今どきの戦略 こうして漫画はアニメとなり文化となる SPY×FAMILY(スパイファミリー)
遂にここまで来たのか。僕は、AnimeJapan 2022というイベントの会場にいて、大きなビジョンを目の前にしてそのアニメの存在を確認し、それを痛感したのだ。それは「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」。この背景には、ここ数年の「少年ジャンプ」の意欲的なチャレンジがあることをご存知だろうか。
その設定がまず面白い!スパイファミリー
1.スパイファミリーとは?
スパイファミリーは父がスパイ、母が殺し屋、娘がエスパーという設定。お互いがお互いの能力などを知らずに、一つ屋根の下で生活しているという漫画(原作:遠藤達哉)。実に設定が面白く、この4月からテレビ東京系でアニメ化も実現した。
凄腕スパイである「黄昏」ことロイドは、任務で名門校の懇親会に潜入しなければならない。しかし、その為にはその入門校に子供を入学させなければならなかった。そこで、独身である彼はアーニャを孤児院で、ひょんなきっかけでヨルと出会って、このストーリーが始まる。
愛らしいアーニャをはじめ、恐ろしい素性を持ちながら、お互いの利害が一致。仲良く暮らしていくものの、見る側は真実を知るから、少しハラハラ。でも、微笑ましい。その絶妙なバランスがファンを増やし、今や累計発行部数1800万部を突破するほどの人気となった。
2.注目に値するのはそのヒットのさせ方
感慨深いなと思ったのは、この漫画に関して知ったのは、今から2年半前・その切り口に引かれたからである。『IMART 国際マンガ・アニメ祭 REIWA TOSHIMA』というイベントで、集英社編集総務部・部長代理の伊東敦さんと週刊少年ジャンプ編集部・少年ジャンプ+副編集長籾山悠太氏さんが語っていた。当時のメモにも、しっかりその名前があったので(名前を挙げてすみません)そういう仕掛けがあるのか。いかに僕自身驚かされたかがよくわかる。
その始まりが「少年ジャンプ+」というアプリから始まっているからだ。この漫画のヒットの起点は「週刊少年ジャンプ」ではない。集英社として紙の媒体ではなく、アプリ専用の漫画としてデビューした初めてのヒット。だから、注目なのである。
当時は、確か連載から約8週間で100万部突破だったと記憶している。「少年ジャンプ+」アプリでコメントなどもできることもあって、そこから火がついた。
3.最初は無料で知ってもらいそこからファンに
週刊少年ジャンプであれば、それをコンビニや本屋などで購入して、読むわけだ。しかし、この「少年ジャンプ+」というアプリは、「スパイファミリー」などを筆頭に「無料で」読める漫画がある。
ネットで誰もが接点を持てる強みを活かした利点だと思う。作品の魅力を一度、無料にすれば誰もがそれを見れる。ただし、二度目は見ることができない。つまり、全編一度は見ることができるので、そこで、潜在的なファンを発掘するわけだ。
そのストーリーを気にいれば、ファンになっていく。そうするほど、それらのグッズが欲しくなるわけであり、その一つとして「単行本」がある。それが上記の通り、1800万部を突破しているということなのである。マネタイズの持って行き方が絶妙である。
ファンなら本もグッズも買うしアニメも見る
1.単行本もファンの証
ここが今どきである。一度、見られるのにも関わらず、それでも単行本を買う心理とはいかに。その単行本すらもファンにとってはその満足感を満たすグッズなのだということを証明している。それと同時に、昨今、言われる書籍離れに対して、新しい価値を見出した。確実にマーケットを作り出している。
かくいう僕もまた、アニメ化を機に、単行本を買ってしまっているわけだ。しかし、それは、今から2年ほど前、その存在を知って、一度読んでしまっているから。内容が面白いという実感があるから、課金されてしまうくらいなら、自分で単行本を買って、本棚に並べておきたいという心理からである。
2.グッズも多数登場
当然、アニメになれば、グッズも続々。こちらは会場内で見つけたプライズのグッズである。ロイドとヨル夫妻の勇ましい姿が番組を彷彿とさせる。
このイベントではステージ上で、登場人物の声優が舞台上で、挨拶をするなどしていた。オンライン上見る限りにおいては会場を敷き詰めるほど、人が集まっていた。さらなる飛躍の予感を感じずにはいられない。この辺の一連の流れは一つの新しい時流を抑えたヒットの傾向と考えていいと思う。察するに、単行本もこのアニメ化やグッズ化に押される形できっと伸びるだろう。
少年漫画誌ではこの動きは先駆け。だからこそ、鬼滅の刃のヒット然りだが、いつの時代も「少年ジャンプ」というのはヒットメーカーだと思うのである。真面目な話、ジャンプの編集部に取材を試みて、その中身を深掘りしたいくらいに、僕は痺れた。
大事なのは「スパイファミリー」を追うことではない。面白いけどね。コンテンツには自信があるからこそ、その仕掛けにこだわった点である。大きなビジョンに映し出されるアーニャの姿を確認して、改めて、この戦略の見事さを実感した次第である。
今日はこの辺で。