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SOÉJU ソージュ 代官山へ通う目的は購入ではなく“コーディネイト“。だから購入する“D2C”その理由

 メーカーは変貌の時にある。今やメーカーは「何を作るか」ではなく「どんなキッカケを作るか」が大事になっている。今回、僕が話を聞いたのはSOÉJU( ソージュ )を運営するモデラート 代表取締役 市原明日香さんだ。そういう“メーカーらしくないメーカー”であって、直接、お客様と繋がる D2C が今脚光を浴びている。

コーディネイトを起点にお客様を呼び込む ソージュ これぞ D2C

1.コーディネイトで共感を生む

 モデラートは自ら洋服を製造して販売もしているメーカーなのだけれど、彼女の話からは、旧態依然のメーカーに感じられる「モノを売り込む」という要素を少しも感じなかった。売ることよりも強く打ち出しているのは「コーディネイト」することである。

 この日、僕は話を伺うためにやってきたのは代官山にある「SOÉJU(ソージュ)」(上記写真)である。この場所にしても、お客様がコーディネイトをする為に存在している「サロン」であり、販売業務はしていない。第一、レジがない。

 それでは「お客様はどこで購入しているのか」と言うと全てネットである。つまり、メーカーが、ネットを介して直接お客様と結びついて商品を販売する D2CDirect to Consumer)なのである。

2.コーディネイト提案をブログで行い、まずは共感

 このモデラートは、SNSの広告で「コーディネイト」を消費者に提案していて、接点を作っている。とは言え、広告に直接、販売ページへのリンクを貼ることはしておらず、メーカーとして、売りたい気持ちをぐっと堪えて、彼らのブログへと誘う。遠回りだと言われようとも、ここにこの会社の信念がある。

 そのブログにはブランドとしてのポリシーとコーディネイトに込められた意味がぎっしり綴られている。だから、インスタを見て直感的に買うのとは違って、こちらは深く知って確かめて、購入に至る設計にしている。

3.コーディネイトに気に入れば体験しにお店に来てもらう

 それゆえ、出会うキッカケは通勤途中だったりするけれど、直感的に、そのコーディネイトを気に入れば、それでアクセスしてもらって、むしろリターゲット広告などで再度、訪問してもらう事に重きを置いている。

 何度か繰り返して読んで、次第に、ブランドコンセプトを理解し、その深さがわかってくると、購買意欲が高まっていき、最終的には皆、購入していくのだという。

 それだけまずは「コーディネイト」に勝負をかけている事が伝わるし、何をしたいかが真っ直ぐお客様に伝わる。そこが同社にとっての差別化要因として、際立っているところなのである。

コーディネイトと洋服が悩みを優しくフォロー

1.30〜50代は転機だからコーディネイトを必要とする

 お客様の多くは30〜50代。この時期は結婚や出産など節目を迎えるわけで、だからこそ、同社は「人生の変わり目で、スタイリストが寄り添います」とお客様に説く。

 節目で自分でも分からない自分の見せ方を、コーディネイトでサポートして、消費者の気持ちを背中で後押ししている。

だから、ブログによる熱意あるアプローチも意味を成す。しかも、その人々の「悩み」をうまく拾い上げ、コーディネイトと洋服がしっかりそれに応えているのも、注目だ。

2.対象が決まっているから商品もニーズに応えている

 例えば、一番ヒットした「コクーンブラウス(コクーン型の半袖のブラウス)」がそれを示す好例で、そこでのコーディネイトに添えたキャッチコピーが「もう一度、半袖を着たくなるブラウス」。

 30代に入ると、二の腕が気になり、半袖を着用するのが少し抵抗がある人が出てくるからこそ、このキャッチフレーズが刺さる。脇のところがゆったりした作りにしてあるブラウスで、気になる箇所を程よくカバーしている。

 ここで大事なのは、あからさまにそれをカバーしているわけではなく、「モードなシルエットが着たいから着ている」風に思わせる演出であり、それがコーディネイトの持つ特性を生かして、女心を掴む。

3.そして代官山のサロンへ

 そして、素材感、サイズ感、着心地などが気になる人は、冒頭説明した代官山の「SOÉJU(ソージュ)」というサロンに行くわけだ。ネットで販売する為に、固定費をかけて、敢えてコーディネイトにこだわるこの姿勢にこそ、これからのメーカーのあるべき姿なのではないかと思う。そして、このようなメーカーが出てくる事は、小売メインのお店にとっては脅威でもあろう。

 なお、この代官山のサロンへの訪問をネットで予約する際にはアンケートを行い、その診断結果に基づき、この場で、スタイリストが人それぞれにコーディネイトしてくれる徹底ぶりである。

 もし有料を選べば、この診断結果データもお客様が入手できるようにしていて、そこまでの拘りの強いお客様であれば、そのデータに基づき、少し冒険したものを提案してみるのだという。コーディネイトを通して、その人自身のステージを上げていくのだ。

4.顧客との接点はそれぞれの店で違う

 思うに、ネットは様々な垣根を取り去り、企業とお客様の距離を近づけた。だから、メーカーだって今までのように一方通行的なものは許されなくなり、顧客主役で商品を作ることが余儀なく求められるようになった。

 とは言え、何を持ってして、顧客主義に基づいた商品なのかと言えば、まだその答えは出切っていないのではないかと思っている。その点、このモデラートで特筆すべき点はそのお客様との接点、いわば「キッカケ」造りの材料として、「コーディネイト」を見出したところに先見の明があると思っている。

 お客様を知り、そこから逆算してメーカーとなり、お客様の共感を掴みつつ、製造から小売を通って、お客様への道筋を作ったところに未来へのヒントがありそうだ。この「キッカケ」はまだまだあるだろう。小売業やメーカーがチャンスを握る可能性の余地はある。

 だから今こそ自分たちのお客様の姿を見て、在るべき小売の姿、あるいはメーカーの姿を思い描いて、新たな時代に相応しい戦い方をしてほしいと切に祈る。

それでは、今日はこの辺で。

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