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母の日ギフトに“気持ち”を込める──楽天イベントで語られた「野菜をMOTTO」河野雄士さんの本音

 “ありがとう”を、もっと近くで伝えたくなる。そんな気持ちを乗せた母の日ギフトを、目の前で見て・食べて・選べる特別なイベントが横浜・MARK ISみなとみらいで開かれた。今回の舞台は、楽天グループが主催する「母の日グルメフェスティバル」。ネットでは伝えきれない“美味しさの体験”が、来場者と出店者のあいだに自然な対話を生み出していた。

 出店者のひとり、「野菜をMOTTO」店長・河野雄士さんは、このイベントに何を託したのか。そこから浮かび上がるのは、ギフトという行為に込めた“感謝を届ける”という商いの本質だった。

 オンラインとオフラインをつなぐOMO(Online Merges with Offline)型イベント「母の日グルメフェスティバル」は、ネットでは伝えきれない“美味しさの体験”を届ける試みだった。

1.その店は物流から始まっていた

 創業1806年。清水港のコンテナから始まった歴史を持つ老舗物流企業・鈴与。

「え?物流?」──そう思うかもしれない。でも、「野菜をMOTTO」とそのすべてはちゃんとつながっている。

 もともと鈴与グループの原点は、港でのコンテナ荷役作業。貨物の積み降ろしを担っていた人たちが始まりだ。荷物をおろせば、そこには倉庫が必要になるし、陸送も必要になる。鈴与はそれら一連の流れをグループ内で担うことで、物流を軸に事業を拡大してきた。

 そんな中、1929年に世界大恐慌が発生。多くの人が仕事を失う中、「自分たちで仕事を作ろう」と立ち上がり、食品分野に挑戦したのが、製造業としてのスタートだった。その結果、鈴与は日本で初めてツナ缶を製造し、海外輸出にも成功する。

 当然、食品を扱う会社となれば、卸先も増えていく。そうした流れの中でダイレクトマーケティングの必要性が高まり、2010年代に入りネット通販にも参入。気がつけば、物流から製造、そして販売まで──すべてが自然とつながり、現在の姿が形作られている。

2.野菜をMOTTOが母の日に込めた、感謝の記憶

 鈴与グループの一員として生まれた「野菜をMOTTO」は、“素材に正直なものづくり”を掲げて食品事業に挑んでいる。いまや、それだけで売上23億円を占めるに至った。これがまた奥が深くて、ネット通販をやり初めて、活路を見出したのが、このギフトというマーケット。

 店長・河野雄士さんが楽天市場でのギフト販売に本腰を入れたのは、「母の日」の一大需要期があったからだった。「実は、楽天の母の日が大きな転機でした。売上も一気に伸びて、存在感が出てきた」と話す。

 その背景には、“価格”より“価値”を優先したギフトづくりの哲学がある。ここに河野さんらしさが見えてくる。

 例えば、スーパーマーケットに並ぶ商品は、ある程度、原価が決まっている。なぜなら、顧客が購入するのは、他のスーパーとの兼ね合いと、自らのお財布事情を合わせたところで考えるからだ。そうすると、自ずと、原価は、ある一定のところで決まってしまうのが常識だ。

 ところが、河野さんは違った。「それでは物作りじゃない」と考えた。

 つまり、最初から良い食材を集めて、その原価に積み上げていく形で、どんな提案をしていくかにこだわったわけである。

3.本当のものづくりを追いかけた先に母の日ギフトがあった

 これがどれだけ難しいか想像できるだろうか。上記に示した通りだが、顧客があらかじめ購入する定価が一定であれば、それに基づいて、原価を決めざるを得ないわけだ。

 原価を上げれば自らの取り分(粗利)がなくなる。

 ところが、敢えて、その逆を行き、積み上げ式にしようという。ともすれば顧客が求める金額ではない価格を提示する可能性を秘めていて、そこは挑戦だ。

 だから、ギフトなのだと、河野さんの話を聞いて思った。つまり、単純に横一列で、商品を並べて判断されるのではなく、ギフトという付加価値をつけることで、積み上げ式の原価設定を実現させることに成功したわけである。

 日常、食べるものではなく、特別な思いを乗せて、贈るのがギフトである。だから、他と比べてどれだけ、相手にとって価値ある物を提供できるかに価値があるから、この原価の設定方法が、奏功する。なるほどと思った。

