堪能したのは全国のお店の“真心”でした。楽天うまいもの大会 2022年 3年ぶりの熱狂
まさに年に一度の“感謝祭”のようである。お客様とお店が真にふれあい、互いにありがとうを言い合う。言うなれば、心が通う場所、それが「楽天うまいもの大会」だと思った。3年ぶりに、JR名古屋タカシマヤで開催され、1週間に渡り行われた。なんかこの家族のような一体感が、このイベントの真骨頂である。
楽天 うまいもの大会 に見る 前向きな店舗の魂
1.コロナ禍を乗り越えてここに来た
どんな店にも物語があって、それはスタッフの表情にも現れる。例えば、この岐阜にある「牧成舎」は苦労を乗り越えて、この地にやってきた。
地元の学校に給食などで牛乳を卸していたわけだが、コロナ禍が突如訪れた。
僕は知らなかったのだが、牛は常に乳を出し続けなければならない。それゆえ、卸先である学校が一斉休校になって、その行き場を失った。乳を出すのを止めるわけにもいかない彼らは、同時に先行きも見えなくなった。
色々な助言を受けてクラウドファンディングをやって目標金額50万円のところを500万円以上の支援を集めるに至り、ネットの力を感じたと言う。さて、同イベントには、だからこそ、感謝の思いでやって来た。
2.ネットに助けられ、リアルの素敵さを噛み締めて
実は彼らが楽天市場で出店したのは最近のことで、2019年。最初は「ふるさと納税」で始めたネット事業であったが、その成長を背景に、ECを始めるに至った。ちょうどコロナ禍に入る前で、ネットの価値を実感することとなった。
彼らは「楽天市場」でも牛乳やチーズ、ピザなどを販売している。けれど、ここでそれを売るよりは、自慢の牧場に来たような感覚を味わってもらいたいと、ソフトクリームを用意したのである。出来立てのほやほやのジャージーミルクの濃厚な味わい。それを食べることで、その牧場に込められた愛を直に感じることができる。これぞ、リアルの醍醐味だろう。
お客様だけでなく、店舗同士の絆も深めるのが同イベントの真骨頂。すぐ隣の「味噌煎餅本舗 井之廣」とのコラボで、そのソフトクリームに味噌煎餅を添える商品を投入。それぞれ背景の異なる両店舗の長所が引き立てあって、程よい甘さと風味を感じる一つの商品となった。
3.100年の伝統を守る革新
さて、この「味噌煎餅本舗 井之廣」も趣深く、創業100年を超える老舗である。ただ、長く生き残ると言うのは伝統を守りつつ革新に挑むということだと気付かされた。実は、地元の高校生と一緒に商品開発をしており、それをこの場所で販売していたのである。
実は、このお店もECとしては新しく、そこで躍進を遂げた理由は店長が新味に積極的に挑戦してきたからこそである。
中でも、評価が高かったのは、グラノーラやコーヒーを使った新味の開発。野草グラノーラ入りの味噌煎餅はブレイクするに至り、2018年対比で約三倍の売上に至ったのである。さて、今回のイベントでの目玉は、高校生との共同開発商品である。
実に、2年の歳月をかけたといっており、自らも改革の意識を持っていても、高校生の柔軟な発想には驚かされたと振り返る。地元の商業高校の高校生が注目したのは、地元飛騨古川の名物「飛騨山椒」である。
煎餅でありながら、見た目もラテアートのような仕上がり。こういう視点も含めて、「私たちの考えが及ばない発想がたくさんの気づきをくれました」とニッコリ。見栄えも可愛く、心とお腹の両面を満たす内容。何パターンも試作を作成した力作だから、その商品について、胸を張って見せた。
4.ホテル業からのEC それがコロナ禍を支えた
また、その近くのブースでは同じく飛騨牛の極(kiwami)というお店もあって、その地域ならではの底力を感じさせる。このお店もネットによって新たな価値を見出しており、スタートはホテルだという。
ホテルの付加価値が飛騨牛であり、それを更に活かそうと、10年ほど前に立ち上げたのが、楽天市場のお店だったというのだ。全くの素人から始めて、下剋上を果たそうと決意、その野心がここまで這い上がらせた。そもそもホテルで扱っていたから、ずっと地元生産者の牛への熱い思いをずっと感じていた。
その愛情が良質な牛肉を作る土台となっていて、それをホテルのいちメニューに留めておくのはもったいない。だから、ECへの関心は特別であり、それで全国に広めるんだと必死で食らいついた。そして、結果、昨今のコロナ禍でホテル業がダメージを受けたとき、救ってくれたのはまさに、このECとお肉たちだったというわけである。その努力は皆から賞賛を受けるに至ったのである。
