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買い物を変える 新たに創る、シナブル代表取締役 小林裕紀さん その傍にエンジニアがいる理由

 一昔前なら、ものづくりをする職人のようなもの。エンジニアなしに現代の“ものづくり”はできない。起案する人間が、エンジニアと頭の中身を一緒にして創り上げる環境を作れるか。そこに尽きる。お客様目線に立って一歩先回りして、エンジニアと共に新しい世界を創ってきたのが、シナブル代表取締役 小林 裕紀さん。彼の人生を紐解くと、その必要性と共に、現代で、ゼロイチを生むヒントが見えてくる。

クリエイター気質であり経営者である

 時に、感覚的な話も小林さんはするけど、寧ろ、僕にはその部分が共感できるものだった。

 「一度は創ったものでも、積み木をまるでバラバラと完全に崩すように、中途半端に残さないほうがいい。それからまた、感覚として残っている頭の中のイメージを描きながら、もう一度、ゼロから創り上げていく。すると、そのプロダクトは、以前にもまして、本当に良いものへとブラッシュアップされていく」。

 いわば、感性を重んじるクリエイター気質がありながらも、それでいて経営者でもある。なぜ、そうなのかはわからない。けれど、だからこそ、エンジニアの才能を、上手に奏でながら、お客様との間で、一つの答えを導き出すのが、上手である。

 そんな人だから、さぞかし、志は高かったのかと思えば、のっけからズッコケた。

 「いやー、社会人になる時は何も考えていませんでした(笑)。学校もそれなりのレベルでしたし、周りの皆も優秀でした。推薦で決まっていく友達も多い中で、自分だけ、就職活動をしていなくて。合同説明会に行って、話を聞いたその1社に入社したんです」。

プログラマーとの距離が近づくきっかけ

 うっすら社長になりたいという夢はあったようだが、人の輪の中に入って何かをするのが得意ではないからというのが面白い(笑)。そこで入社した会社は中小規模のソフトウェア会社で、勢いはあった。

 彼は理系ではあるものの、当然ながら、開発に携われるわけもなく、クリエイター気質の片鱗も見えない。そこは自社ソフトウェアを開発して販売する会社で、新たなサービスが作られたばかりだから、彼は営業として、採用された。

 その会社は、官公庁にツテがあった。だから、関係性を辿って売り捌いていたが、数には限りがある。そのうち、自ら志願して、飛び込み営業を行ったというのは、彼らしい。気がつけば、全省庁に行っていたとか。

 決まったルートで決まったやり方で売るのではない。飛び込み営業をしたからこそ、その実態に合わせて、相手の要望を受けながら、対応していく必要性があった。それで、そのプログラマーとの距離感も近づくことになる。

 新しいサービスは、統計系のサービスだったので、管理部署に持ち込み、交渉する。興味を持って貰えば、データをもらって、レポートを出して、その性能を知らせる。彼にとってこの経験が大きかったのは、製品自体の質が高かったことと、それらの製品を自前で作っていたことにあった。

今も師匠と慕うその存在が今に続く

 だから、プログラマーとの距離も近い。二人三脚で製品を作り上げたのが、当時のプログラマーで、彼が師匠と慕う存在である。この出会いが、エンジニアとの接点を重んじる彼の原点へと繋がる。

 「どんな人なのですか?」

 僕がそう尋ねると、「お客さんのいうことについては常に気にしている人」だと語る。

 なんともシンプルな答えだ。ちなみに、70代を超えたその方は、今もまだ現役でプログラマーとして活躍中。 変化するお客様のニーズに今も忠実に向き合い、時代を踏まえた答えを出し続けている。

 つまり、小林さんは、営業だけではなく、プロダクトマネージャーとして、お客様の要望をダイレクトにそのプログラマーに伝えることで、製品の質を上げていった。もしも、このプログラミングを全く異なる外部の会社に依頼していたら、この環境は作れなかっただろう。

ゼロイチではないけど、ゼロイチに活きる動き方

 結果、この経験が形を変えて、ゼロから一を創り上げる上でも、活かされている。その証拠にシナブルのソリューションだって、何もないところから作り上げて、今や多くの取引先に恵まれている。

 その本質は、ずっと変わることがない。それが、おそらく、彼の経営手法にも直結している。だから、僕は、何か新しい提案をしたい人に、彼の言葉は、ヒントとなるに違いないと思ったわけである。

