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ショッピングは、AIによってセレンディピティをもたらす拠点となる Rakuten Optimism 三木谷さん講演

 僕は「セレンディピティ」という言葉を思い浮かべた。Rakuten Optimismで楽天グループの会長兼社長 三木谷浩史さんが話している内容を聞いてのこと。「セレンディピティ」とは、「思いもよらなかった偶然がもたらす幸運」。それは、リアルの専売特許だった。けれど、AIの力によってネットでももたらされるのだ。

“伝送する“ことを効率的に

 そこではネットという概念すらもうなくなるかもしれない。インターネットとそうでない世界が繋がりあった時に、生まれる知識やそれに基づく行動。それについて、三木谷さんは言及し始めたのである。

 少々、小難しい話になるけど、彼はニューロンという言葉を用いて、AIについて説明している。そもそも、それは神経を構成する細胞のこと。脳から指令を受けて、細胞から細胞へ刺激を「伝送する」。僕らはそれを感じ取っているわけだ。

 つまり、それに近いのがAIではないかと。

 AIは人間で言うところの「脳」のようでもあり、僕らの日常にあらゆる行動を起こすための知識や行動のヒントを「伝送」して、それを触発する。だから、そのAIの精度を高め、日常に「伝送する」内容を、どれだけ効率化していけるか。そこを追求する。AIで、今までにない感動を生産性高く、手繰り寄せることができるか。その部分で、楽天は挑戦していくと三木谷さんは話す。

AIの価値を最大化させる土壌でAIを進化させる

 そう考えると、楽天のやろうとしていることは壮大だ。とかく脚光を浴びがちなモバイルへの投資も、意味合いは異なる。単純に、通話料金を下げようとか、ネット環境を安売りしようなど、目先の次元で話しているのではない。そういった世界を作り上げるための土台作りをしているのだということになる。

 モバイルがそれを発揮する手段として最適。そこへの敷居が低くなれば、皆が傾れ込む。本当のスタートはそれからだ。

 フックとなるのは言うまでもなく、楽天IDデータ。それは幅広いジャンルの消費情報だけではく、モバイル加入者の情報も入って、生活そのものを把握できる。だから、AIを介して、そのデータをもとに、あらゆる部分の「伝送」を効率的に行える。それが便利になれば、利用者の利するところになる。そうなれば、更に、集まる人が増えて、データの精度も高くなって、新たな楽天のビジネスの核が構築される。

 この精神を軸に、彼らもまた自らのビジネスで最大化させるべく、AIの開発を行う。それが「楽天AI 7B(セブンビー)」だと説明する。世界で用いられているAIを、大動脈の「基盤」と考えるなら、それを最大化させるために派生したAI。小ぶりであるけど、必要なもの。「楽天AI 7B」はAIの真価を発揮する上で大事な日本語の処理という部分において、高い精度を誇る。

 人間の会話をいかに忠実に取り込めるかが重要だから取り組む意味がある。

実用性を伴う環境で実用度合いを高める

 ここまで形を作った上で、実際に使いこなす環境を作り出す。

 AIを進化させるために具体的な目標設定を行い、社内で率先して推進していく。それが彼らのいう「トリプルトゥエンティー(20)」なのである。具体的には「マーケティング効率」「オペレーション効率」「クライアント効率」を20%上昇させる。

 社員が実践してその目標を突破した時、使いこなされたAIは他へと横展開していく。

 それは自ずと楽天市場などの店舗や楽天トラベルの宿泊施設、その他、関連企業に広がっていく。世界の最先端のAI技術と彼ら独自のAI。そして、そこに向き合う姿勢と実績によって、AIは進化する。

 お客様へのサポート、流通に関する部分など、AIによって多くの課題を解決できるようになれば、すべての事業者のメリットになる。AIの元に、消費者と作る経済圏はさることながら、企業同士でつながり合う経済圏も生まれる。

