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全国ECサミット2024: ネットショップの未来を切り拓く学びの集大成

 感じたのは同じ目線で教えあい、学びあう学校のような場所。それが「全国ECサミット2024」。ここで、僕は集まる一人一人の表情から、店舗の今を感じることができた。店舗の集まり、J-FECとTEK、そしてEBSが推薦する講師を集めて、拠点として選んだ場所はメルカリ。実はメルカリは、ネット通販に風穴を開けようと動く当事者。ここからストーリーが始まる。一方で、その後の店舗「HAPPY JOINT」のトークでは、現場目線の泥臭い話も飛び出す。武田さんの理論では気づきを得る。等身大で語りあう、体温こそがこの集まりの魅力だろう。

メルカリShopsの進化と可能性

1. メルカリの歴史と成長の軌跡

 メルカリといえば、2013年にフリマアプリとしてスタートし、そのイメージが定着している。ただ、2021年にはBtoC向けの「メルカリShops」を導入した。メルカリは個人間取引(CtoC)で成功を収めた後、企業向けのBtoC領域に参入。ユーザーに新たなショッピング体験を提供している。

 メルカリShopsはわずか数年で成長を遂げた。月間2300万人の「メルカリ」ユーザーを活用して、商品を手軽に販売できるプラットフォームへと進化。メルカリはそのサービス内容に胸を張る。

 メルカリShopsの特徴は、既存のメルカリアプリ内でBtoCの商品が販売できる点。

 ユーザーはCtoCの個人間取引と同じ感覚で、BtoCの商品も購入できる。そのため、企業にとっても大きな露出機会を得られ、それがメリットとなる。また、企業向けの販促機能が充実し始め、タイムセールやクーポン、CSVの活用による商品管理も容易となった。

 さらに、初期費用や月額費用がかからず、商品が売れた際にのみ手数料が発生する。その手軽さも、参入障壁を下げる要因となっている。

2. 成長を支える循環型経済

 ただ僕が一番、関心を持ったのは、「個人が物を売り、その売上金で新たに商品を購入する」という循環型の経済が成り立っている点である。

 この仕組みにより、ユーザーがプラットフォーム内で継続的に取引を行い、さらなる売上を生み出すことができる。この循環型経済は、メルカリが他のECサイトやモールと一線を画す理由の一つ。今後も成長が期待される要素。この点は、メルカリの戦略顧問に就任した高橋理人さんも強調していたのが印象的だ。

 とはいえ、メルカリと聞くと中古品の取引が主流。そんなイメージが強いかもしれない。しかし、実際には新品商品の取引が全体の約63%を占めている。特に最近はBtoCでの新品販売が急増している。

 その背景には、グルメやファッション、家電など多くのカテゴリーで新品商品での広がりが生まれているから。さらに新品商品を売りやすくするための機能強化を進める一方で、不十分といわれたインフラ部分の改善に着手。送料設定やカート機能、広告機能の導入などが予定されている。

3. 広告とプロモーションの新展開

 広告事業がスタートしたのは、彼らのトピックといえよう。検索連動型広告などの機能が導入されるのだ。これにより、企業はターゲット層に向けた広告を出稿しやすくなり、売上を拡大するチャンスが広がる。

 メルカリの月間アクティブユーザー数(MAU)を活用した広告施策は、企業にとって新たなマーケティングツールとして注目されるはず。そう彼らは熱っぽく説くのである。

 これは、個人的な印象だが、彼らの脇を固める人たちの中に、楽天出身の人が多いのが特徴。先ほど、説明した高橋理人さんもそうだ。

 それが今の成長を後押ししていると睨んでいる。BtoC ECに関しての知見がある。それもさることながら、今、「楽天市場」に出店している店舗との信用が大きいのではないか。長らくECCなどで苦楽を共にした経験は伊達ではない。かつて共に売上を築いた仲間が、新たなフィールドでまた、新しい売上を築こう。その熱い動きはいつ生まれてもおかしくない。信用は絶大なのだ。

 それでいて、土台のユーザーが異なる。「楽天市場」出店店舗にとって、新たにやる価値はある。そう考えても不思議ではない。

HAPPY JOINTの挑戦と成長の物語 ~SNS施策で成功を掴む~

1.商品ページ制作から始まる物語

 続いて、登壇したのは「HAPPY JOINT」。数々の困難を乗り越えながら、EC事業において成功を収めた店舗である。

 説明をした「HAPPY JOINT」の山川健さんは、2012年から商品ページの制作を10年以上にわたって手掛けていた。元々、映像制作をしていたが、その経歴からECサイトの運営にシフトした。

