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アイリスオーヤマ 東北の雄たる所以 ネット通販 アイリスプラザと暮らし健康ネット館 の奮起

 まさに東北の雄であり、名実ともに躍進した結果だろう。先日、アイリスオーヤマは「au PAY マーケット」が開催する「ベストショップアワード」総合賞において、自らが運営するネット通販サイト「アイリスプラザau PAY マーケット店(以下、アイリスプラザと表現する)」及び「暮らし健康ネット館」においてそれぞれ「6位」「2位」で受賞に至る快挙を成し遂げた。企業として業務フローが徹底されているが故の結果ではないかと思い、両店舗に背景を伺った。

メーカーと ネット通販 2店舗を上手に使い分け

1.アイリスの公式「アイリスプラザ」

 アイリスオーヤマというと、とかく家電から日用品まで幅広く扱うメーカーとして、存在感を示しているけど、コロナ禍以降においては着実に、通販でもその存在感を見せていて、その努力の証が上記の成績だと言って良い。

 純粋に、二つの店舗の違いが気になった。それについては、まず「アイリスプラザ」は「アイリス」というブランド名を活かした公式ショップとしての意味合いが強い。

 つまり、アイリスオーヤマにおける商品作りのこだわりとそこから生まれる利便性と魅力を存分に伝え、CMに起用している吉沢亮さんなどの写真を全面に出し、販売上での戦略と連動させている。メーカーとしての信用がリピーターに繋がっているということだ。

2.値頃感を求めつつリピーターを意識「暮らし健康ネット館」

 そうやって、アイリスプラザが商品自体の付加価値を重んじる一方で、「暮らし健康ネット館」においては、どうだろう。

 ここでは仕入れ商品も扱い、NBを取り入れながら、幅の広さで売るわけである。しかも日用品などを中心に価格訴求で勝負をし、日常的に買い求めるスタイル。値頃感のあるラインナップの中から、暮らしに即したものを複数、買ってもらうことを意図して、最近のヒット商品で言えば、マスクなどが挙げられる。

 同じ会社でありながら中身は違う。ただ、同時に僕は「値頃感」を打ち出すやり方は、同時に他でも扱っている商品を価格で競争して、勝たなければいけないので、単純に安さだけでは疲弊するのではないかと思った。「ということは、リピーターを念頭に置かれた戦略ですよね?」と僕が問うと、その通りで「次回、購入した時に利用できる」クーポンの発行などを行い、自然と次の購入でこの店を選んで貰える土台を作っているのだという。

売上のヤマを作る事の価値

1.お客様の踏ん切りがつく

 では、新規獲得はどう行っているのだろう。それでいうと「5の付く日」などを月二回ほど用意して、「お得な日」を印象付け、そこで獲得していくのである。ともすれば「セールなのね?」と言われがちだが、僕はそうは思わなくて、「売上のヤマを作ることが大事」なのである。

 つまり、平然と同じ価格で商品を売り続けても、お客様も買い時が見えづらい。かつ、お店も新規獲得の勝負時が見えづらい。だからこそ「お得な日」である。彼らにとっての売上のヤマを作れば、そこで得られた新規顧客をいかに継続するかが、KPIの指標になるはずで、この「お買い時な日」はその場限りの売上というよりは、寧ろ次の売上に繋げる施策なのだと考えた方が良い。

2.新規顧客に早く届くなどの強みを見せる

 でも、安さだけでは限界があることには変わらない。そこで、ブローのように効いてくるのがバックヤード側の努力である。ここもメーカーとしての知見を程よく取り入れていて、賢さが光る。ネットショップのレビューを見ればわかるが、大抵の満足度の高さは、実は「届いたその瞬間」に確定してしまうことが多い。商品も大事なのだが、早く丁寧に届けば、「いい店だ!」という評価に繋がりやすいのである。

 では、そこで彼らはどう自分の力を発揮させるのかというと、それが全国8箇所の出荷拠点である。お客様にとって一番近い拠点から出荷できる体制を作り、納期の短縮に繋げていくわけだ。上記の通り、きめ細やかに早く届けてくれるこの店は、優良店舗に合致して、この要素も実はリピートの背中を後押ししていく。まして、暮らし健康ネット館は日用品だから、特にそのニーズは高いはずだ。

