スーパー 等 小売 DX 進化の予感 短・中距離 配送でセイノーとエニキャリ連携
スーパー やコンビニ等、小売や飲食店などを含め DX が推進されている。けれど、まだまだ未開拓。どこに付加価値が生まれるのか、わからない。エニキャリの代表取締役 小嵜秀信さんが熱っぽく教えてくれたのは、同社とセイノーとの業務提携に関しての話である。「これは未来に向けた大きな話」と。配送をフックにして、お客様に付加価値をもたらす、業務提携のその中身。何を売るにしてもどこに価値を見出しどうビジネスで活かすか。そこが大事な時代になってきている。
スーパー などの DX で配送が大事な理由
1.日常生活の縁の下の力持ちとして存在感
正直、僕は最初「セイノー?」と言ってしまった。例えば、配送というと、ヤマトのイメージが強い。BtoCの中でセイノーは、その存在感が薄いと僕は思った。だからその業務提携にどれだけの意味があるのだろうと疑問を投げかけたのある。
ところが「いやいや違うんです」と小嵜さん。最近、ネットスーパー然り、スーパーマーケットやコンビニなどの商品を家まで運んでくれるサービスがかなり盛んになっている。それは読者もご存知かと思うが、ここで大きなシェアを握っているのが実は、セイノーなのだ。
下の表を見てもらいたい。
通常の通販では「宅配便」を使う。だが、ネットスーパー、コンビニ配達などはそれよりも早く到着する事にニーズがあって、そこを狙い撃ちしたのがセイノーだ。つまり、宅配便は必ずセンターを経由してからお客様の元へ届けるので時間を要する。敢えて彼らは「軽バン便」でセンターを通らず小型車に荷物を詰め込んで、配送している。
2.「軽バン便」の可能性
ネットスーパーなどを利用すればわかる。だが、当日中、2時間単位で区切るなどして配達しているのが「軽バン便」というわけ。セイノーはそこで全国に中距離配送のネットワークを張り巡らしている。
一方、小嵜さん率いるエニキャリはどうだろう。街の商店街にあるお店のインフラを目指していて、30分以内で、それらの商品を自転車で配送する、短距離を強みにしたサービスである。上の図で説明するなら、「クイックデリバリー」という部分だ。主に、フードデリバリーでその存在感を示しているのだ。
ここで、両社が交わる。近さを利点にして「軽バン便」よりさらに早く届ける仕組みだ。
3.そのどこにビジネスチャンスが潜んでいるのか?
セイノーでは中距離とまではいかない短距離の配送の依頼も増加している。今回の提携の経緯においても、それを受けてのものだ。彼らがそれを中距離の仕組みで実践すると、かえってコストがかかってしまう。その為、ここに短距離に強みを持つエニキャリのリソースがぴたりとハマる。
それはエニキャリにとっても然り。短距離とはいいながら、お店側から中距離の依頼も増加傾向にある。このセイノーの話は渡りに船。両方がお互いのニーズを補完しあう。いわゆるネットスーパーなどの更なる活性化を図れて、何よりお客様にとっての利用の幅が広がる。これらリアルの小売店のDX化が一気に進むことになる。
4.飲食店デリバリーと惣菜の垣根がなくなっている
よくネットスーパーという文脈においては、中国・アリババの「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が話題に上がると思う。だが、「あれは生鮮食品だけだったら発展しなかったと思っているんです」と小嵜さん。実は、フードデリバリーが多くの人の間に浸透した。それで、お弁当などを頼むことが当たり前になってきた。ゆえに、生鮮食品に加えて、加工されたお惣菜なども、頼むことに抵抗がなくなっていった。そう彼は話すのである。
語弊を恐れず言えば、ご飯がついて弁当になっているか、それがなくてお惣菜かの違い。フードデリバリーとネットスーパーとの間には垣根がありそうでそれほどない。確かに、フードデリバリーの成長とネットスーパーの成長はほぼ歩調を合わせていくという予測はうなづける。ちなみに小嵜さんは中国などの小売に精通する、大学の准教授としての顔もあって、さすがの着眼点である。
つまり、日本においても今、フードデリバリーが市民権を得た。それで、徐々に今以上に、生鮮食品やお惣菜を扱うスーパーなどの配送が市場として確実に更に成長が見込める。だからこそ、その多様性に応えるインフラを皆で確立することに意味がある。彼はこの連携に小売DXの未来があると、熱っぽく語るわけである。
短距離には短距離の専門性が大事
1.なせ「エニキャリ」?
しかし、セイノーはなぜ「エニキャリ」を選んだのか。まだ創業から日が浅いベンチャー企業とも言えるエニキャリ。失礼ながらそれを聞くと、「そこは、お店とお客様とを繋ぐだけの単純なギグワークではないから」と小嵜さん。これも興味深い。特に、短距離ですぐに届けるという部分を発揮する部分においては、地域データが細かく入っていることが重要なのだという。
つまり、タワーマンションひとつにしても単純に場所がわかっていたとしても、配送業者が入れる入り口はどこかは地図上では示してくれない。そこをエニキャリはその細かな住宅事情もデータ化。故に「30分以内」というポリシーを守っているわけである。そこが短距離配送としての価値だと睨んでいる。「単純にお店と欲しい人を点と点を線で繋ぐ」他の配送業者の考え方とは違う視点なのだと。
2.まさにラストワンマイルの重要性
要は、セイノーも「ただ届ければいい」という次元の話ではない。いかにお客様に満足度の高いサービスを提供できるようにしていくかを命題としている。ここには継続的な利用を視野に入れていることがわかる。
特に、食べ物系はコストがかかるから、継続利用をさせることで、大きく差別化できて、コストも軽減できる。だから、単純に届けるだけではなく、住宅事情もデータ化されているエニキャリを選んだというわけである。
エニキャリの精度をもってすれば、例えば、セイノーの「ケイバン便」により、それまでは、限られた時間単位でしか配送できなかったものも、単価を上げて30分以内で届けられる。そうやって配送の質を高めつつ幅を広げて、より顧客満足度の高いサービスの提供もできる。そうなれば、このジャンルがさらに活性化する。それがなお一層、人々の習慣の中に定着して、プラスに働くというわけである。
今日はこの辺で。