 当時はまだ技術的なコストが高かった。そのため、映像制作に関わることができず、商品のページデザインに取り組むようになったのだ。ここがスタート地点だ。

 「HAPPY JOINT」の事業の特徴は、少額の資金を使ってアリババから商品を仕入れ始めたこと。しかし、初期段階では品質の問題に苦しみ、不良品が多発するなど、次々と課題が発生したことも明らかにした。それでも、SNSの運用や、楽天市場での販売戦略を活用し、徐々に売上を上げることに成功する。

 個人的に注目した部分では、澤田有希さんの話す「SNS」施策である。中でも、インフルエンサーを積極的に活用した点は特筆すべきかなと思う。

 HAPPY JOINTでは、楽天市場の公式インフルエンサーだけでなく、商品に適した一般インフルエンサーも積極的に活用している。この辺は、コストを抑えようという切実な生の声だなと痛感する。ここからの話は、楽天も目くじらを立てないであげてほしい。

2.SNSとインフルエンサーの活用

 彼らは、楽天ROOMのオフィシャルインフルエンサーではない人々にも声をかけ、そのフォロワー層にアプローチすることで、幅広いターゲット層にリーチを広げた。

 選定にあたっては、商品に関連するハッシュタグを活用し、投稿内容の質やフォロワーとのやり取りを重視した。

 例えば、HAPPY JOINTが販売するソーラーライトに関連するインフルエンサーを探す際は、どうだろう。

 「#ソーラーライト」や「#ガーデンライト」などのハッシュタグから、商品の購買につながりそうなアカウントをリサーチ。そこから、適切なインフルエンサーを見つけ出す工夫がなされた。

 面白いのは、インフルエンサーとの関係を深めるために、初めから商品紹介をお願いするのではないということ。まずは、日常的なコミュニケーションから入る。そして、関係構築をしていく中で、商品をお願いするのである。

 インフルエンサーが普段の生活を投稿する際に、コメントを通じて自然な交流を行い、長期的な信頼関係を築く。その特性を活かして、HAPPY JOINTの商品をより自然に紹介してもらう流れを作ったわけである。

3. ギフティングとクーポン施策

 その上で、楽天スーパーSALEの際に、合計25名のインフルエンサーにギフティング(商品を無償提供するPR施策)を行い、インスタグラムでのPRを依頼した。特にシークレットクーポンを活用し、インフルエンサーが自身のフォロワーに限定クーポンを提供する形で、販売促進を図った。

 結果、楽天市場のアクセスが16%向上し、実際の売上にも大きく貢献したのである。

 ギフティングを通じて行われたSNS施策では、商品の魅力だけでなく、インフルエンサー自身の生活に溶け込む形で商品が紹介されたのが奏功している。これにより、フォロワーからの信頼感が強まり、クーポン利用による購買意欲を高める効果が生まれるというわけだ。

 しかも、クーポン施策では、インフルエンサーごとにシークレットクーポンを発行。それぞれのフォロワーに特別感を感じてもらえる仕組みを取り入れた。

 そして、インフルエンサーが発信する投稿やストーリーのリンクから、楽天の商品ページへ直接アクセスできるよう導線を整える。そうすることで、スムーズな購買体験を提供している。

4. ストーリーとハイライトを活用した顧客教育

 さらに、インスタグラムのストーリー機能も、HAPPY JOINTのSNS施策において重要な役割を果たしている。特に、インフルエンサーがシークレットクーポンを配布する際には、ストーリーを活用してフォロワーにアピールし、インスタグラム上での露出を最大化した。

 一方で、HAPPY JOINTの公式アカウントでは、商品の使用例をストーリーや投稿で定期的に紹介している。実際に商品を利用しているお客様のリアルなフィードバックを共有しており、これがプラスに働く。

 要するに、フォロワーは商品の魅力や使い勝手を直感的に理解でき、購買意欲が高まるのである。

 また、商品レビューを通じて集まったお客様の写真をSNS上で共有する。そうすることで、より多くのユーザーにリアルな使用感を伝え、信頼性を高めている。

5. 保存数が高い投稿の広告展開

 加えて、広告運用においては、保存数が高い投稿に焦点を当てている。

 保存数が多いということは、それだけユーザーが後で見返したいと感じた投稿であることを意味する。だから、フォロワーの獲得や商品の認知度向上に貢献している。HAPPY JOINTでは、保存数の多い投稿をそのまま広告に転用。日々の広告運用を効率化しているという。

