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リアル店舗の強みを活かすEC戦略──ヤマダデンキがau PAY マーケットで躍進した理由 BEST SHOP AWARD 2024

 リアル店舗の強みを、そのままECの武器に変え、しっかり結果を出した。まさにそれを体現したのが、ヤマダデンキだった。この日、僕は「au PAY マーケット BEST SHOP AWARD 2024」の発表会に足を運んだ。そこでグランプリを受賞したのがヤマダデンキ。執行役員・後藤賢志さんは、キャンペーンの活用が成功の鍵だったと語る。そして、僕が特に注目したのは物流の工夫だった。

1. au PAY マーケット BEST SHOP AWARDとは?

 まず、au PAY マーケット BEST SHOP AWARDとは何か?この賞は、年間で最も優れた店舗を選ぶもの。選定は、売上や成長率、顧客の支持などを総合的に評価して決まる。

  • 売上額:年間の売上実績が評価対象。
  • 売上成長率:前年との比較で成長した店舗を高く評価。
  • 顧客投票:利用者の満足度や支持を反映。

 また、新規顧客の増加も評価対象だ。売上だけでなく、成長性や顧客の支持も重視される。これにより、消費者にとって魅力的なショップが際立つ仕組みなのである。

 さて、話を戻そう。au PAY マーケットは出店型のモールだ。だから、それらは、お客様はカテゴリーや商品ごとに購入を決める傾向が強い。その中で、後藤さんが強調したのがキャンペーンの活用だったのだ。これが、他の商品より目立つ大きな要因になる。

 2024年の6月以降、何度か活用し、その都度伸びが良くなった。

 ただ、ここでは、単純にお得であることに加え、「いかに早く、確実に商品を届けるか」が重要な競争要素となっている様に思う。

2. リアル店舗を活かした物流戦略──全国の店舗が倉庫に

 特に、家電のような型番商品の世界では、価格が横並びになりやすい。そのため、差別化の鍵として、物流は重要な要因だ。

 ここで、ヤマダデンキが上手なのは、店舗で販売している在庫をECにも活用していること。

 全国にある店舗を物流拠点として活用することで、迅速な出荷を実現している。

 リアルの店舗の在庫をEC側が把握して、受注と共にそれを引き当てるわけだ。勿論、店舗在庫の中には、リアル店で盗難防止用のタグがついているものもある。だから、それを出荷してしまわないようにするなどの配慮は必要だ。最近は、この部分も徹底して、顧客の満足度も高い。

 加えて、全国津々浦々に、店舗があるから、注文が入った際に最寄りの店舗から出荷する仕組みを取り入れている。だから、配送時間の短縮と在庫効率の向上を図ることができるわけだ。

 さらに、最近、特定の店舗では売り場の一部を倉庫化し、EC出荷を強化する動きも見られる。

3. キャンペーンと連携したEC強化

 例えば、つくば店では店内の一部を倉庫化し、出荷拠点としての機能を持たせた。また、神戸北店では売り場面積を縮小し、その分を倉庫スペースに充てることで、リアルとネットを融合させた新しい販売モデルを実験している。

 その土台があるから、キャンペーン施策がフィットする。ヤマダデンキは、従来そこまで積極的にEC向けのキャンペーンを展開していなかった。しかし、ECコンサルタントの後押しを受け、au PAY マーケットでのキャンペーンに本格的に取り組んだことで、大きな成果に繋げたのである。

 例えば、2024年の6月よりコラボ企画を積極的に展開。クーポン配布やポイント還元施策をタイミングよく打ち出し、ECでの売上を飛躍的に伸ばした。

 この結果、au PAYマーケットでのEC売上は前年比1.5倍に成長し、au PAY マーケットにおけるヤマダデンキの認知度も向上。新規顧客の獲得が加速し、リピート購入へとつながる好循環が生まれた。

4. リアル店舗のブランド力が生む信用とリピート購入

 また、それらの施策は、自らの予算を持ち出しでやっている。というのも、彼らが強調するのは、au PAY マーケットにおいて、ヤマダデンキの存在感を出していくことの大事さがあるからだ。特に、家電は高額な買い物が多いため、信頼性のある店舗で購入したいという消費者心理が強い。