 多分、過去の話に触れたくないのだと思うけど、これを抜きに、彼について語れないので、敢えて、書かせてもらう。以前、その後、入って、彼が代表を務めるまでにいたったECのプラットフォームの会社でもそれは発揮された。

 就任時、赤字でいつ倒産してもおかしくないところからのV字回復を果たした。彼曰く、幸運なことに、その時も製品はよくできていた。だから、ある意味、大事なのはマネージメントの方だった。紆余曲折あって、最終的に残った社員の7割は、エンジニアで占められ、彼は奮闘をしていく。

出逢いからその後の繋がり全てにエンジニアの発想が寄り添う

 それによって何が変わったのか。当時は、別でそれらの商品を販売してくる人たちが、外にいた。だから「売ってきた後」からが彼らの出番。システム構築における手入れに加え、コンサルタントとしての役目も果たしていた。それを、小林さんは、その会社が自ら販売も行う方向へと転換させた。

 エンジニアに仕様書を作ってもらい、それに基づき、自ら営業していく。何より、その方が導入後、スムーズで、そのサービスと相手の状況が自然に、シンクロする。身の丈に合わせたレベル感で、お互い、必要なサービスに集中させて、堅実に成長することができた。まずは、ここが大事である。

 そして、彼が強調するのが、大事なのはプロダクトマネージャーの力量ではなく、エンジニアそのものであり、彼らとの関係構築なのだ。

 ここでまた、話が戻ってくる。彼は、新卒時代、師匠と慕うその人との出会いで学んだのは、常にお客様の声に敏感に反応して、その声をシステムに落とし込むこと。それに関連して、小林さんはこんなことをポツリという。

自分で作ってきちゃうんですよね

 「優れているエンジニアというのは、自分で作ってきちゃうんですよね。」

 その師匠もそうだが、とにかく「まずは作ってしまう」のである。エンジニア側の言葉に「どう作ればいいのですか?」という言葉がないのである。

 とはいえ、それはその師匠がいたからできた話。そんなエンジニアを育成するのも大変ではないか。「確かにそうですね、百人いたら、一人か二人か。その程度」と小林さんも笑う。

 でも、それは天才を見つけてくることではない。勿論、ある程度の才能などもあるだろうが、エンジニアとの向き合い方にこそ、それを乗り越えられるヒントがあるのだ。

 「例えば、最初の会社は、それほど大きな会社ではない。だとすれば、提案する時、他人が難しいと言っているようなことを、受注していかないと、自分の食い扶持はなくなる。そんな私たちに必要なのは、難しいことを簡単に整理して、まとめていくこと。すごく本質的な作業。だから、相手の考える一手先で提案ができて、喜ばれる。言われたものをそのまま、見積もるということではありません」と小林さん。

 先ほどの積み木の話が妙にしっくりくる。創り上げる姿勢が強い。

経営者と見ているもの自体はまるで同じ

 従来のイメージにありがちな、エンジニアとは違う。営業がとってきて、あとはエンジニアに任せる。エンジニアもまた、ただ請け負うことに終始する。その手の話とは、まるで逆の発想である。

「だから、ある意味、経営者に近いんですよ」とも小林さん。

 こういうことをやりたいんだと未来絵図を広げる。それならば、こういう風なUI、UXだったらどうだろう。そうエンジニアは口にして、もう次の瞬間には、作ってくる。そこで可視化されているという現実があるから、ブラッシュアップされていく。ゆえに、自然に未来絵図を広げた人のやりたい世界が、エンジニアの才能を最大化させて、具現化されていくのである。

 だから、取引先が提案依頼書を出してきても、「いらないでしょ?」とエンジニアが断ることすらある。「そんな難しいこと、必要ない」と。明らかに全体が見えている証拠である。

生産性高く、事業が回っていく

 遡って、新卒時代。最初入った会社は製品ができていた。そして、赤字におちいった会社でも、製品はあったが、お客様の声をヒントに、エンジニアの発想を最大化させて、答えを導き出す姿勢は同じである。

 売る相手の要望をダイレクトにエンジニアに伝えて、エンジニア側のアイデアを尊重していく。営業の生産性が高いのは、相手側の満足度の高さゆえ、取引先が他の取引先を連れてくるからだ。また、転職してその担当者が移った先でも使いたい。そんな声も多い。つまり、取引先と作り上げたその仕組みそのものが、その会社の販促材料となったわけである。