 具体的には、1日あたり500円という少額の広告費で、保存数の高い投稿を広告として運用し、1日に15~20名ほどの新規フォロワーを獲得している。広告のリンク先はHAPPY JOINTのプロフィールページに設定されており、フォロワーに直接アクションを促す仕組みが整っているのである。

 というわけで、HAPPY JOINTは変貌を遂げた。ある意味、手当たり次第で、自転車操業感もなくはない戦略から、現実的で理にかなったものへと変化したのである。それでも、その苦しい原点があるからこそ、堅実なのだ。ここが、多くの店舗にとって利益があるところだろう。

 勿論、まだまだ、課題もある。けれど、その現在進行形の様子を垣間見て、共有し合う場こそ、この「全国ECサミット」に相応しい。今後の彼らの飛躍に期待すると共に、大きな実績での発表が楽しみである。

武田さんのビジネス成功法則:従業員と共に歩む経営の極意

1.チームワークを最大化させる3つのステップ

 そして、ブルーランタン合同会社の武田和也さんの話に至る。彼の話は、単にビジネスの拡大や利益追求にとどまらず、従業員との協力関係を大切にした経営手法にある。彼が強調したのは、成功のためにチーム全体で同じ目標に向かって進むことが不可欠だということ。

 そのためには、以下の3つのステップが重要だと説明する。

1. 目標設定 

   経営者と従業員が共有できる明確な目標を設定すること。売上や利益目標に具体的な数字を定め、チーム全員がそれを目指して努力できる環境を整える。

2. 成果の可視化

   従業員一人ひとりの成果を見える形にすること。これにより、誰がどのように貢献しているのかが明確になり、チーム内での連帯感が強まる。

3. インセンティブの設計  

   適切なインセンティブを設定し、従業員のモチベーションを高める。報酬だけでなく、仕事のやりがいや達成感を提供することも重要。

2. PDCAサイクルとフレームワークの活用

 その上で、経営の中でPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を強調している。

 これにより、ビジネスが継続的に改善され、成功の可能性が高まるということになる。ただ、売上や利益目標を達成するためには、従業員のモチベーションを高めるだけではなく、現実的なアプローチが必要。

 そこで武田さんは、特に以下の要素を強調している。

1.「営業利益」の最優先

   経営者にとって最も重要な指標である営業利益を目標とする。そして、チーム全体がこれを達成するために動くべきだとしているのだ。スポーツチームが勝利を目指すのと同様に、ビジネスチームも同じ目標を共有することが必要。

2.インセンティブ設計

   従業員のパフォーマンスに応じた報酬を適切に設計する。そうすることで、モチベーションを維持するのである。単なる年次ボーナスではなく、実際の貢献度に応じた報酬を提供することが重要。

3. チーム全体で勝利を目指す経営の考え方

 要するに、チーム全員が同じ目標に向かって努力すること。

 この重要性を強調し、経営者だけでなく、従業員も会社の成長に貢献できるよう、組織全体で取り組むことが求められる。個人の利益よりもチーム全体の利益を優先する。そして、従業員が自己犠牲を払ってでも会社に貢献する環境を作り上げていくこと。武田さんは、その大切さを説く。

 改めて、経営者としてのリーダーシップを発揮するために必要なのは何か。それは、従業員との信頼関係を築くこと。それには単に命令を下すのではなく、従業員が自発的に動くように促すこと。

 そうやって強力なチームを作り上げることが、事業を安定させていく上での鍵だと語っている。それらは仕組みによってなされるのである。

 多岐に及んだ「全国ECサミット」の内容であったように思う。

 「メルカリShops」に見られる新しい動きの共有。そして泥臭いけど、地道に上り詰めた店舗の話。更には、理論的な部分で語られる経営。今の店舗に必要な視点が、集まる店舗同士、同じ目線で学校のようにして、教え合い、学び合う。これが「全国ECサミット」の真骨頂だと思う。

 語弊を恐れず言えば、喋る側も、聞く側も、ある意味、素人であり、専門家である。でも、いずれもその現場を知っている。ここがこの集まりの意義ではないか。やや荒削りな部分もある。けれど、だからこそ、体温の伝わる、彼ららしい集まりになったのではないかと思う。

 今日はこの辺で。

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