 上記の通り、ECにおいては、価格や配送スピードも重要だが、安心して買えるかどうかも購買の決め手となる。その点、全国にリアル店舗を展開し、長年の実績を持つヤマダデンキは、ECでも消費者の信頼を得やすい立場にある。

 この信頼が、新規顧客の獲得だけでなく、他カテゴリーの商品へのリピート購入につながった。例えば、家電を購入した顧客が、その後、プリンターのインクやアクセサリー類をECでリピート購入するなどの流れが生まれているとか。

5. au PAY マーケットと他のECモールとの違い

 後藤さんが強調する、“au PAY マーケットにおいて”と言う部分も見逃せない。というのも、au PAY マーケットは、楽天やAmazonとは異なる経済圏を持っている。

 楽天は、通信費を安くする代わりに、モバイルユーザーに高いポイント還元を行い、楽天市場などでの買い物を日常的に促す仕組みを作っている。これにより、ポイントが循環しやすくなり、リピーターを増やす戦略をとっている。

 一方、Amazonはプライム会員制度を活用し、会員向けの特典を充実させることで、ユーザーを囲い込み、指名買い(欲しい商品を決めて購入)しやすい環境を整えている

 一方で、au PAY マーケットはKDDIの通信事業と連携し、金融サービスを絡めることで、ポイントの元手を作り、それを循環させるモデルを採用している。最初から、ポイントの元手があるから自然と、それを他のジャンルで活用する様に促すわけだ。

 だから、au PAY マーケットでもヤマダデンキの商品が買えると言うことが、結果、回り回って、他の経済圏より優先的に、購入してもらえることになる。確かに、市場規模としては楽天やAmazonに比べると小さいが、一度認知されれば、ポイントを活用して購入する流れが生まれやすい。

6. さらなる展望──店舗とECの融合を深化させる

  この点で、ヤマダデンキはau PAY マーケットの特徴を理解し、EC強化を進めたことで、相乗効果を生み出すことに成功した。

 ヤマダデンキは、リアル店舗の影響力が圧倒的に大きく、ECの売上比率は家電業界の平均(約40%)には遠く及ばない。一方、ヨドバシカメラは、リアル店舗とは異なる商品もECに展開し、常に出荷できる体制を整えることで、EC比率を高めている

 それらに比べると、ヤマダデンキは、リアル店舗の商品をそのままECにも活用し、店舗を出荷拠点として運用することで、生産性の高いEC戦略を展開している。方向性が違うと言えば、そうだろう。ただ、実際、リアル店舗とECでは売れ筋商品に違いがあるのも事実。そのため、倉庫と一体化した店舗を取り入れ、リアルとの融合を念頭に入れ、ECの強化を進めている

 今後の展望として、配送オプションの充実にも取り組みたいと考えているようだ。僕らは配送に関して言えば、無料か有料かの選択肢しかない。後藤さん曰く、通常配送に加え、追加料金で深夜配送ができるサービスなどがあれば、自らの付加価値は高まるのではないか。

まとめ:リアルの強みを活かしたEC展開の可能性

 これからを掛け合わせて、柔軟性持たせ、au PAY マーケットでの存在感を高めていけば、いいサイクルで商品が売れ続けるのではないかと考えている様だ。

 おわかりいただけただろう。ヤマダデンキの成功は、単なるEC施策の強化だけではなく、リアル店舗の持つ強みを最大限に活かしたことにある。

  • ・全国の店舗を活用した物流体制
  • ・効果的なキャンペーン施策の導入
  • ・リアル店舗の信頼を活かした新規顧客獲得とリピート戦略
  • ・au PAY マーケットの特性を理解した戦略的展開

 これらが相まって、ヤマダデンキはEC市場において大きな飛躍を遂げた。ただ、先ほど書いた通り、まだ考え方次第で、そのインフラを活かせる可能性はあって、そこに伸び代がある。今後、さらなる進化を遂げるヤマダデンキのEC戦略に注目したい。

今日はこの辺で。

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