 その結果、価格は3990円を超えると売れ行きが落ちるなど一時的な影響もあったが、「本当に納得して買ってもらえるギフト」へと進化した。だからこそ、リピーターが増えて、会社を支える材料となった。

4.リアルな“試食”の意味──ECでは見えない顧客の顔

 一方、このイベントが意味を持つのは、ネットでは見えない“人の顔”が見えること。

 楽天グループのOMO企画室でイベントを企画・運営した渡邉紗衣さんは、「オフラインの場では、去年買ってくれたお客様が『今年も欲しくて来ました』って声をかけてくださる。こういう出会いは、データでは絶対に見えない」と語る。

 これが先ほどの河野さんの話とも繋がる。リピーターが増えることで、マーケットが広がる。

 どうしても、楽天側としても、Web上での購買体験を熟知しているが、リアルを知らない。それでも、あえてリアルの場を設けることで、“購買の文脈”を学び直しているとも言える。

 「全体のギフト購買は楽天内でもまだ少ない。だからこそ、ギフトを贈る習慣そのものを文化にしたい」。そんな思いが、リアルイベントという形になって現れた格好だ。

 もうひとりの運営担当・濱田絵里佳さんは「夢にも出るくらい、今回のイベントには魂を込めた」と笑う。彼女が描いたのは、ただの展示ではなく、出会いの場としてのイベント。実際、ブースを訪れた来場者とのコミュニケーションや試食体験は、“ただの買い物”を“記憶に残る贈り物”へと変えていた。

5:3ヶ月の準備、2人の情熱──運営側の「挑戦と試行錯誤」

 イベントの舞台裏では、会場の確保から出店交渉、各社との細やかな調整まで、色々なスタッフが奔走した。出店ジャンルや商品構成も、ただ集めたわけではない。来場者の体験をどう豊かにするか、細部にわたる工夫の積み重ねだった。

 楽天自身も、リアルイベントの可能性を模索している。

 「そもそも、これって本当に“OMO”なのか?」「楽天がリアルでやる意味って何だろう?」

 そんな根本的な問いを真正面から見つめながら、「オンラインとオフラインの最適なバランス」を議論し続け、ようやくこの日を迎えた。

 いくつかの出店者には、実際に会場に来てもらい、試食や体験の場を設けた。たとえば「野菜をMOTTO」のように、その場で店舗のスタッフと向き合える機会を用意することで、オンラインだけでは伝えきれない価値を来場者に届けた。

 そして、多くの出店店舗の商品も並べて、それらを試食できるようにして、購入するきっかけづくりを行う。さすが、売れている店舗なだけある。野菜をMOTTOだけではなく、南が丘牧場のアイスクリームを筆頭に、試食をしたら、本当に、どれも美味しかった。誰かに贈りたいと思うのも自然だ。そんな人のために、各商品には二次元コードを設置。

 スマホで読み取れば、そのまま楽天市場の商品ページへアクセスできる仕組みにしている。リアルな体験から、オンラインでの購買へ──いわば“食品版ショールーミング”のように、リアルの強みを活かしながら、購買行動への導線をつないでいったのだ。

6:“贈りたい”が未来をつくる──イベントのその先へ

 色々楽天にその舞台裏を聞いていると、、、

「普段は立場上、なかなか現場に出ることも少ないんですが──」

 そう前置きしつつ、「野菜をMOTTO」の河野雄士さんが、このイベントに懸ける思いを丁寧に語ってくれた。

 イベント出店というと、一方的に依頼されるイメージもある。ただ、「ECC(楽天の店舗サポート部門)の担当者が、一緒に考えてくれるんです。“こうやったらどう?”って提案してくれて、“じゃあやってみようか”って、一緒に形をつくっていく感じ。」

 そんな“同志”のような関係だからこそ、自然とイベントにも本気で向き合えるし、お互いの想いを引き出し合える。ここに、価値があるのだろうなと。単なる催事ではない。

 “売るため”ではなく、“届けたい想い”の延長にあった楽天との協業。それが、今回の「母の日グルメフェスティバル」を、単なるプロモーションで終わらせなかった理由かもしれない。

さあ、あなたは今年、誰に“ありがとう”を贈りますか?

 今日はこの辺で。

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