上記の写真の通り、飛騨牛を2層で敷き詰めたセットを陳列。そのボリューム感たるや、ここでも「下克上」を虎視眈々と狙っているのだろうか。これからが楽しみである。
店の絆がこのイベントを彩る
1.自ら商品を作り、このイベントを牽引する
先ほど、コラボ商品の話をさせてもらったが、他にはないこのイベントらしい特色でもある。互いに「楽天市場」に出店して、志を共にしているから絆が深いのだろう。阿吽の呼吸によって生まれた信頼のその逸品は、またお客様の心を強く動かすのである。
その素敵さはこのお二人によって教えられた。良平堂の近藤薫さんと、おいもやの関谷夕佳さんである。
僕はたまたま彼女たちと会食する機会があり、その舞台裏を目の当たりにしている。良平堂の近藤さんと、おいもやの関谷さんの間で、飛び交っていたのが、まさにこのイベントについての話題。遡ること僅か3〜4ヶ月ほど前のことである。
「今年は3年ぶりでしょ。私たちが自分たちで商品作って、みんなを引っ張っていこうよ」なんというポジティブで温かなメッセージだろう。それだけでもこのイベントへの愛が分かる。「これまで盛り上げてきた自分達だから、自分達にできることを」と、仲間同士で心を通わせる素敵なエピソードである。僕の心に今でも鮮明に刻まれている。この人たちはこのイベント然り、こうやって時代を切り開いてきたのだなと思った。
2.有言実行、イベントに花を添えた限定商品
だからこの日、この場所に来て、まず先に思ったのは、そのコラボが実現できているのだろうかという思いだった。それを発見するなり、僕は感慨深げにその商品を手に取ったのだ。「すごい、やってのけたのか」と。できていたのは「恵奈くり」という「羊羹」(上記写真)と、栗きんとん・お芋モンブランぷりん(下記写真)である。
「ふたりでね、アイデアを出し合ったの。まず最初に、関谷ちゃんが羊羹を作りたいっていってね。ぷりんも含めて、結局、うちの工場で作ることになった。やっぱり反響は大きくて、すぐ売り切れちゃったわよ。私たち二人はイベント開催前に来て、メディアとかも行脚して案内していたのよ」と名物女将、近藤さん。その二人の行動力には愛がある。皆それぞれに愛を持ってこのイベントに向き合っている。
わかるだろうか。もはや主催者側に近い思いである。店だから、売ればいいというものではないんだ。自ら商品を作り、このイベントの見せ場を用意して、盛り上げを願う。そうだ、この熱量こそが「楽天うまいもの大会」だと思った。
3.ゆれた開催への決意
その熱量に包まれ、感化された僕は、同イベントの先頭に立って取りまとめた楽天グループの中川智広さんの声にも耳を傾けたのだ。彼曰く、このイベントは、開催の有無を半年前には決めなければならない。新型コロナウイルス感染症の先行きが見通せない中での決断はいかに大変だったのかを思い知らされる。
「昨年はやる方向で考えていた」。けれど、泣く泣くそれを断念した。これは楽天だけの問題ではないと。仮に彼らが実施すると言っても、「直前になって中止をしてしまえば、店舗さんが用意した在庫は全て、行き場を失い、多大な迷惑をおかけしてしまう」と。
そして、2年連続でやらなくなって彼はあることを痛感する。「今までやるのが当然だった。でも2年連続でそれがなくなると、逆に、開催することの方が特別なものになったような気がします」と。つまり、語弊を恐れず言えば、「やらなくても、いいじゃないか」という声があっても不思議ではないということ。だから、その必要性を語る人が自ずと少なくなってもおかしくなかった。だからこのイベントの意味を改めて考え直す契機となった。
4.待っている店舗はいる そして未来へ繋ぐ
今年の開催は、それ故の一歩である。必ず、待っているお客さまはいると。それは店も同じだ。実は、王府井(ワンフーチン)は小籠包の会社でありながら、その技術を使って、アップルパイを手がけていた。彼らは新商品を発表するなら「楽天うまいもの大会」でと心に決めていた。だから、2020年用に用意していたこの商品はずっと、公にせずにこの日を待ち続けていたのだ。それを聞かされて、中川さんはその踏み出した一歩の大きさを思ったという。
ただ、正直言えば、この状況下で参加を控えようとするお店もあったのは事実だ。必ずしも全員に歓迎されるものではなかったかもしれないからこそ、決意新たに彼はいう。絶対に成功させると。感染対策を徹底し、寧ろ、今しかできないことをと考えた。新規店舗の数を多めにして、新しい風を送り込むことを意図したのは、そう言う意味合いもある。出店店舗は55店舗にのぼったが、そのうちかなりの割合が回数の浅い店舗である。
