The 社長対談 韓国の本気が日本のECに発破をかける
日頃、企業からはサービスの事しか説明を受けないでしょ?ならば僕は真に社長がどんな人間かも含めて、会社のことを知れば良いと思う。それを探ってみようというシリーズである。不思議なことに、初対面のはずのこの二人には共通点があった。それは共に韓国の動きに詳しかったのである。シナブルの小林裕紀さんとChannel Corporationの玉川葉さんこと、Jayさんである。それで二人の共通する「韓国」をテーマにこの対談をまとめたってわけだ。
韓国 と EC 深い関係性
1.韓国にはECの土壌が早くからあった?
Channel Corporationは元々は韓国発祥で「チャネルトーク」というサービスを手掛けている。わかりやすく言うとチャットのような形。だが、そのやり取りの中身は、単純に、FAQを答える従来型のチャットとは性質を異にしている。
お客様との関係値を深掘りするコミュニケーションツール。そっと後ろから「お困りごとはありませんか」と優しく声がけする風で、接客の新しい概念だ。
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2.ネットになかった人間的アプローチ
例えばネットでありながら、リアルのような心のこもった接客を心がけたい。そんな日本のネットショップには徐々に浸透しつつあって、「Ozie」などはその代表格だ。それ故、これからの新時代を切り拓くスタートアップ企業である。Jayさんはその日本での代表者である。
そのJayさんを紹介がてら僕は「元々、韓国ってECの土壌があったんですか?」話を振ると「いろんな試行錯誤もありましたが、オムニチャネル然り、韓国は動きが早かったですね」と答えたのは小林さんだった。
Jayさんも「韓国では(多額の資金を調達する)ユニコーン企業の中でも、多くの割合を占めているのはEコマース企業なんです」と答えた。やはりECは伸び代が大いにあることが窺え、そこに照準を構える企業も多いということだ。
知れば知るほど奥が深い?韓国の事情
1.顧客対応の重要さはMAを提供するシナブルもまた
チャネルトークが顧客対応を重要視しているけど、実は同席しているシナブルもまた、顧客対応の重要性を思ってMAを展開しているから、お互い親和性は高い。ただ、驚いたのは別の共通点であったのだ。
「あれ?小林さんも韓国、お詳しいのですね」。
そう僕は聞くと、シナブルの小林裕紀さんは大きくうなづいた。そう、韓国を熟知しているという点でも共通していたのである。小林さんは今、「EC Intelligence」というサービスを展開していて、こちらはマーケティングオートメーション(MA)のツールである。
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魅力的なのは、お客様の動向を的確に整理してレコメンドエンジンを掛け合わせて、必要な形でお奨めを行い、特に一見さんで離脱しがちな、アパレル通販においてしっかり購買を促して、成果につなげている。
MAは比較的、難しいものだけど、それはMA自体が色々な機能や要素を持っているからなのだ。
その点、小林さん達はその特徴としてECに精通するスタッフを集めたのだ。つまり、ECに寄せて必要な機能を組み合わせて、複雑にさせない。それだけではなく、システムエンジニアも寄り添って丁寧にサービスを提供している。だから、担当者にとって使いやすいと呼び声が高い。
2.実はコマース21の元代表にして韓国に精通する
実は小林さんは今はシナブルの代表取締役だが、その昔を辿れば(ここまで踏み込んだら、怒られてしまうかもしれないが)以前、コマース21の代表取締役を務めていた。このコマース21こそが、知る人ぞ知るが元々韓国の会社らが出資して、出来上がった会社。韓国に精通するのも当然であって、二人の会話は弾んだ。
案外、企業の代表者がどんな価値観の持ち主なのかについて触れてみる機会はそれほどない。日頃、企業からはサービスのことしか説明を受けないということも多いだろう。僕は実際、ネットショップから「その企業を信頼していいのか」という話を聞くことも少なくない。
そう思うと、今回のような機会は良いのではないか。サービスを紹介するのとは違った視点で、会社の価値を知ることになるから。
良い部分と悪い部分
1.決断の早さを尊重しつつ耐える
小林さんはこう語りだす。
「韓国の企業は比較的、行動も決断が早いんです。ただ、日本で事業をやっていく部分で言うと、地に足をつけてやれる人がいないと浸透させるのは難しい。やめちゃうケースも少なくありません」。
過去を振り返りながら語り、彼も「チャネルトーク」の内容に関心を持った。Jayさんも「確かにそうですねとうなづく。
韓国の社会自体がそういう風潮。成功するかどうかよりもまず行動。そして、ダメなら次へ。そんな感覚が強い。それに対して、日本は形になるまでの間に時間をかける。恐らく、2年〜3年くらいはかかるのではないかと。「韓国の人が韓国で日本を見ていたら、待ちきれなくなる気持ちもよくわかります」と彼は笑う。
2.実体験に基づく、やめずにやり続ける重要性
