マーシャとくま 等 時代や国を超えて 発掘する ADKエモーションズ の変化球に着目

「マーシャとくま」という作品をご存じでしょうか。森に住む少女マーシャと、元サーカスのくまが繰り広げる騒動を描いたロシア生まれのアニメーションです。日本ではまだあまり馴染みのないタイトルですが、YouTubeの再生回数は全世界でなんと840億回を超え、チャンネル登録者数は1億3000万人以上という驚異的な数字を誇ります。
その人気は日本からのアクセスだけで2億3000回を超えるほど。ADKエモーションズは、この「海外で大人気なのに日本にはまだ広く知られていない」というポテンシャルを見逃さず、国境や時代の垣根を超えて「今の時代に届ける」という発想で注目しました。
SNS時代が変えたヒットの生まれ方
かつてはテレビや新聞などのマスメディアが情報を一斉に流し、それが多くの人々の消費行動を左右する――いわゆる“一極集中”の時代でした。しかしSNSが普及し、個人が自由に情報発信・拡散できるようになったことで、海外や過去の作品であっても突如として脚光を浴びる可能性があります。たとえば「マーシャとくま」は、SNSや動画プラットフォームでの視聴数が日本国内からも相当な数に上っていたことがADKエモーションズの目に留まり、商品展開を仕掛ける大きな後押しとなったのです。
なぜ商品化するのか?
それは、「海外や過去の人気コンテンツに、実は日本国内にも十分なファン予備軍がいる」という事実を数字で確認できるから。
ネット上でのアクセス解析により、潜在的な支持層を把握できる時代になったことで、以前なら見落としていた価値あるコンテンツを見いだし、国内向けに改めて企画・商品化できるようになりました。
たとえば商品をライセンス契約して展開すれば、玩具やアパレルなど“形”のあるグッズを店頭やオンラインで売ることが可能になりますし、さらにイベント開催といった販促活動も組み合わせることで、一つの“世界観”をファンに体験してもらうことができるわけです。
実際に広がる「マーシャとくま」の国内展開
ADKエモーションズが「マーシャとくま」を日本で盛り上げるために行ったのは、まずテレビ放映の確保。2021年10月からテレビ東京系列で毎週月曜の朝7時半にオンエアがスタートしました。
通常ならテレビ放映が先行してブームを生み出すところですが、すでにSNSを通じて“知る人ぞ知る人気”が醸成されていたために、この放映開始はむしろSNS人気に押される形と言っても過言ではありません。
さらにマルイグループなどの小売・メーカーと組み、店舗やオンラインでのコラボ商品を次々とリリース。イベントやポップアップショップなども交えながら、多くのファンが手に取りやすい環境を整えています。「可愛らしさ」と「ちょっと変わったキャラクター性」を前面に押し出すことで、子どもだけでなく大人の心もつかむような展開を図っているのです。

時代を超えて蘇るヒットの可能性
SNSの力が後押しするのは「海外作品」だけではありません。日本国内で一度は出版・放映されたものの、すでにメディア上から姿を消していた作品にも再びスポットライトが当たることが増えています。
たとえば1989年発表の筒井康隆さんの小説『残像に口紅を』はTikTokで紹介されたのをきっかけに、長らく品切れ状態だったものが急に書店に並ぶようになり、新しいファンを獲得しました。
ADKエモーションズが手がける「ショーワヒーローズ」シリーズも、まさに時空を超えた再評価の好例です。「エイトマン」「黄金バット」「スーパージェッター」など、いずれも昭和期の白黒アニメや特撮ですが、往年のファンはもちろん、ビンテージ感を面白がる若い層にも新鮮に映る可能性があります。かつては“古い”と敬遠されがちだった作品群が、SNS時代には“新しいレトロ”として発見され、ファンコミュニティが自然発生的に生まれるのです。

同じ流れは「特撮のDNA」としても注目されています。特撮撮影のミニチュアや着ぐるみといった手法、巨大怪獣のバトルシーンは、いまや映像技術の進歩でリアルなCG表現が当たり前になった世代にとって、逆に“手作りの味”が斬新に映るのです。展示会などを通じて再評価の機運を高めることで、かつてのファンも若い世代も巻き込み、新たな市場を生み出しています。
なぜこのような動きが起きているのか
1. ネット・SNSの普及
誰もが情報を発信・共有できるため、海外や昔の作品であっても“面白い”と感じた人々によって瞬く間に注目が集まりやすくなりました。
2. 人々の多様化する好み
大量消費文化から価値観が多様化し、「自分が本当に好きなもの」を求める流れが強まっています。昔の良作や海外の独特な世界観を、ピンポイントで楽しむファンが確実に存在するのです。
3. 数字で裏付けられる需要
動画サイトの再生回数やSNSでのエンゲージメントは“見込み客”を定量的に把握する手がかりとなり、企業は安心して投資しやすくなります。かつてのように興行の成否を大手メディアのプロモーション力に頼る必要が薄れ、企業自身がデータを見ながら戦略を立てられる時代です。
まとめ:ボーダレスの時代とコンテンツの未来
「いい作品は時を超えるし、いい作品は国境を越える」。そういう言葉が示すように、今やコンテンツが受け入れられる可能性は世界や時代の壁を容易に飛び越えます。
ADKエモーションズが「マーシャとくま」をはじめ、海外や昭和時代の作品に着目して商品展開する背景には、こうした“デジタル時代のボーダレス化”によって新たなファンを発掘できる手応えがあるからにほかなりません。
時代が変化しても、面白いもの・魅力的なキャラクターへの愛着は変わらない。
むしろSNSを通じた拡散とコミュニケーションが、その愛着を爆発的に増幅させています。どこか懐かしくも新しい、そんな作品たちがこれからも発掘され、“変化球”のようにヒットする時代が続くことでしょう。今後も、企業やファンの双方がまだ知らない名作を見いだして育てていく動きはますます盛り上がっていきそうです。
今日はこの辺で。