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“インク”で 神戸 の彩りを表現 ナガサワ文具センター インクがもたらす人間愛

 「これ、どれだけ色があるんですか?」思わず聞いてしまった。目の前に広がるのは「インク」である。僕らが「インク」と言われてイメージするのは大抵が、青や黒といったものだけど、ナガサワ文具センターという会社では、80色、出している。なぜ?そんなに。でも、それを出した経緯を聞いて納得である。お客様をはじめ人への想いが溢れた、80通りのストーリー。そこにまた驚いたのである。

インク で彩り豊かな 神戸 を表現する ナガサワ文具センター

 その商品の名前は「KOBE ink物語」という。神戸?そう。実は、これらの彩豊かなインク誕生の裏側には1995年の阪神淡路大震災が存在する。説明の余地はないかもしれないが、この地震の影響は大きく、神戸もまた壊滅的な被害があり、ナガサワ文具センターは少し大袈裟かもしれないが会社の経営を左右するほど、ダメージを受けたのである。

 それでも、神戸の人たちは復興に向けて歩み始め、この会社もまた懸命に元に戻れるようにと励んだわけで、ようやく干支を一周した頃、会社も元に近い状態に戻った。その時、彼らは考えるのである。

 「そうだ、自分たちの文具でお礼状を書こう」と。

 この震災から立ち直れたのは、まさに取引先やお客様のおかげ。特にお世話になった方にはそのお礼を込めて一枚一枚、手紙を書こうと考えた時である。

 その手紙の文章を「黒で書こうか」「青で書こうか」とペンを手にした時に、「神戸らしい色はないだろうか」と想起したのである。そして、自分たちでインクについて調べるうち、自分たちでオリジナルのカラーが作れることが分かったのであって、そこに着手することを決めた。

 神戸と言えば、海と山、そして異国情緒に溢れた名所。だから「六甲グリーン」「波止場ブルー」「旧居留地セピア」というカラーを自ら作って、それを手紙に書いただけでなく、販売をし始めたのである。

予想外のヒットと寄せられる要望 

「正直、私たちもこのような色合いのインクが売れるとは思っていませんでしたので、一回きりで生産中止だろうと考えていました」と。

 でも待っていたのは予想外の反響だったという。多くの人たちからこのインクに対しての反響を集めるに至り、その販売は継続するどころか、神戸の各地から、「我が街のインク」をつくっていただけないかと寄せられるほどになったのである。

 よく考えれば、このインクを通して、色々な街のカラーが再現されれば、それ自体が復興する神戸の証となるだけではなく、それをきっかけに興味を抱いて、この地に足を運んで、真に復興の後押しができることに気づいた彼らが、4番目の「北野異人館レッド」を皮切りに、徐々にさまざまな街のカラーのインクを作ることになった。「北野異人館レッド」で言えば、異人館街の中でも有名な「神戸の風見鶏」をモチーフにしていて、色鮮やかな煉瓦が特徴的。だから、その煉瓦をイメージした深く心に刻む「レッド」にしたのだという。

灰色から色づく神戸の象徴

 スタッフの方々もあたたかである。神戸というのは華やかな街であって、あの日を境に灰色になっていた。けれど、徐々にその彩りを取り戻していったように、神戸の各地で連想する色合いのインクを作ることで、そこに戻りゆく神戸の彩りを表現しようと考えた、というわけである。

 採算度外視で、彼らは自らの使命として80色まで増えたのだというのだから拍手を送りたい。

 思えば、僕は先日、文具女子博にうかがわせてもらって、万年筆はもちろん、ガラスペンのヒットとそこに付随して、それらを使って様々な色のインクで自らのノートを表現する提案を目の当たりにして、文具もアートだなと思った次第であった。まさに、彼らはその先駆けであるといえよう。

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 勿論、それが、生田オレンジ、新開地ゴールド、須磨浦シーサイドブルーという具合に、輝く神戸の象徴であるとともに、女性をはじめとする感度の高い人たちが、それでまた文具の楽しさに気づけたとしたら、彼らが文具にもたらした功績は大きい。

 そういうペンとインクの文化が広がるにつれ、これらの商品は、思いがけず、まるでインク自体が観光案内の役目を果たすことで、多くの人にとって付加価値を持って、受け入れられるものになり、神戸の輝きを彼ら自身が少しばかり寄与していると言えよう。

 黒、青と決めつけず、チャレンジしたことや、その色合いを通して、会社を支えてくれた企業や人たちへの感謝が込められていること、またその繊細な色づかいは、結果、そのペンを使う人たちの表現の幅を広げて、また違った客層へと広がっていて、これからも神戸愛とアートはセットでその文化に広がりをもたらすわけである。

 今日はこの辺で。

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