千里の道も一歩から 悲願達成のレムトス カラーミーショップに 辞書屋の住所クリーニングWebAPI
千里の道も一歩から。悲願はこうして達成された。これからです。そう意気込むのはレムトス代表取締役 金子忍さん。辞書屋のネーミングで、全国津々浦々の住所、ありとあらゆる苗字・名前のデータを蓄積して、それを生業にしている。そんな中「カラーミーショップ」のアプリストアに『辞書屋の住所クリーニングWebAPI』が並んだ。これがこれからのECに、どれだけの意味を持つというのか。
千里の道も一歩から その言葉が意図するものは
1.思えば遠くへ来たものだ ECとは無縁の始まり
千里の道も一歩から。そう書かせてもらった理由は、元々、レムトスの仕組み自体が、ECサイトとは違う畑の商売だからである。
元々彼らの起源を辿れば、今から30年以上前、銀行のATMのようなデバイスを提供していた。そこで扱っていたのが、全国津々浦々の住所、ありとあらゆる姓名のデータであった。なぜ、それらが必要かというと、コールセンターの需要が増えてきたからである。
つまり、コールセンターのオペレーターはお客様からの電話で瞬時に、その住所や姓名をうかがって、記録に残さなければならない。ところが、住所も名前もわかりづらいものが多く、それらがスピード感を奪ってしまう原因となっていたのだ。
なかなかその漢字がわかりづらくて、お客様側がイライラすることだってあるわけだ。その意味で彼らの仕組みは、それをパッと表示するから、オペレーターを救ったのだ。「これですね」と。
2.今も昔も、豊富なデータを、使いやすいデバイスで
かくいう、僕の名前も「石郷」で、よく漢字は?と聞かれるのでよくわかる。「石に郷ひろみさんの郷で、、」と説明するの定番だ(笑)。
だが、金子さん曰く、その程度ではない。「イトウさんと言って、思い浮かべるのは、伊藤さんか伊東さんくらいでしょう。でも、先日、対応したお客様には、「翫」さんという漢字を使う人もいる」と笑う。
『翫』って漢字を書いて『いとう』さん。えええ?知らない。しかもレムトスに登録されている『いとう』さんだけで88種類もあるらしい。驚きなのがその「翫」さんはその88種類の中でも、頻度で言うと実は13番目に高いという。結構多いのだ。
同様に、地名もそうなのだ。だから彼らはそれらのデータを集め続けて、住所データは57万件、姓名のデータは42万件も揃ったという。
つまり、当時、彼らはそれらをデータとして蓄積し、瞬時にそのATMのようなデバイス内で、iPhoneのようなタッチパネルを使って表示することにした。その合わせ技で、コールセンターの業務効率化に役立てていたのである。直感的である。その事業は先代が築いた事業で、金子忍さんは学生時代、汗水垂らして、そのデータを集めるために全国駆け巡った経験もある。
3.レムトスはECサイトに次の可能性を見た
今やそれらはデバイスではなく、CDとして企業のコンピューターにインストールして対応するなどして変化している。けれど、事業というのは水物。金子忍さん自身、それが同じ「手法」でずっと通用するとは思っていない。
それらのデータを忍さんの代においてどう活かすか。まさに、その知恵が求められていたし、それがなければ、会社だって生き残れない。でも、彼自身、誰よりもその先代の思いも、その可能性も熟知していたのも事実で、だから、そのくらいの覚悟で、引き継いだわけだ。
さて、そこで「ECサイト」で利用するという話に至るわけである。
忍さんはそれらのデータはECサイトでこそ、力を発揮するのではないかと着想した。きっかけは、大手の総合通販企業において、彼らの仕組みが導入されて、その住所間違いの多さを実感していたからだ。そこで、この辞書屋の仕組みをAPI化して、それらをECサイトに導入しやすくしたのである。
つまり、コールセンターの利便性というよりは、消費者の方々の住所入力時のミスを軽減して、結果的に、その企業のスタッフの負担を軽減しようと考えたわけである。要は、BtoBでありBtoCの視点を持つという事だ。
諦めずただひたすらEC業界との接点を作る日々
1.理解されないなら理解されるまで説明し続けよう
ところが、それらのAPIの仕組みは主にフルスクラッチ向けであり、カスタマイズ性の高いサイト上に適応するものであった。つまり、事業者側に手間もコストもかかり、敷居が高いのである。また、今までにないタイプのツールだから、それをどうやって導入して、どう使うのか?そのイメージを事業者側が描きづらかったのである。
それこそ、人はすでにあるものに対しては動いてくれる。だが、ないものを理解して、かつ投資して導入しようと考える人は少ない。彼がどれだけ、その必要性を説こうとも、ECサイトでどう使われるのか、イメージできなかった。かくいう最初は、僕もその一人である(すみません、金子さんっ)。
ただ、彼は諦めなかった。地道にEC業界の人との接点を作り、とにかく、自らそのサービスを説いてまわった。それは、ご自身が最初の頃、住所の地名を集めるために、ドブ板でまわっていたのとさして変わりはない。
そして、GMOペパボが提供する「カラーミーショップ」の話に行き着く。なんと彼らから相談が寄せられたのである。
カラーミーショップは自社でECサイトを作る際に、それらのサイトを構築する際に必要なカートシステムである。いわゆるECサイトを始める際には、モールに出店/出品するか、自社でECを運営するかの話である。カラーミーショップはその後者で、老舗でもある。