「そうそう。時間軸は違うんですよね」。
小林さんは語り、日本での浸透にはやり方があると指摘した。Jayさんの話を聞く限りにおいては、LINEの日本での成功で学んだことが大きいようだ。「日本で仕掛ける僕らへのアドバイスとして寄せられたのが『まずは耐えてみましょう』ということでした」と。
だからなのかもしれないなと。「チャネルトーク」での日本の展開に関して、結論を急がない。
思いがけず、小林さんは「それは(判断として)正しいと思います。実際、コマース21は苦しい時代がありました。黒字化を達成したのは2005年ごろ。創業が2000年ですから、やはり5年の時を要しました。どうしても最初にアクセルを踏みすぎることが多いのかもしれません。
チャネルトークは苦境にはないようだが、小林さんは自分の動きをなぞらえて、理解を示し、また今後に期待しているようでもあった。でも、なぜ韓国から日本に進出しようと考えたのだろう。その議論の向こう側にはやはり世界への野望がちらほらみられる。
世界への野望
1.韓国発祥なりの戦い方
でも、これまで韓国をみてみると、どうだろう。世界を席巻する「Shopify」のような企業やサービスまで登場しているかというと、そこまではできていない。「チャネルトーク」にしても、世界を視野に置きながら、まだその域ではない。その点、Jayさんは分析するのだ。
「マーケットサイズが違うからだと思います。韓国のサービスでアメリカに通用するものは既にアメリカ自身で広がっている。だから、売れないんです」。
それに対して、小林さんはこう語る。
「結論から言えば、韓国(国内)においてはBtoBのサービスをやるのは厳しいんです」と。
するとJayさんは「そうです!」と大きくうなづく。
2.いいサービスで無料であれば日本の方はまず使ってくれる
「実は、それが、私たちが日本に進出した理由です。日本の方々は例え、それが韓国のものでも、良いサービスが無料で提供されていれば、まずは使っていただけるんです。」そう前のめりになって話し始めた。
小林さんはそれにまたうなづきこう話す。
「そうなんですよね。韓国のエンタープライズ(大企業向け)サービスは殆ど受託なんです。ASPみたいなものは難しいんです」と。
韓国の会社といえど、韓国でマネタイズすることの難しさを指摘したわけだ。だから日本進出なのであり、Jayさんの先ほどの言葉につながる。だから「チャネルトーク」は良いサービスという自負がある。また、他とは違う自信もある。だから、日本で無料プランを据えて、そこから認知と共に世界観を伝えて、拡大しているのだ。なるほど。
チャネルトークが日本に進出した真意
1.日本は可能性を秘めた大事なマーケット
「まずはそうやって日本に進出するんです。それで使ってくれる会社が増えてくれば、そこにその価値を理解するほど、対価をちゃんと支払ってくれる。そういうことなんです」。そうJayさんは語り、ここにチャネルトークの日本進出の真意がみられる。
「だから、私たちは韓国で開発して、日本でマネタイズして、アメリカで成長する。それを起業する時から描いています」と。その為に、まずは地に足をつけて、日本での展開をしっかり“焦らず耐えながら”やっていけば、自らの成長絵図を描いていけると。
2.韓国を知ればこそチャネルトークの想いも響く
小林さんの眼差しも真剣だ。じっくり腰を据えて、チャレンジングに挑む「チャネルトーク」という韓国発祥の新しいサービス。それは韓国をよく知るからこそ、深い意味と関心を持って、Jayさんの言葉に熱心に耳を傾けるわけである。
「韓国の人達は自分達でビジョンを持っている。はっきり自分達の考えを言うので、盛り上がるから、刺激を受けるし、僕は好きなんです。」と小林さん。それが小林さんを触発しているのもよくわかり、普段、彼もまた自らのサービスをいかにして、世界に広められるか、という話をしている。
3.それぞれに世界に想いを馳せて
思わず、小林さんも一歩前へと乗り出し、語りだす。
コマース21での経験然り、ECに関わるのは20年を超えた。そう語る小林さんもまた、世界を口にした。自らの知見を「世界で」活かしたい。それが夢なのだと。
彼にとってのまず生み出した武器は「EC Intelligence」なのである。極論、いつも話すことだが、機能一つ一つは極論、他にもあるものだ。けれど、彼はいう。ECに寄せて考えれば、自ずと自分の知見に基づき、必要な取捨選択と優先順位をつけられる。それは必ずや利用者にとって使いやすさを実感させられるものになると。
それは世界共通だと。世界中どこでも、ECに関わる人であれば、必ずこのサービスを使えば成長することができると信じての起業である。だから、実はJayさんの話にも共通するところが多い。この日もまた、今までと同じように韓国のイズムに刺激を受けたようであった。
夢を追い、本気でそれを実現する二人がここにいる。共通して見据える先には世界がある。自分たちの会社のサービスこそ、世界に通用するだけのポテンシャルを持っていると。これからが楽しみな2社である。また、韓国の熱量に負けず劣らず、ニッポンも張り切っていこうではないか。
今日はこの辺で。