャンルの店舗では試食やサンプリングが行われ、アフィリエイターたちはその場で商品の味や質を確認できる。
参加者からは「ネットでは気づかなかった商品が、実際に見て試してみると魅力的だった」という声が多く寄せられているとか。
担当をしている、楽天グループ 堀江弥生さんと齊田美和さんは語る。リアルな体験が商品の魅力を引き出すことに大きく貢献していることが伺えるわけだ。
彼女らは、参加者からのフィードバックをもとに、イベントとしての完成度を高める。例えば、前回のイベントで要望が多かった「フォトブースやバルーンの設置」など、SNSでのシェアがしやすくなる工夫が今回は取り入れられた。
また、試食や試供品の提供が拡充され、参加者がより深く商品を体験できるよう、工夫を施す。これにより、参加者の満足度は向上。リピーターも増えているとか。では、具体的に出店した店舗の声にも耳を傾けてみる事にしよう。
韓国の味を届けるデサンジャパンの取り組み
僕がまず一番最初に、着目したのはデサンジャパン。なぜかって?その担当者が、タコの帽子をかぶって、全力アピールしていたから。寧ろ、気にならない方がおかしい。
デサンジャパンは、韓国の総合食品メーカーの日本法人。楽天市場で主に韓国食品を販売している。彼らが強調していたのは、韓国の食品文化をより多くの人に知ってもらうための活動だということ。
馴染みのある韓国商材から、見慣れぬものまで幅広く並べ、楽天市場を通して、文化を伝えていく、その一環としてこのお店は、重要な役割を果たしている。
の 中でも人気の商品は「宗家(チョンカ)キムチ」。韓国国内でシェアNo.1のこのキムチは、日本のスーパーでも多く見かける定番商品であるが、彼ら味の拘りはピカイチ。
さらに、楽天市場では冷凍の「キムチキンパ」や、その他韓国の食材を提供している。ちなみに、「キムチキンパ」とはコチュジャンを混ぜたごはんでチーズを巻いたアレンジキンパのことである。
基本的には、デサンジャパンは、主に30代から40代の女性や家族層をターゲットに商品を展開。最近では物価の上昇を受けて、大容量の商品を提供し、より多くの韓国食品をお得に楽しんでもらえるよう工夫しているとか。
インフルエンサーの力を活用の仕方
大事なのはここから。彼らは、このイベントをどう活用しているのか。なるほどと思ったのは、楽天スーパーSALEの時期についてその真価が発揮されると話していた事。
つまり、このイベントの直後に商品を買ったとしても、アフィリエイターの行動はまだ起こらない。
ブログやSNSを通じて商品を紹介するのが、アフィリエイターの役目。ただ、消費者に向けて情報を発信する、その成果を大きなものにしたいわけだ。だから、紹介の記事は、セール期間中に掲載するのである。それにより、爆発的な売上を期待できる。
それに加え、最近は、発信が多様化している。彼ら曰く、楽天ROOMを活用して、新しい商品や知られていない韓国食品を紹介してもらえて、それが文化的な雰囲気を伝えるのに奏功している。つまり、媒体は多種多様で、あらゆる形で商品の認知度を高めていき、成果に繋げているのだ。
それで思ったのだ。そうか。このイベントはお店にとって“種まき”なのだ。
ここに繋げるために、デサンジャパンはイベント参加者に対してクーポンを発行。さらにサンプルを持ち帰ってもらう。
買ってもらうことこそ、商品の実感が得られるし、馴染みのないものは、サンプルによって商品を体験してもらう。こうやって、消費者の関心を引き、後の紹介につなげる狙いである。
ココモモにとっての思わぬ収穫
続いて話を聞いたのは、「ココモモ」。同店は20代から40代の女性がターゲット。主に、レディースファッションを展開する。
彼らは2017年から楽天市場に出店。当初こそ、幅広い年齢層に向けた提案だったが、現在ではターゲットを絞った。より明確にブランドイメージを訴求するべく、注力したのは働く女性が普段使いできる、カジュアルなアイテムである。
ココモモは初参加。その参加の理由は、2024年初頭から、楽天市場での広告施策に加え、SNSを積極的に活用する取り組みを始めたからである。
その施策においては、効率の良い商品選びと「見せ方」が重要。そこから逆算して、やることのプライオリティが決まるわけだ。ゆえに、アフィリエイターの見せ方についてのノウハウにも関心が強くなる。
だから、ココモモが、販促以外の利点で話をしていたことが実に印象的。普段はインターネット越しにしか接点がないアフィリエイター。彼らとの直接、顔を合わせて、リアルな反応を得られたことで気づきも多い。
「ココモモさんは一枚目の画像に対してのクリック率が高いんです」そう教えてくれるアフィリエイターもいた。つまり、自分たちの書いた記事なり投稿とモモココとの相性がいいこと。それがアフィリエイターの言葉によって気付かされる。だから、この店を見つけて、喜ぶ人もいたくらい。
クーポンとサンプルの効果的な活用