 その片鱗は一部の企業にも見られる。木下グループは、楽天モバイル8000台をベースにDXを推進しているけど、いずれ、そういう意味での進化も後押ししていくのだろう。

当然にして楽天のメニューの活かし方も変わる

 そして、何より消費者の環境が変わる。これまで、楽天においても、それぞれのサービスを個々に利用。その目的を果たしてきたが、これも生産性が高い動きとは言えない。

 だから、そこにもAIによって変化の波が押し寄せる。それを三木谷さんは「ユニバーサル・コンシェルジュ」というキーワードで説明した。楽天には「楽天市場」「楽天トラベル」など数多くの事業が存在するが、それらを“包含する”サービスを近日中、発表する。

 どういうことか。

 カテゴリーや検索を使うわけでもない。そこではこんな風に声をかけるのである。

 「タルトを作ろうかな。タルトにあう薄力粉を教えてください。そうだなぁ500円以内がいいな」。すると、こんな表示がなされる。

 先ほどの日本語の処理の精度の高さゆえ、誤字がない。それが、生成AIのポテンシャルを引き上げて、的確な答えを導き出す。それも会話のようにして。まさにコンシェルジュである。

 それゆえ、これらのやり取りは、僕が冒頭に書いた「セレンディピティ」という言葉に繋がってくる。

セレンディピティな体験へ

 例えば「還暦を迎えた両親に何をプレゼントしたらいいだろう?」。そう問いかけたとしよう。

 その答えは、必ずしも、花束などに限らないはずだ。

 時に、「体験ギフトなどはいかがでしょう?」という提案をもらうことだってある。つまり、楽天市場に限らず、楽天トラベルのメニューもまた、プレゼントの範疇に入ってくる。AIによって思いがけない選択肢が生まれ、より満足度の高いプレゼントが実現する。

 つまり、モールの進化はただ集めるだけではない。思いがけない商品などとの出会いを創出する場へと進化していくのだろう。だから、このように買い物シーンすら、その標準を変えていくことを示唆している。

 それを聞いて、僕は「セレンディピティ」という言葉を思い浮かべたのであり、これが不思議と、先ほどのニューロン(伝送する)の例えに繋がってくる。

 あらゆる知識を蓄え、また、それに対する回答にまつわる素材(商品)もまた楽天が持っている。だから、それらを想いのまま、思う通りに、欲しい“ものごと“を導き出して、繋げてくれる。

 余談だけど、体験ギフトの気づきをくれたのは、Rakuten Optimismの「フューチャーフェスティバル」コーナーでAIの説明をしてくれたシンガポール在住のアジア系女子社員である。彼女はこのAIの精度を高めるために、楽天の海外支社で奮闘している。そんな多様な才能が集まり、これまでにないイノベーションを起こそうとしている。

あらゆる“伝送路をAIにより効率化する

 偶然かつ必然的な引き合わせを、三木谷さんは「伝送路」と表現する。それを自由に制限なく、あらゆるところに働きかけていければ、想像もしなかったショッピングすら、エンタメのような体験となって展開される。

 それは事業においてもそう。モバイル関連ををハードウェアではなく、ソフトウエアを用いて、仮想で行なっている理由は、そこにある。AIが自らで必要なデータに基づき、ネットワークをデザインし、マネージメントできることで、圧倒的にコストが下がる。その利点を利用者に還元し、利用機会を広げるほどに「セレンディピティ」が起こる。

 かくしてネットとも言えない、リアルとも言えないところでビジネスが成立する。

 今までのネット通販は検索なり、カテゴリーなどから商品を探して、購入していた。それは単細胞で、必ずしもそれだけではなくなるだろう。ただ変わることのない本質は、商品力である。だから、商品力に誇りを持ちつつも、その商品はどういうシーンで求められるか。その視点を今のうちから想起して、ページに織り込んでおくのが吉と出るだろう。

 三木谷さんは何度となく“伝送”という言葉を繰り返した。確かにAIによって、その伝送が縦横無尽に走り続けるほど、「セレンディピティ」は起こるだろう。そして、思いがけない商品との出会いによって、今までなかった感動を、ネットともリアルとも言えない仮想空間で、巡り会える日がやってくるのだ。

 今日はこの辺で。

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