創意工夫の数々もまた魅力の一つ
1.人気店舗に憧れ、自分達も!と奮起する店舗たち
まだ2回目という初々しい店舗「焼き芋 桜」もその一つである。その存在もまた、今までの歴史から続いていて、物語がある。それは、同じくこのイベントを牽引してきた「おいもや」のような存在に憧れを抱いて、この地にやってきたのだ。笑顔煌めく、華のあるメンバーはそう語り出した。
このお店で面白いのは、この運営会社自体は元々、派遣会社であるということ。社長が芋好きだということもあって、新規事業としてはじめた。地元で、こじんまりとした小さな焼き芋専門店を立ち上げた。近隣の人たちからその味は受け入れられ、ECを通して日本中に届けと願う。
その新しい価値とは何か。肝煎り商品が「熟成冷やし芋」である。袋から取り出し、冷たい状態で食べるお芋である。温度管理を徹底しており、じっくり寝かせてた分だけ、味わいが深みに変わる。実際に、僕も食べさせてもらったが、熟成するほど、甘みが増しているのである。
単純にそのままで食べるのもよし、アレンジするのもよし。アイスクリームと掛け合わせたり、レンジで温め、上からバターを乗せてスイートポテトなどにしても美味しいというから、芋とは言え、甘く見ちゃいかん。
2.ROOMの人気のオギャ子さんドギ子さんと考案した自慢の品
「わくわく園」ではSNS『ROOM』のインフルエンサーとのコラボ商品を出しており、主婦層の関心を集めていた。それもそのはず、主婦に人気のオギャ子さんとドギ子さんと一緒に開発した「桑とおからのわくわくクッキー」を販売していたからだ。
どうやら彼女たち自身も告知をしているらしく、そのファンも来ている模様。その反響はさることながら、実際に商品の作る過程で、たくさんの気づきを得たと同店の青木さん。
例えば、彼らは自社の農場(東京ドーム一個分!)を持っていて、その土地まで彼女たちはやってきてくれたという。自分達にとっては当たり前のその農場。でも彼女たちは「ナビで周辺に何も映らないくらい、山奥なんです」と表現することで、この会社が大事にしている無農薬への想いを伝えていた。
こういう風にして、魅力を伝えるのかと感銘を受けたというのだ。かくいうそういう信頼関係もあり、彼女たちの細部にわたる指摘も受け入れた。結局、彼女たちも自分達のフォロワーに対して満足のいく商品を提供したいという本気も相まって、製造現場のムードもかなり高まって、納得のいく商材ができたと語るわけである。なるほど。
3.流石のアイデアレディ チーズケーキを飲む発想
僕は、そういう学芸会の出し物のようなワクワク感と見守る温かさが、やっぱりこのイベントを支えていると思った。だから、思いがけない創意工夫に触れて、それにも心が動かされるわけである。
「今回はこれ、すごいでしょ、チーズケーキを飲むんですよ」と笑うのはコガネイチーズケーキの小谷葉子さんだ。その場で遡ること、3年前にシンガポールの催事で実施してみようと思っていたアイデアではあったが、あいにくコロナ禍でそれを断念。それに向けて販促物も作っていたのが、ようやくこの日、日の目を見たというわけである。その場で作って、そしてそれを手渡す。
その場で作れる機材を用意して、「僕も一つ注文!」と手にした。そしたら、はいよ!って手渡す小谷さんの笑顔が眩しい。
種類は色々あって、土台はプレーンで、上に焼き芋ペーストを乗せたもの、などを紹介してくれたが、僕は見た目に惹かれて、桜をチョイスした。素材に和三盆を使っているようだ。桜というテーマもさることながら、日本の素晴らしさが伝わってくる。確かに口の中に広がるのはチーズケーキでありながら、重さはない。美味しくさっぱり飲めるし、飲めば、チーズケーキだとしっかり主張しているのがさすがだ。
4.斬新。栗きんとんを7個入れた食パン
「これ、すごいみたいですね?」と噂を聞きつけ、僕が聞くと、「めちゃくちゃ売れています」と「ちこり村」長瀬さん。元々は、再利用などしかつかわれていない「ちこり芋」などを焼酎づくりなどに転用し、価値を与えた彼ら。でも、今回の目玉は、地元の名産、栗きんとんが7個分入っている「食パン」である。昨年、社長が発案したものである。
