東宝、自慢の「ゴジラ」で自社商品を引っ提げ「ギフト・ショー」に参戦
「流行の商材しか興味を示さないメーカーや店」が少なくない。だからこそ、流行に乗るのではなく、地に足をつけて、自ら商品を作ることで、コンテンツを育てる。そんな発想も大事なのかもしれない。東宝の「ゴジラ」への想いは、自ら商品を手がけ、その商品力の向上に努める姿に現れている。「東京インターナショナル・ギフト・ショー」では、自社商品を一堂に会して披露した。コンテンツ力を支えにして、しっかりとした商品を生み出す企業の覚悟を取り上げたい。
1. 自社商品で挑むギフトショー
まず、2024年のギフト・ショーに、東宝が満を持して「ゴジラ」に関する自社商品の展示を行った。これまで東宝は自社商品だけのラインナップで、同展示会に出したことがない。まさに初の試みだが、そこに覚悟が表れている。
それらのグッズは、それまでで言えば、他メーカーにライセンスを供給し、商品の製造や販売を委託したものが大半だったから。しかし、今回、自社で商品企画から製造、販売までを手掛ける商品を多く揃えたのには、何か背景にあるのか。
2. 在庫リスクを伴うも東宝の強い意志
失礼ながら、僕は担当者である清水俊文さんにこう聞いた。
自社商品を展開すれば、在庫リスクがある。ライセンスアウトして、ロイヤリティを得る。その方がリスクから解放されるのでは?
それに対して、彼は大きく頷いた。それでも「東宝はこの新たな道を選びました」。
なぜなら、メーカーは時流に左右されやすい。とはいえ、メーカーを責めるわけではない。当然ながら確実に売れる商品を手がけるのが筋であり、一方で、彼らは彼らでずっとそれらのコンテンツと向き合い続けなければならない現実がある。もしも、自らが手掛け続ければ、「ゴジラ」商品を常にある程度のスケールで売り続けることができる。それはブランド価値を維持する意味では重要なことだ。
だから、今まで通り、ライセンスは行いつつ、自らもリスクをとって商品を手がける。それが、結果、ライセンシーにも東宝にもいい循環を起こしていくだろうと考えた。そして、それを可能にするのは「直営店」の存在である。
3. ゴジラストアを拠点に広がる販売戦略
それができる理由は、ゴジラを中心に展開している「ゴジラストア」の存在があるからだ。勿論、彼らが自分で商品を、ヨドバシカメラなどの大手量販店に卸していたりする。ただ、「ゴジラストア」には常に耐えることなく、それらを売り続ける環境があって、インバウンドのお客様にはウケが良い。そして、リアル、ネットそれぞれに店を構えているから、特に、越境EC(E-commerce)では成果が出ているのだ。
さすがは世界的なコンテンツ。例えば、YouTubeを活用した商品紹介も行い、ブラジルなどの海外ファンからの支持を受けている。ゴジラというブランドが世界中で愛されていることを背景に、これらの商品開発を通して、今後のグローバル展開にも期待が寄せられている。
4. プラモデルと新しい価格戦略
具体的な商品は?今回、東宝が手掛けた商品の中でも、注目の一つが「ゴジラ」のプラモデルである。(開発中によりお見せできないのが残念)。それを提案するにも理由がある。昨今、フィギュアが高騰しているからこそ、プラモデルであれば、若い世代にも手に取りやすい価格帯で提供できるからだ。
プラモデルは組み立て式で、3500円程度の手ごろな価格。このような価格戦略により、幅広い層にアピールすることを目指している。
さらに、東宝が注力しているのは、フィギュアの新たな使い方である。こちらは、スマホスタンドとしても使えるフィギュア。
実用性と遊び心を兼ね備えた商品として人気を集めている。彼らが自社で展開している分だけ、こういう独自性を持たせた商品開発ができる。これも、自社製造ならではの強みであり、ファンの裾野を広げる。従来のフィギュアファンだけでなく、実用的な商品を求める新たな顧客層の開拓にも成功しているというのだ。
このようにして、東宝のゴジラの自社商品展開は、いわば、コンテンツへの愛だと分かる。
キャラクターグッズの販売にとどまらず、グローバル市場や新たな顧客層に向けたアプローチも行っていく。そんな意味合いを持っているから。コンテンツホルダーにおける新たな道筋を示す事例ではないかと思う。「ゴジラ」という強力なコンテンツを活用しながら、商品開発でさらにコンテンツの価値が高まることを期待したい。
今日はこの辺で。