 しかも、外注を使っていない分、利益率も良くなって、エンジニアを増やしていけば、できることの幅が大きくなる。だから、経営基盤が安定してくる。そういうことなのだ。

 ただ、ここには繊細に働くバランスがある。彼のクリエイター気質の経営手法らしいと感じさせる所以でもある。

 要するに、人を多くすれば解決するものではないのだ。語弊を恐れずいえば、新たなものが作られる時、それは属人的にならざるを得ないとまで言っている。人を入れすぎると、追うべき点に対してのアプローチが様々飛び交い、薄まって、完成度が低くなるというわけだ。そのバランスを見ていくことが、経営上、大事なのである。

分散と統合、シンプルなその言葉から広がる設計

 それが、以前社長を務めた会社の黒字転換における小林さんにとっての肝だったのであろう。だから、その延長線上に、シナブルがあるわけだ。ゼロから生み出すことも、その経営手法と根本は同じだから。世の中になかったサービスを提案しつつも、経営は盤石だ。

 改めて、シナブルのやっていることが気になった。要するに、顧客のサイト内での行動ログから解析されたレコメンドエンジンがメールの中で働いて、それを送ることで、購入を促す。ここに然るべき接点ができるから、あとはお客様の属性ごとシナリオを作れば、自動的にアプローチできるわけだ。

 ただ、改めて、このことは、結果論でしかないことに気付かされる。大事なのはこの裏側でどんな構想があったのかということの方だ。

 小林さんは、時代を感じさせる、当時の企画書をみせてくれた。すると、そこには分散化と統合という言葉が並ぶ。

 つまり、2000年代後半、会員情報、注文などのデータ、アクセス情報など、色々散らばった情報が手に入るようにきてなっていた。だから、適宜、組み合わせて使っていけば、それらが何かの効果を導き出す施策となっていく。それを、統合という表現で表したのだ。今からざっと10年以上前には、このような発想自体はあっても、具体的なサービスでは、あまり見られなかった。

常にお客様の必要なことに敏感であれば競合は関係ない

 こういう概念的なものをより実践に伴うようにしていく中で、経営者である自分の頭の中を、エンジニアと一緒にして、着地させたのが、先ほど触れたシナブルのサービスであるということ。

 わかる通り、「他でこんなことをやっているから、うちもやろう」なんて話は断じてない。

 だから、僕はそれをクリエイター気質と表現した。朧げなものから、それを具現化する方向へと導けたのは、それを形にするエンジニアが横にいてこそだ。エンジニアもまた、その良き理解者が発案することだから、同じレベル感で、同じものを見ていく。

 経営者と変わらない。ただ、彼らはお金の管理をしない。それよりはもっと、いいシステムを自ら構築していく。そちらのほうに関心があるからそこに打ち込むだけのことである。だから、経営者の方が給料が上なんてことがなくていいと語る。経営の一部分を担うのが、“有能な”エンジニアなのだ。

 そして、幸いにして、時代が追いついた。いわゆるMA(マーケティング・オートメーション)という括りで理解されるようになって、多くの取引先に恵まれるようになった。だけど、小林さんは、ここまでの過程でもわかる通り、何かの枠にとらわれ、サービスを作り出しているわけではない。

世の中の“今”に縛られない。未来に必要なものを作るから。

 だから、最近、それも違うなぁと。サービスの方がその言葉よりも、先に進んでいる。「違った枠組み、定義が必要なのかもしれない」。そう言って話が尽きない。

 確かに、分散と統合が進んで、消費者を特定しやすくなった。けれど、それだけではスケールはしないと小林さん。

 分散は更に広がり、データはより直感的にリアルに近いアプローチをネットでも可能にする。

 個々を手厚くフォローするCRMの側面を持ちつつ、大衆から生産性高く、見合う顧客を引き当てる。この両面を解決するデータの活用は、もはやMAではない。ミクロとマクロで緩急をつけ、垣根を越えて正確に消費者にアプローチする。

 あの時、分散と統合を口にしたときのように、まだ、明確な言葉がないけど、彼にはそれが見えている。だから、気づけば、EC Intelligenceも、コマース Intelligenceにかわっている。

 それどころか「石郷さん、personalized precision CRMなんて言葉、どうかな?」なんて、MAに変わる彼らのサービスをシンボリックに示す、新たな言葉すら飛び出した。

 顧客との関係に今よりもっと“精度=precision”が求められる時代か。間違いなく時代の節目であることを彼の言葉から悟った。彼の頭にある図面が、エンジニアと共に、新しい購買シーンを作って、リアルともデジタルともいえない、新たな小売の時代を先駆けていくのだろう。

 今日はこの辺で。

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