考えればよくわかる。アフィリエイターとしてもアクセスが来ないと始まらない。だから、ココモモの画像に対しての反応が良いことは、逆に、アフィリエイターにとっても、その店への感謝の念が生まれているわけだ。持ちつ持たれつである。
このように商品に対するフィードバックは、大きな身を結ぶ。かつ、アフィリエイターがどのように商品を紹介しようとしているかを知ることもできる。それによって、今後のブランディングや商品展開の方向性に自信を持てるようになったというのである。
ココモモでも、イベント参加者に向けて特別なクーポンを発行。特に90%オフのクーポンは、多くのアフィリエイターに好評。アパレルこそ、実際に商品を触って、着用してみてもらったほうがいい。
改めて、今までと違う着眼点だ。普段から、データ分析やオンラインマーケティングを徹底していた同社。だが、アフィリエイターと直接話すことで、より感覚的にそれをどう反映すればいいのかを考えられるヒントを得たことが、次につながっているのだから。リアル店舗を持っていない彼らにとって、どうやっても得られない価値だとしている。
リアルで、且つ影響力を持つ人の声にピンポイントでリーチすることの価値。それは極めて生産性の高い学びの場であるというわけなのだ。
家具のスペシャリスト、モダンデコの新たな一手
最後に、モダンデコにも話を聞いてみた。家具やインテリア用品を展開している老舗である。だが、マッチングイベントに参加したのは初めて。
特に彼らは、他のECモールとの差別化を意識していて、楽天市場には楽天市場なりの売り方を心掛けてきたという。楽天市場の特徴として、ファミリー層が多い。ちなみに、「Yahoo!ショッピング」で言えば、男性が多かったりするという。
すると、訴求すべき商品は異なってくるわけだ。楽天は女性が好みそうなベージュ系など、淡いカラーをチョイスして、シンプルで機能的なデザインを推していく事になるわけだ。そうやってターゲットの棲み分けはできているけど、正直、イベント参加にあたり、どの商品を展示するかに迷いがあった。
そもそもイベント自体に出ることが同社として稀である。そして、彼らは本来、家具屋である。
でも、スペースの制約を考慮。手に取りやすく、質感が重要視される寝具に焦点を当てることを決断した。実際に来場者に触れてもらうことで、商品の魅力をより直感的に感じてもらうことにしたのだ。
結果、モダンデコが展示した寝具は、多くの来場者から好評を博した。特に、寝具に触れた際の「触り心地がいい」といった反応も得られた。来場者が実際に商品を手に取ることで、オンラインでは伝えきれない質感やディテールを直接体感してもらうことができたと満足そう。
クーポンとサンプルの戦略的活用
つまり、楽天市場で築き上げたカラーを、このイベントによって深掘りできたというわけである。モダンデコも、それを触発するべく、イベント来場者に対して特別な「90%オフ」のクーポンを発行。着眼点が奏功し、多くの人が集まったことで、イベント当日には用意していたチラシが全て配布し尽くしてしまったという。
彼らの場合で言うと、イベントの特性を考えた配置に関して言及していたのが興味深い。
つまり、展示スペースの活用方法についても、こだわった。来たときに、近い右側のゾーンに新商品のうち、「もこもこブランケット」で足を止めてもらうことにした。
スーッと流れるように、加湿器へと向かう。中央、左側にある加湿器などの新商品へと足が向かい、全体を見渡す格好。「楽天市場」の特性を考慮して、最初にブランケットを配置したのは大正解。
ただ、このイベントならではの特性だな、そう思ったのは、「若干、ブランケットの位置に滞留した部分もあったかな」と同社が振り返ったことにある。あまりにそのブランケットに集中しすぎると、そこで撮影したり、興味を持って触ってもらう機会を逃してしまうのだ。確かに、これは販売するのと勝手が違う。
このイベントの特性を言い当てていて、それらの商品もばらけて展示しても良かったのではないかと反省の弁を述べる。とはいえ、この賑わい、初めてにしては大健闘だろう。ともかく、このイベントなりの流儀がありそうだ。
リアルな繋がりに価値があるけど、違う視点で店に寄与するイベント
見せ方、接客・・・。リアルのイベントとそれほど、変わりがないのではないか。正直、そう思ってこの地にやってきたけど、それは違った。
即効性のあるものではなく、地道なところで成果を願うものであり、来場者から表現のヒントを得たり、時間のない中で成果を出すために必要な配置を考慮する部分であったり。
アフィリエイトは古くからある手法ではある。でも、実は、他のモールではこの手のイベントはない。そこに、楽天市場としての個性も感じた。やはり、このイベントを大事にしてきたのは、楽天市場が店舗を軸にして、そのポテンシャルを底上げする、エンパワーメントとしての側面が強いからなのだろう。
それは理にかなっている。集まる店舗の一言一言にも、リアルなイベントと同様の温もりを感じたからだ。ここでの気づきは、お互いにとって利点をもたらし、お店の可能性を最大限にまで引き上げるのである。
今日はこの辺で。