なぜ?パンと思われるが、ちこり村でレストランをやっていたのがプラスに作用した。つまり、バイキングにするときに、ご飯だけではなく、元からメニューにパンもあったのだ。ただ、あくまで脇役。パンは焼くだけになって、それ自体は売れないと言ってた。だが、突如、社長がこの栗きんとん入りの食パンを発案して、今や毎日、それを買うための行列ができている。
特徴としては、栗きんとんの風味をなくしちゃいけないということ。デニッシュパンにしてしまうと、パン生地の中に練り込んでしまうことになる。すると、練り込んだ分だけ、それが隠れて風味が出ないのだ。だから編み込んで作っている。つまり、練って混ぜるのではなく、折りたたんで栗きんとんの層を作っているわけである。
手作業でなければならず、焼くのも均一にするのも、難しい。けれど、そうやって丹精込めて作ったこの食パンはリアルに栗きんとんの味わいを感じさせるもの。ヒットとなったというわけである。
5.アイデアにも愛がありストーリーがある
今回のイベントでは福袋を出していて、例えば、水郷のとりやさんは、それを自らの店のストーリーに上手に乗せてみせた。彼らは創業100周年を迎えたからこそ、その歴史を伝えたいと。実は、時代ごと、その挑戦に変遷があるのだという。
例えば、鶏のもつ煮は3代目が作っているのだが、元々は2代目の妻が作っていた料理を復活させたものである。語り継がれるその各世代の挑戦をこの福袋に込めたのだという。単純に商品ではなく、お店のストーリーと共に伝える、このイベントならではの魅力ではないかと思う。
写真の目立つその福袋の看板についての裏話も、同店の須田健久さんがそっと教えてくれた。楽天グループの元谷真理子さんのアイデアなのだと。心が通っているからこそ、そんなやりとりが可能なのだ。改めて、皆で一緒になって作り上げた結晶が、この場の随所にあると感じた。
商品とアイデアと、そして真心と
1.3年ぶりでもお客様の顔を覚えている
それで、水郷のとりやさんの須田さんが何気なく、話したその言葉が心に残っている。久しぶりに、この地にやってきて、お客様の熱量も肌で感じて、彼はこう話した。
「たとえ、3年ぶりでもお客様の顔を覚えているんです」と。お客様と楽しく言葉を交わしながら、商品を買ってもらっているから、双方にその真心がある。「待っていたわよ」と声をかけてくれる人も少なくなかったと。水郷と名古屋、遠くで離れているような気がしないと。
また、「戻って来れてすごく嬉しい」と話していたのは淡路島の今井ファームである。その「戻って」という言葉に重みがあるではないか。こうして無事に開催できて、お客様と自家に触れ合う喜びをお店もまた、噛み締めているのだ。
恒例の「神戸牛すき焼き重」は今年も健在。兵庫県同士でお肉屋「辰屋」とずっと、これまでの同イベントでやり続けてきたシンボリックアイテムである。
2.乗り越えたものが多い分、大きな一歩で次へと至る
お客様は商品はもちろん、そのスタッフとのやりとりも楽しみにこの地に来ているのだ。記事に書ききれなかったけど、駆け寄ってきて「元気にしてる?」なんて、ロリアン洋菓子店の小島さんが僕に、声をかけれくれるんだ。その優しい笑顔を見ていると、親戚の家に来たような気持ちになる。
だから、毎年毎年、彼らをまた一段と、去年よりもっと、喜ばせたい気持ちが膨らむ。もっと、もっとと。それが先ほどの良平堂の近藤さんらの熱量だったり、結晶たる「コラボ商品」に繋がっているのだと思った。
こういう店舗の熱意やお客様の熱量を体感して思う。楽天の方々、今年やろうと先陣切って、よく決断したねと。お店の方々、本当に奮闘したねと。お疲れ!と心から労いたい。
「せーの!」皆で最後にいつもお願いしている写真を撮った。それがトップの写真で、いい顔つきだ。
すごく余談だが、終わり間際「おいもや」の関谷さんにこんな事を言われた。「今年、あのポーズしなかったじゃん!!」。それまで毎年、指差す仕草(145ポーズ)で写真を締めていたのに(笑)。あ、そういえば。
でも、この熱狂と乗り越えたものの大きさを思い浮かべて僕は「来年、やりましょう。必ず」と彼女に伝えた。「えー」と言いながら、彼女も「そうだね」と笑顔を浮かべた。「来年もここで!」。この家族のような一体感が、このイベントの真骨頂である。
人と人との触れ合いに触れ、丹精込めた商品にアイデアがあって、真心があって、この「楽天うまいもの大会」がある。天晴、コロナ禍でやったその功績を思う。
今日はこの辺で。
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