3.その為の仕入れと出荷の仕組みづくり

 その上で、彼らは「au PAY マーケット」に限らず、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどと同じ物流拠点から出荷させて、それを共通化していた。つまり、バイヤー目線で安易に仕入れ単価を安くすることを前提に大量入荷しがちなのだが、それをやってしまうと、売り残してしまうことが多い。だから、これらのモールをまとめて、それぞれデータ化して受注予測をしていれば、その仕入れ数は確実に売れる数量になっている可能性が高く、しかも複数モールまとめて発注してるので、まとまった数量になる。必要な数量のみを確実に大量に入荷させることができるようになれば、無駄な在庫も生まれない。

 そこで先ほどの「お得な日」の話に戻ってくる。彼らに聞いたところ、お得な日をどこかのモールに特化した形ではなく、開催していると聞いて、これも賢いなと思った。確かに、モールでは5のつく日であったり、au であれば三太郎の日、といったものが存在するけど、全モール共通して「お得な日」を設定してしまうのである。なぜ、それが大きいかお分かりいただけるだろうか。

4.売る為の商品も見えてより強く

 ヒントは物流の拠点である。もしも「お得な日」を分散させれば、出荷のヤマも分散してしまうので、物流拠点の人員も無駄に増やしてしまうのである。そこでお得な日を作り、受注が殺到するヤマとなる日にちを共通化させて、そのヤマのタイミングだけ出荷人員を強化すれば、極めて生産性が高くなるのではないか。

 加えて、アイリス自体がメーカーであることからすれば、生産数は決まっているので、受注予測さえしっかりしていれば、「アイリスプラザ」の方でも欠品の恐れは少なくなる。あとは、適切なタイミングで各地の拠点にものを置くことができれば、無駄はない。しかも完全に仕入れ商品だけではなく、自社商品も含めて、やるから融通が効いて各物流拠点もリスクは軽減される。仕入れ分の相乗効果を最大化できるわけである。

 こうなってくれば、あとは強い。自ずと何が売れるのかが明確になるから、それを広告なり戦略のど真ん中に据えるればいい。一つ一つの行動が理にかなってくるわけで、このような視点は部署単位で見ていたらできない。俯瞰的な視点ができる会社の姿勢に、僕は価値があると思った。

5.モール自体の継続施策を自らの継続に

 ここまで色々話した上で、「au PAY マーケット」がアイリスの2店舗にとって大きかったのは、楽天市場やYahoo!ショッピングよりも、モール全体の中で自分達の店の占める割合が大きかったことにある。

 そうすると、「au PAY マーケット」の施策がダイレクトに活きてくる。昨今、Pontaポイントをフックにして、休眠顧客の発掘や継続利用を促す取り組みなどをモール単体でも行っていることもあり、このモールの中でお客様が回遊し、循環しやすくなっている。だから、アイリスオーヤマが一連の動きで取り組んでいる、継続のための取り組みが奏功しているということになって、上位にランクインされるという事になるのだろう。直接の因果についてはわからないが、「au スマートパスプレミアム会員」などにおいてみれば、送料無料などの特典もあるので、それらの効果と相乗効果されれば、アイリスの価値が倍化するのは想像に難くない。

関連記事:機は熟してきた? au PAY マーケット ショッピング の場 として定着した先に

風通しを良く企業価値を高め、東北に活気を

 最後に、余談にはなるけど、僕が東北出身ということもあり、アイリスオーヤマが2023年3月卒業予定の大学生らを対象とした就職したい企業人気の高さが東北でナンバーワン(マイナビ調査)であることを知っていて、社内の環境についても聞いた。すると、スタッフの方達から若い人達の価値を重んじ、教える姿勢を重視するとともに、仲間同士のその風通しの良さを感じる発言も出てきて、調査結果に納得した次第だ。

 要は、ネット通販だからと言って、その受注担当だけではなく、営業なども含めて横断的に、その商品の売り方に関しては議論をしており、他での意見をもとに、戦略に活かすことも多いのだそうだ。それ故か、一つ一つの組織と施策は俯瞰的にみて構成されていて、これができるのはボトルネックを常にチェックし、各々が全体の中で何をすべきかを全員が考え、改善を繰り返して行動できているからなはずだ。

 ネット通販の現場にも垣間見られた東北の雄たる所以、ここにあり。今は春。今年もアイリスオーヤマは、700名もの新卒社員を雇ったと話していて、素晴らしいと思った。ネットに限らず、一丸となって、その商品の一つ一つを大事に売る姿勢は、確実に東北に雇用を生んで、活性化を担う一翼となっているのである。

 今日はこの辺で。

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