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2.カラーミーショップでのアプリストアに並ぶ事が大転換である理由
今回、この話が大きいのは、カラーミーショップが初心者から熟練まで共通のECサイト構築のプラットフォームを持っていることにある。ここで大事なのは、思うに、ECサイトの強みが参入障壁の低さにあることだ。
つまり、今までは大手のフルスクラッチ式のカスタマイズ系のECサイトにそれぞれ合わせて、一つ一つ実装を促していたのが、ボタン一つで多くの店舗に彼らの仕組みが実装できる。つまり、初心者から熟練の店舗まで全て、カラーミーショップを使っている店なら、それを実装できるようになったということにある。
そのアプリストアでは1ショップあたり月額1万円で実装できる。だから、購入者が多いサイトであればあるほど、そこで利する部分が大きい。すでに、問い合わせはあって、その店舗曰く、配送伝票を発行する際に、郵便番号と県名と市区町村名が一致していないと。それが1日数十件、あるというのだ。
だから、カラーミーショップを実装している事業者すべてに、まずは体感してほしいと、14日間の無料期間を設けたくらいなのだ。ボタンひとつで、それらを実装できることで、彼らは新しいその飛躍の道を見出したのであり、それは「カラーミーショップ」にとっても、事業者を歓迎させる内容なはずだ。
3.データクリーニングで真価を発揮
それでは、その中身を見てみることにしよう。
金子さんが、ECサイトでその真価を発揮するのは、データを使ったクリーニングであると睨んでいた。要は、お客様が住所の入力時に、もしも間違えていたら、それを即座に指摘して、「修正」するかどうかを表示するわけである。
例えば、
千代田区神田松永町
・・・という地名。それを・・・
千代那区外神田永松町
そのように、間違えたとしても(というか、どれだけドジっ子なんだ)それを修正してくれる。
4.こんな細かな修正までできる理由
元の住所がわからないくらいなのに、なぜ修正できるのだろう。唖然だが、それもそのはず、この精度を高めるために、10年以上かけてきたのだというから、筋金入りだ。
文字の順番を直すだけでも、簡単ではないことは数字が証明している。日本の住所は平均11文字だとか。使われている文字数が2000種類あるので、2000の11乗。つまり、億、兆、京、垓、…というレベルなのである。
整理すれば、郵便番号、都道府県、市区町村、町域名に・・・
- ・文字が間違いがある
- ・余計な字が入っている
- ・順番が違っていたり、部分的に抜けている
それら全てで彼らの仕組みは作動する。過去、培ってきた「レムトスAI」や「Z変換エンジン」という機能がそれらを補完し、今、ECサイト上で結実させている。壮観ですらある。
データを持ちつつも、それを活かすUIとUXが真骨頂
1.創業以来、UI、UXにはこだわるイズムがある
確かに彼らが他にはないほど、豊富なデータを持っている事は強みだ。でも持っているだけなら、極論、他の企業でもやれなくはない。そこで、彼らは自らでシステムエンジニアも抱えて、日頃、それらがどういう場面で、効果を発揮するかも併せて検証している。これが大きいと思っている。
それは、ATMのようなデバイスを手掛けていたことに起因する。利用者の視点を先回りして考え、その最大化を図る。ここに主眼を置いているわけだ。思うに、ハードとソフトが相乗効果を高め合うというのは強いのだ。余談だが、最たる例がゲームの任天堂だろう。スプラトゥーンのような面白いゲームがあるけど、それを最大化させるハード「Nintendo Switch」が伴ってこそ、最高級の面白さになる。
2.データを活かす土壌はスタッフと消費者の笑顔にある
ソフトは豊富な辞書データ。そして最大化させるシステムがハードである。今回、ハードとして機能したのが、「カラーミーショップ」である。
その制度と利便性の高さは、レムトスが最初に、デバイスごと提供していたことを起源に保つことの功績だろう。レムトスの最大の強みであるUI、UXを備えたデータだから、ECサイトで瞬時に、これだけの大きな間違いも指摘して、気持ち良さすら感じてしまうのだ。
昨今、ショッピングの敷居が随分下がって事業者とお客様がダイレクトにつながる時代になった。だからこそ、その両者をつなぐ要である住所はもっと利便性高く、運用されるべき。極論、彼らがいう通り全ECサイトに実装されてもおかしくない。
金子忍さんが言い続けていたのは、これだったのか。ただの地名マニアではなかった(失礼!)。
新小岩に事務所を構える彼らは裏方でいぶし銀だ。創業以来、コールセンターのオペレーターの支えであった。今度は消費者の支え役となって幅を広げ、それ自体は事業者の運営者、配送業者すらも助けるだろう。
だから、千里の道も一歩から。この一歩は大きい。最初はEC業界では無名だったレムトスが、なぜそこまでやってきたのかの意味を改めて思ってしまった。
「私たちは、辞書データベースの力で、お客様とスタッフに笑顔をもたらしたい」。その金子さんの言葉の重みを、地道な積み重ねとかけ合わせて、強く、強く感じる次第である。
今日はこの辺で。